好きじゃない人と結婚した「愛がなくても幸せになれると知った」プロポーズは「君は家にいるだけで何もしなくてもいい」

第3話

ステラ夫人に案内されてから、アイラは広大な公爵家の庭園を一人で散歩することが日課になった。色とりどりの花々が咲き誇り、静かな時間が流れるその場所は、アイラにとって心の安らぎの場となっていた。

「こんなに美しい場所があるなんて、結婚前は想像もできなかった」

アイラは、花々の香りを感じながら呟いた。アイラの心には、ゆったりとした時間が流れることが新鮮で幸せな気持ちが広がっていた。

たまにロバートも一緒に庭を歩くことがあった。彼は多くを語らないけれど、その存在はアイラにとって心地よかった。彼のそばにいるだけで、何か安心感を覚えるのだ。

「今日はどの花が一番きれいだと思う？」
「スターチスがきれいだと思う。長持ちするから、いつまでもこの美しさを楽しめる」

アイラが尋ねると、ロバートは少し考えてから答えた。

「確かに、スターチスは素敵ですね」

アイラは微笑みながら返した。ロバートの言葉にアイラは、少しずつ彼との距離が縮まっているのを感じていた。

ある日、アイラが庭を散歩していると、ロバートが手入れされたスターチスの花束を差し出した。

「庭に咲いていた。君に似合うと思って」
「ありがとう、ロバート様。スターチスの花言葉は、永遠の愛だと聞いたことがあります」

そのまっすぐな気持ちに、花束を受け取りながらアイラの胸はかすかに温まった。

「それを知っていて選んだわけではないけれど、君に似合うと思ったから」
「ロバート様が、私にこの花を選んでくれたことが、すごく嬉しいです」

ロバートは少し照れくさそうに笑った。その表情に、アイラの心はさらに温かくなった。アイラは心からの感謝を込めて言った。彼の寛容さが、アイラの心に静かな波を立てていた。

「君の笑顔が見られるなら、僕も嬉しい」

ロバートは真剣な眼差しでアイラを見つめた。その目には、アイラへを大切にする気持ちが強く感じられた。

アイラはその瞬間、自分の心の中にある不安が少しずつ薄れていくのを感じた。ロバートとの関係が、少しずつ深まっているのだと実感した。

「これからも、こうして一緒に散歩できるといいですね」

「もちろんだ。君と一緒にいる時間が、僕にとって一番の幸せだから」

アイラは明るい声で言うと、ロバートはにこやかに微笑みアイラの手をそっと握った。

その温もりに、アイラは心が満たされていくのを感じた。アイラは、ロバートとの今後が少しずつ色づいていくことを期待していた。

「公爵家の庭は、本当に素晴らしいですね。これからも、たくさんの花を見たいです」

「僕もそう思う。君と一緒に、美しい景色を楽しもう」

アイラは夢見るように言った。ロバートは穏やかに答え、二人はそのまま庭を歩き続けた。

静かな時間が流れる中で、アイラは自分の心に芽生えた小さな幸せを大切に育てていた。ロバートとの絆が深まることで、自分の心も少しずつ開かれていくのだと感じながら、アイラは新しい生活を楽しむことにした。