好きじゃない人と結婚した「愛がなくても幸せになれると知った」プロポーズは「君は家にいるだけで何もしなくてもいい」

第5話

ある日、義母ステラに誘われて、アイラは初めて公爵家の領地にある街へ出かけることになった。アイラは少し緊張しながらも新しい経験に心を躍らせていた。

「さあ、アイラ、今日は特別な日よ」

ステラは明るい笑顔を浮かべて言った。その声はアイラの心をほぐし、安心感を与えてくれた。

市場に足を踏み入れると、賑やかな声が飛び交い、色とりどりの商品が並んでいた。

「わぁ、こんなにたくさんのものがあるんですね」

「そうよ！　ここでは新鮮な野菜や果物、手作りの品々がたくさんあるの」

アイラは目を輝かせ周囲を見回した。ステラは嬉しそうに説明しながら、アイラの手を引いて歩き始めた。

「さあ、いろいろ見て回って。何か気に入ったものがあったら教えてね」

最初は戸惑っていたアイラだったが、ステラの明るい笑顔にだんだん打ち解けていく。

「この市場、まるでお祭りみたい！」

「本当に市場はいつも活気であふれているわ。あ、あそこで新鮮なリンゴが売られているわ。見に行きましょう！」

「リンゴ、いいですね。私、リンゴが大好きです！」

アイラは興奮気味に言った。ステラは頷き、近くの果物屋に向かった。アイラは早く食べてみたいな！　と期待に胸を躍らせ、わくわくした表情でついて行った。


果物屋に近づくと、店主がにこやかに迎えてくれた。

「いらっしゃい！　新鮮なリンゴはいかがですか？」

「このリンゴ、色が鮮やかですね」

「それは特に甘い品種だよ。試食してみる？」

「ぜひ！」

アイラは思わず手を伸ばした。店主はリンゴを一つ差し出した。アイラは嬉しそうに受け取り、かじると甘さが口いっぱいに広がった。

「美味しい！　これ、買います！」

アイラは心が弾む気持ちで答えた。その後、ステラはアイラに様々な店を見て回るように勧めた。

「さあ、次はあの布屋に行きましょう。きっと素敵な布が見つかるわ」

「布屋ですか？　ドレスが作れそうですね」

アイラは興味津々でついて行った。布屋に入ると、色とりどりの布が並んでいて、その美しさにアイラは目を奪われた。

「この青い布、すごくきれいです！」

「それはいい選択ね。あなたに似合いそう」

ステラは微笑みながら言うと、アイラは嬉しさに顔がほころんだ。

「でも、私にはもったいないです……」

「そんなことないわ。特別な日には、特別な服を着るのが大切よ。さあ、もっと見てみましょう」

アイラが自信なさげに言うと、ステラは柔らかい口調で言った。その後、アイラは市場を歩きながら、ステラと楽しい会話を交わしていた。時折、他愛ない冗談を言い合い笑い声が響いた。

「アイラ、見て！　あの花飾り、素敵じゃない？」

「本当にきれいですね…でも、こんな高級そうなもの、私には過ぎる気がします」

ステラが一つの店を指さした。アイラはその花飾りを見つめた。色とりどりの花が美しく編まれたそれは、メルヘンチックな輝きを放っていた。

「そんなことはないわ。あなたに似合うと思うの。私が買ってあげるから、ぜひ試してみて」

「本当にいいんですか？」

ステラは穏やかな微笑みを浮かべて言った。アイラは驚きつつも嬉しさが込み上げてきた。

「もちろん！　あなたは私の娘だから、喜んで買ってあげるわ」

「ありがとうございます、ステラ様」

ステラは心が温まるような穏やかな笑顔で話し、花飾りを手に取った。アイラはその言葉に心がふわりと温かくなって、恥ずかしそうに言った。

花飾りを試しに頭に乗せてみると、ステラは大げさに目を輝かせた。

「アイラ！　とても似合っているわ！」

「本当ですか？　こんなに素敵だなんて…」

「あなたはどんなスタイルでも美しいわ。これをつけて、自信を持って歩いてほしい」

アイラは鏡を見て、照れくさそうに笑った。アイラはステラの言葉を胸に刻み、花飾りを受け取った。ステラは微笑みながら頷いた。周りの雰囲気を和ませるような笑顔だった。