好きじゃない人と結婚した「愛がなくても幸せになれると知った」プロポーズは「君は家にいるだけで何もしなくてもいい」

第13話

アイラの穏やかな日々が戻ってきたある日、公爵家に訪問者が現れた。それは、ロバートの親友である子爵令息のオリバーだった。彼は明るい性格で、すぐに公爵家の人々と打ち解けていった。

「こんにちは、オリバー・グリーンウッドです！」

オリバーは元気よく挨拶し、笑顔で手を振った。

「オリバー、久しぶりだな！」

ロバートは、分かち合うように肩を寄せ満面の笑顔で迎えた。

「突然の訪問を許してくれ！　しばらくリフレッシュしたくてさ。これから数日間、ここに滞在するつもりなんだ。ロバートと一緒に遊びたいと思ってね！」

オリバーは無邪気に笑った。その笑顔は周囲を明るく照らし、アイラも思わず微笑んでしまった。

「かまわないぞ」

ロバートも嬉しそうに言った。本当に仲が良さそうだ。異常なくらい。アイラは少し緊張しながら、心の中で期待感が膨らんでいた。明るいオリバーの存在は、家の雰囲気を一変させていた。

「アイラ、君も一緒に遊びに行こうよ！　公爵家の庭は広いし、素晴らしい場所がたくさんあるだろ？」

「はい、ぜひ一緒に」

オリバーは気さくにアイラに話しかけた。アイラは少し戸惑いながら嬉しそうに返事をした。

その後、オリバーは公爵家の人々と和やかな会話を交わし、すぐに皆に受け入れられていった。しかし、アイラは心のどこかで違和感を感じていた。ロバートは普段と変わらない様子だったが、アイラの心には何かが引っかかっていた。


「ロバート様、オリバー様がいらして嬉しいですか？」

「もちろん、彼は昔からの友人だからな。楽しい時間を過ごせると思う」

次の日の朝、アイラは思い切って聞いてみた。ロバートは微笑んだが、その顔には、疲れ果て消耗し尽くした表情をしていた。

「そうですか……」

アイラは心の中で疑問を抱えつつ、オリバーと過ごす時間を楽しむことにした。

「アイラ、これからの数日間、君といろいろな場所を探検したいんだ。どう思う？」

「本当に？　それは楽しそう！　どこに行く予定ですか？」

アイラはその提案に心を弾ませる。悪い人ではないことは何となく分かる。

「まずはあの小さな池に行こう。そこでボートに乗るのが好きなんだ。水辺は気持ちがいいから」

「ボート、いいですね！　私、あまり経験がないけれど……」

オリバーは嬉しそうに言った。アイラは少し不安になったが、オリバーの明るい笑顔に押されて行くことに決めた。

「心配しなくて大丈夫！　僕がしっかりサポートするから」

オリバーは自信満々に言うと、アイラはその言葉に安心し、オリバーと一緒に池に向かうことにした。しかし、心の奥では、ロバートの様子が気になっていた。彼は本当に楽しんでいるのか？　朝の疲れ果てた顔も気になった。オリバーとの関係が気がかりだった。

池に着くと、オリバーはすぐにボートを用意してくれた。

「さあ、乗ってみよう！」

「はい！」

オリバーはアイラを明るい声で誘うと、アイラはドキドキしながらボートに乗り込んだ。オリバーが漕ぎ始めると、周りの景色がゆっくりと流れていく。水面の揺れに合わせて、アイラの心も少しずつ軽くなっていった。

「どう？　楽しい？」

「はい、とても！　こんなに素敵な景色を見られるなんて、思ってもみませんでした」

「公爵家には素晴らしい場所がたくさんあるから、もっと探検しよう！」

オリバーは少年のように目を輝かせて言う。アイラは笑顔で答えると、オリバーは喜び溢れた顔で楽しそうに言った。

その瞬間、アイラは心の中の違和感が少し和らいだ。しかし、ロバートのことが気になっていることは否めなかった。二人は親友同士のようだけど、なんか距離が近いしアイラは気になって仕方がなかった。

「ロバート様も一緒に来ればよかったのに……」

「ロバートは、昨日の夜、僕と運動しすぎたからね。休ませたほうがいいと思うよ」

アイラは思わず口に出してしまった。オリバーは笑顔で返したが、その笑顔には何かの影が差しているように見えた。オリバーの言う通り、ロバートは疲れた顔をしていた。でも、どうして一夜にしてゲッソリやつれたのか気になった。