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第14話
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「ん……」
アイラは、眠りの底からゆっくりと意識を浮上させた。夜の静けさの中、ふと尿意を感じて目を覚ます。
「あれ?」
隣にいるはずの温もりがない。
「ロバート様?」
寝ぼけ眼をこすりながら、空になったベッドの右側を見つめた。いつもなら、穏やかな寝息を立てているはずの夫、ロバートの姿がない。
(お手洗い、かな?)
そう思った。夜中に目が覚めて、トイレに行くのはよくあることだ。特に気に留めることなく、アイラもベッドから起き上がり寝室を出た。
しかし、廊下を歩いても、ロバートの姿は見当たらない。時計を見れば、深夜の二時を回っている。
(こんな時間に、一体どこへ?)
かすかな不安が胸をよぎる。まさか、何かあったのだろうか。しかし、特に物音も聞こえなかったし……。
(まあ、すぐに戻ってくるでしょう)
そう自分に言い聞かせ、アイラは一人でトイレを済ませ再び寝室へと戻った。しかし、ベッドに戻ってもロバートの気配はなかった。
(遅いな……)
そう思いながらもアイラは再び眠りについた。
朝、眩しい光が窓から差し込み、アイラは目を覚ました。隣には、昨夜いなかったはずのロバートが、静かに眠っている。
「!」
アイラは、そこで強烈な違和感を覚えた。昨夜、自分が寝る時にはいなかったのに、いつの間に戻ってきたのだろう? 全く気づかなかった。
訝しみながらもアイラは身を起こし、何気なくロバートの方を見た。そして、息を呑んだ。
「……っ!」
よく見ると、ロバートの首筋に、くっきりと赤い痕が残っている。それは、紛れもなくキスマークだった。
(キスマーク……?)
アイラの心臓が跳ねた。結婚してからというもの、ロバートは一度もアイラに触れたことがない。抱きしめられることも、ましてやキスをされることもなかった。
ロバートは、思いやりのある声で話しかけてくれる。それだけで満足していた。アイラ自身もロバートに愛情を抱いているわけではなかったし、体の関係を求められることもなかったが不満はなかった。むしろ、その淡々とした関係が、アイラにとっては心地よかったのだ。
(私がつけたはずがない……)
混乱が、アイラの頭の中を渦巻く。一体、誰が? いつ? 昨夜、ロバートはどこで何をしていたというのだろうか?
「……おはようございます、ロバート様」
平静を装い、アイラは声をかけた。
「……ああ、おはよう、アイラ」
ロバートは、少し寝不足そうな顔で目を覚ました。首筋の赤い痕を隠すように、無意識にかもしれないが襟元を少し上げた。
(やはり、何かあったんだわ)
アイラは、そう確信した。しかし、それを問い詰める勇気はアイラにはなかった。それをしたら、公爵家での平穏な生活が、壊れてしまいそうな気がしたからだ。
(私は、別に関係ないことだ。ロバート様を愛して結婚したわけじゃないし……)
そう思う一方で胸の奥には、ざわめきが確かに存在していた。それは好奇心なのか、それとも……。
アイラは、眠りの底からゆっくりと意識を浮上させた。夜の静けさの中、ふと尿意を感じて目を覚ます。
「あれ?」
隣にいるはずの温もりがない。
「ロバート様?」
寝ぼけ眼をこすりながら、空になったベッドの右側を見つめた。いつもなら、穏やかな寝息を立てているはずの夫、ロバートの姿がない。
(お手洗い、かな?)
そう思った。夜中に目が覚めて、トイレに行くのはよくあることだ。特に気に留めることなく、アイラもベッドから起き上がり寝室を出た。
しかし、廊下を歩いても、ロバートの姿は見当たらない。時計を見れば、深夜の二時を回っている。
(こんな時間に、一体どこへ?)
かすかな不安が胸をよぎる。まさか、何かあったのだろうか。しかし、特に物音も聞こえなかったし……。
(まあ、すぐに戻ってくるでしょう)
そう自分に言い聞かせ、アイラは一人でトイレを済ませ再び寝室へと戻った。しかし、ベッドに戻ってもロバートの気配はなかった。
(遅いな……)
そう思いながらもアイラは再び眠りについた。
朝、眩しい光が窓から差し込み、アイラは目を覚ました。隣には、昨夜いなかったはずのロバートが、静かに眠っている。
「!」
アイラは、そこで強烈な違和感を覚えた。昨夜、自分が寝る時にはいなかったのに、いつの間に戻ってきたのだろう? 全く気づかなかった。
訝しみながらもアイラは身を起こし、何気なくロバートの方を見た。そして、息を呑んだ。
「……っ!」
よく見ると、ロバートの首筋に、くっきりと赤い痕が残っている。それは、紛れもなくキスマークだった。
(キスマーク……?)
アイラの心臓が跳ねた。結婚してからというもの、ロバートは一度もアイラに触れたことがない。抱きしめられることも、ましてやキスをされることもなかった。
ロバートは、思いやりのある声で話しかけてくれる。それだけで満足していた。アイラ自身もロバートに愛情を抱いているわけではなかったし、体の関係を求められることもなかったが不満はなかった。むしろ、その淡々とした関係が、アイラにとっては心地よかったのだ。
(私がつけたはずがない……)
混乱が、アイラの頭の中を渦巻く。一体、誰が? いつ? 昨夜、ロバートはどこで何をしていたというのだろうか?
「……おはようございます、ロバート様」
平静を装い、アイラは声をかけた。
「……ああ、おはよう、アイラ」
ロバートは、少し寝不足そうな顔で目を覚ました。首筋の赤い痕を隠すように、無意識にかもしれないが襟元を少し上げた。
(やはり、何かあったんだわ)
アイラは、そう確信した。しかし、それを問い詰める勇気はアイラにはなかった。それをしたら、公爵家での平穏な生活が、壊れてしまいそうな気がしたからだ。
(私は、別に関係ないことだ。ロバート様を愛して結婚したわけじゃないし……)
そう思う一方で胸の奥には、ざわめきが確かに存在していた。それは好奇心なのか、それとも……。
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