彼の妹にキレそう。信頼していた彼にも裏切られて婚約破棄を決意。

ぱんだ

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恋人との旅行は楽しいものなのに、移動中の馬車の中は気まずい雰囲気。彼女もそんな状態を良いとは思ってないようで外の景色を眺めて軽く微笑む。

最後のデートに二人で海に行くことになった。と言っても陰ながら守っている護衛たちはいます。久しぶりの彼女との触れ合いに彼は期待がふくらむ。でも顔は生気がなく生きる屍のよう。

到着したら二人で浜辺を歩いた。やはりここでも会話がない。すると彼はこの場を和まそうと思い、調子に乗ってしまう。突然服を脱ぎ出してヤケになったのか海にダイブした。

「イブリン助けて!」

間抜けなことに飛び込んだ瞬間に、右足のふくらはぎがつってしまい溺れそうになる。彼女は彼の助けを呼ぶ声に少しばかり動揺したが救助しようと試みます。

「ホークもう少しだから頑張って!私の手を掴んで!」

彼は犬かきしながら死に物狂いの顔で懸命にこちらに近づいて来る。それが凄く無様に見えた。でも命が掛かっているので手を差し伸べました。

ところが彼女は何を思ったのか……?最初は伸ばしていた腕を彼が掴もうとしたら、無意識のうちに引っ込めてしまう。

「イブリン!なんで手を……!?足がつって動けないんだ……助けてくれ!手を貸してくれないとのぼれないよ!」
「…………」
「僕が悪かったよ……うう……ゴホッ……君を裏切って……ハァッ……うう、う……妹にうつつを抜かして……」
「…………」
「このままじゃ…… うっ……カハッ……死んじゃうよ……うう……ゴホッ……」
「…………」

彼は尋常でなく慌てた様子でしたが、彼女は能面のように無表情で何も言わない。目の前で本気で溺れている彼を数分間ただじっと見ていた。


「イブリン……もう……駄目だ……あらがう体力がない……」
「誰か来てください!彼が溺れています!」

そして彼の限界状態の声が耳に流れ込み、同時に彼が青白い顔で海に沈んでいくと、ハッと気づいた。でも彼女は救いの手を差し伸べることはなく、わざわざ遠くにいる人を甲高い悲鳴を上げて呼んだ。

(イブリンはあの時何を考えていたんだろう……?なんで伸ばしていた腕を引っ込めたんだ……?彼女の中で僕なんか助ける価値もない男なのか……?怖くて聞けない)

結局のところ彼は海水をある程度飲んでしまったけど、どうにか一命を取り止めて助かりました。彼を救助したのは、見知らぬ親切な人でした。

不自然な彼女の行動に彼は聞きたい事が山ほどある。だけど答えを聞くのが恐ろしくて問いただせない。まだ僕の反省が足りないのだろう……。だから彼女はあのような冷酷な態度をとったのかな?

簡易的な医療処置が行われてベッドの上で横になっている。彼の心はいつまでも不安が渦巻いていた。
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