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第29話

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「セリーヌ出ていけ。婚約破棄されるとは情けない。お前は公爵家の恥さらしだ」

セリーヌが婚約破棄された日。家に帰ってフレッド王太子殿下に婚約破棄されたことを家族に話した。公爵家当主の父は、セリーヌに同情する気はないようだった。逆に汚名を着せられるとは情けないと責めて家から出ていけと言った。

「セリーヌが毒を盛るなんてそんなことあり得ないでしょう。あなたもわかっていますよね?」

母は父に抗議してくれたが、慎重さが足りないから悪い奴に付け込まれるんだ!と父に怒鳴られ結局、家から縁切りになった。この家では父の言う事は絶対なので仕方なくセリーヌは受け入れる。翌日の朝早くに母とはしばらく抱き合い涙を流しあってお別れいたしました。

「これからどうすれば……」

家を出たセリーヌは不安そうな表情で街のベンチに腰を下ろした。公爵令嬢として今まで何不自由なく幸福に暮らしていたのに深い絶望と怯えしかないような顔になって、今にも泣きそうな自分を自覚する。

「ふふふ……なんてね……」

セリーヌの表情は満面の笑顔に変わる。セリーヌはこれからの生活を別に心配する様子もないような言葉を漏らす。何を隠そうセリーヌは幼い頃に出会った竜から、様々な能力を付与されてのような力を身につけた女性なので何も恐れる必要などないのだ。

さらにセリーヌは、しっかりした女性で世界の至る所に自分の家を持っていた。自分が竜と仲が良い事は両親に秘密であった。セリーヌは竜から授けられた能力によって空だって自由に飛べるし、攻撃魔法に防御魔法に回復魔法に瞬間移動のような魔法まで使えるので一人でも問題なく生きていける。今はどうやったら楽しく人生を過ごせるのか考える余裕まであった。

「よし、まずはに行ってみようかな」

セリーヌはそう言うと立ち上がって魔法を心の中で唱えてその場から消えた。

「おはよう!」
「セリーヌ社長おはようございます」
「今日はどうされたのですか?」
「セリーヌ様久しぶりですね」

セリーヌが瞬間移動してきた場所は、長年暮らしていた故郷ヴァレンティノ王国から遠く離れた国。セリーヌが経営するレストランだった。今は朝なので店で働いている従業員たちが、せっせと仕事にはげんでいた。そしたら突然この店のオーナー兼調理係に接客まで担当しているセリーヌが出現したのだから、驚いた様子を示したが笑顔で挨拶をした一同。

このレストランは地元住民から慕われている非常に人気のある店。その料理は実に美味しいと評判である。そのわけはセリーヌが料理を美味しくしているのだ。セリーヌは竜から様々なチート能力を付与されて今では自在に使いこなすことができる。

例えば自分のエネルギーを別の人や道具に与えたり変換する能力を持っている。料理が美味しくなーれと念じれば数倍美味しくなる。その味は神の奇跡としか言えない美味しさで、客からは三つ星レストランと呼び声も高かった。
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