好きじゃない人と結婚した「愛がなくても幸せになれると知った」プロポーズは「君は家にいるだけで何もしなくてもいい」

第12話

レイラは、ロバートの子供だと偽った罪で判決が言い渡されていた。

「ああ、もう最悪！　まさか、あの時、あんなことになるなんて……ただの、ほんの出来心だったのに……神様、仏様、どうか時間を巻き戻してください！」

レイラはといえば、床に額を擦り付けながら、盛大な独り言を繰り広げていた。

一方、レイラの父の心の中は、後悔と焦燥でぐちゃぐちゃだった。

（あの年頃の娘なんて、ちょっとした悪戯くらいするもんだろう？　そうだ、ここは一つ、得意の愛想笑いで乗り切ってみせるか？　いや、今は真面目な顔をするべきか？　どっちだ！？）

レイラの母の胸中は、娘への苛立ちが渦巻いていた。

（レイラのせいで伯爵家は終わりよ……）

レイラの弟は、極刑に処せられることは決まっている。それほどまでにロバートを殴った罪は重い。

「では、言い渡す。レイラ、そしてその家族に対する罰は……」

国王の言葉と同時に緊張が走った。レイラは、心臓が口から飛び出しそうになるのを感じながら、固唾を呑んで次の言葉を待った。

（まさか、死刑とか言わないよね？　たぶん。でも、もしかしたら……」

父親は、冷や汗が背中を伝うのを感じていた。母親は自分だけ助かるように願っていた。

（頼む、穏便に済んでくれ！　家族の未来がかかっているんだ！）

（私一人でも助かりますように！）

国王は、三人の様子を静かに見つめた後、低い声で言った。

「……爵位は剥奪。そして明日から永久に、公爵領の井戸の掃除係を命ずる」

「え？」

レイラの間の抜けた声が響いた。それは、予想していたよりも遥かに重い罰だったからだ。

「永久に掃除、ですか？」

レイラの父も母も、信じられないといった表情で聞き返した。国王の言葉は続く。

「今回の罰は、お前たちが犯した罪の重さを、その身で理解するためである。井戸の底に溜まった汚れのように、お前たちの心にも汚いものが溜まっていたはずだ。永久に、ひたすら汚れを落とすことで、その汚れを洗い流し、清らかな心を取り戻すのだ」

レイラは、ぶつぶつと文句を言い始めた。

「一生、井戸掃除ってふざけないで！　井戸の底って、きっとヌメヌメしてて気持ち悪いし、虫とかいっぱいいるんでしょう？　それに、私の可愛い手が荒れちゃうじゃないですか！」

父は、慌ててレイラの口を塞いだ。母は、娘の背中をさすりながら小声で諭した。

「こら、レイラ！　国王様の御前で、何を無礼なことを！」

「レイラ、今は素直に受け入れるのよ。これも、仕方ないのよ」

国王は、レイラの言葉には動じず静かに言った。

「井戸の汚れは、お前たちの心の映し鏡だ。綺麗にすればするほど、お前たちの心も清らかになるだろう。怠けることなく、真摯に取り組むことだ」