好きじゃない人と結婚した「愛がなくても幸せになれると知った」プロポーズは「君は家にいるだけで何もしなくてもいい」

ぱんだ

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第15話

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翌日、アイラは冬眠前の熊のように、昼間はずっと寝て過ごした。

「アイラ、大丈夫かい? 顔色が優れないようだが」

ロバートが心配そうな声をかけてきた。昨夜のことは、まるでなかったかのような穏やかな表情だ。

「ええ、少し疲れているだけです。ご心配なく」

アイラは、心の中で複雑な思いを抱えながら、平静を装って答えた。

(疲れているのは、あなたのせいですけどね! 心労でげっそりですよ、こっちは!)

アイラは、にっこりと微笑んで答えた。

(昼間に休んで、あなたの夜の動向を探るためのエネルギーを満タンにしてるんですよ! ロバート様!)

そして、夜が来た。ロバートは、そそくさと部屋から抜け出す。

ロバートが部屋から出ていくと、アイラはベッドの中で目を開けた。

(さあ、探偵ごっこを楽しみましょうか)

昼間の休息のおかげで、アイラの足取りは軽い。まるで忍者のように、音もなくベッドから抜け出しロバートの後を追った。

(オリバー様の部屋に……?)

公爵家の中だというのに、アイラの胸はドキドキしていた。まさか、夫が密会を重ねているなんて想像もしていなかった。

ロバートは、慣れた足取りで廊下を進んでいく。そして、やはりオリバーが滞在している客室の前で立ち止まった。

(やっぱり、ここだ……!)

アイラは、近くの柱の陰に身を潜めた。ドアが開く音、そして、二人の低い話し声が聞こえてくる。

(一体、何を話しているんだろう? いや、話の内容なんてどうでもいい! 問題は、二人が一緒にいるということなのよ!)

アイラの頭の中は、様々な感情がジェットコースターのように駆け巡っていた。驚き、呆れ、そして、ほんの少しの……興味?

(まさか、ロバート様があの方と……?)

アイラは、息を潜めて、ドアの隙間から中を覗こうとした。しかし、すぐに思いとどまった。

(いけない、いけない。見ちゃいけない)

これは、見てはいけないものだ。自分の平穏な日常を守るためには、知らない方がいいこともある。そう、きっとそうだ。

(それに、ロバート様があの方を好きであろうと、そうでなかろうと、私には関係ないことだわ)

アイラは、そう自分に言い聞かせた。アイラにとって、ロバートはただの同居人であり、家の主であり、公爵家の体面を保つための存在でしかない。愛情など最初から持っていないのだ。何もしなくていいからと言われて結婚したわけだし……。

(このまま、何も見なかったことにして、自分の幸せを大切にするほうが賢明だわ)

アイラは、そっとその場を離れた。夜の廊下は静かで、アイラの足音だけが小さく響いた。

自室に戻ったアイラは、ベッドに倒れ込んだ。天井を見つめながら考えた。ロバートとオリバーの関係がどうであれ、自分の生活は変わらない。上辺だけは、今まで通りの平穏な日々が続くのだ。
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