31 / 39
31
しおりを挟む
恋人との旅行は楽しいものなのに、移動中の馬車の中は気まずい雰囲気。彼女もそんな状態を良いとは思ってないようで外の景色を眺めて軽く微笑む。
最後のデートに二人で海に行くことになった。と言っても陰ながら守っている護衛たちはいます。久しぶりの彼女との触れ合いに彼は期待がふくらむ。でも顔は生気がなく生きる屍のよう。
到着したら二人で浜辺を歩いた。やはりここでも会話がない。すると彼はこの場を和まそうと思い、調子に乗ってしまう。突然服を脱ぎ出してヤケになったのか海にダイブした。
「イブリン助けて!」
間抜けなことに飛び込んだ瞬間に、右足のふくらはぎがつってしまい溺れそうになる。彼女は彼の助けを呼ぶ声に少しばかり動揺したが救助しようと試みます。
「ホークもう少しだから頑張って!私の手を掴んで!」
彼は犬かきしながら死に物狂いの顔で懸命にこちらに近づいて来る。それが凄く無様に見えた。でも命が掛かっているので手を差し伸べました。
ところが彼女は何を思ったのか……?最初は伸ばしていた腕を彼が掴もうとしたら、無意識のうちに引っ込めてしまう。
「イブリン!なんで手を……!?足がつって動けないんだ……助けてくれ!手を貸してくれないとのぼれないよ!」
「…………」
「僕が悪かったよ……うう……ゴホッ……君を裏切って……ハァッ……うう、う……妹にうつつを抜かして……」
「…………」
「このままじゃ…… うっ……カハッ……死んじゃうよ……うう……ゴホッ……」
「…………」
彼は尋常でなく慌てた様子でしたが、彼女は能面のように無表情で何も言わない。目の前で本気で溺れている彼を数分間ただじっと見ていた。
「イブリン……もう……駄目だ……あらがう体力がない……」
「誰か来てください!彼が溺れています!」
そして彼の限界状態の声が耳に流れ込み、同時に彼が青白い顔で海に沈んでいくと、ハッと気づいた。でも彼女は救いの手を差し伸べることはなく、わざわざ遠くにいる人を甲高い悲鳴を上げて呼んだ。
(イブリンはあの時何を考えていたんだろう……?なんで伸ばしていた腕を引っ込めたんだ……?彼女の中で僕なんか助ける価値もない男なのか……?怖くて聞けない)
結局のところ彼は海水をある程度飲んでしまったけど、どうにか一命を取り止めて助かりました。彼を救助したのは、見知らぬ親切な人でした。
不自然な彼女の行動に彼は聞きたい事が山ほどある。だけど答えを聞くのが恐ろしくて問いただせない。まだ僕の反省が足りないのだろう……。だから彼女はあのような冷酷な態度をとったのかな?
簡易的な医療処置が行われてベッドの上で横になっている。彼の心はいつまでも不安が渦巻いていた。
最後のデートに二人で海に行くことになった。と言っても陰ながら守っている護衛たちはいます。久しぶりの彼女との触れ合いに彼は期待がふくらむ。でも顔は生気がなく生きる屍のよう。
到着したら二人で浜辺を歩いた。やはりここでも会話がない。すると彼はこの場を和まそうと思い、調子に乗ってしまう。突然服を脱ぎ出してヤケになったのか海にダイブした。
「イブリン助けて!」
間抜けなことに飛び込んだ瞬間に、右足のふくらはぎがつってしまい溺れそうになる。彼女は彼の助けを呼ぶ声に少しばかり動揺したが救助しようと試みます。
「ホークもう少しだから頑張って!私の手を掴んで!」
彼は犬かきしながら死に物狂いの顔で懸命にこちらに近づいて来る。それが凄く無様に見えた。でも命が掛かっているので手を差し伸べました。
ところが彼女は何を思ったのか……?最初は伸ばしていた腕を彼が掴もうとしたら、無意識のうちに引っ込めてしまう。
「イブリン!なんで手を……!?足がつって動けないんだ……助けてくれ!手を貸してくれないとのぼれないよ!」
「…………」
「僕が悪かったよ……うう……ゴホッ……君を裏切って……ハァッ……うう、う……妹にうつつを抜かして……」
「…………」
「このままじゃ…… うっ……カハッ……死んじゃうよ……うう……ゴホッ……」
「…………」
彼は尋常でなく慌てた様子でしたが、彼女は能面のように無表情で何も言わない。目の前で本気で溺れている彼を数分間ただじっと見ていた。
「イブリン……もう……駄目だ……あらがう体力がない……」
「誰か来てください!彼が溺れています!」
そして彼の限界状態の声が耳に流れ込み、同時に彼が青白い顔で海に沈んでいくと、ハッと気づいた。でも彼女は救いの手を差し伸べることはなく、わざわざ遠くにいる人を甲高い悲鳴を上げて呼んだ。
(イブリンはあの時何を考えていたんだろう……?なんで伸ばしていた腕を引っ込めたんだ……?彼女の中で僕なんか助ける価値もない男なのか……?怖くて聞けない)
結局のところ彼は海水をある程度飲んでしまったけど、どうにか一命を取り止めて助かりました。彼を救助したのは、見知らぬ親切な人でした。
不自然な彼女の行動に彼は聞きたい事が山ほどある。だけど答えを聞くのが恐ろしくて問いただせない。まだ僕の反省が足りないのだろう……。だから彼女はあのような冷酷な態度をとったのかな?
簡易的な医療処置が行われてベッドの上で横になっている。彼の心はいつまでも不安が渦巻いていた。
4
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者と養い親に不要といわれたので、幼馴染の側近と国を出ます
衿乃 光希
恋愛
卒業パーティーの最中、婚約者から突然婚約破棄を告げられたシェリーヌ。
婚約者の心を留めておけないような娘はいらないと、養父からも不要と言われる。
シェリーヌは16年過ごした国を出る。
生まれた時からの側近アランと一緒に・・・。
第18回恋愛小説大賞エントリーしましたので、第2部を執筆中です。
第2部祖国から手紙が届き、養父の体調がすぐれないことを知らされる。迷いながらも一時戻ってきたシェリーヌ。見舞った翌日、養父は天に召された。葬儀後、貴族の死去が相次いでいるという不穏な噂を耳にする。恋愛小説大賞は51位で終了しました。皆さま、投票ありがとうございました。
【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。
凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」
リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。
その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。
当然、注目は私達に向く。
ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた──
「私はシファナと共にありたい。」
「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」
(私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。)
妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。
しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。
そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。
それとは逆に、妹は──
※全11話構成です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。
初恋のひとに告白を言いふらされて学園中の笑い者にされましたが、大人のつまはじきの方が遥かに恐ろしいことを彼が教えてくれました
3333(トリささみ)
恋愛
「あなたのことが、あの時からずっと好きでした。よろしければわたくしと、お付き合いしていただけませんか?」
男爵令嬢だが何不自由なく平和に暮らしていたアリサの日常は、その告白により崩れ去った。
初恋の相手であるレオナルドは、彼女の告白を陰湿になじるだけでなく、通っていた貴族学園に言いふらした。
その結果、全校生徒の笑い者にされたアリサは悲嘆し、絶望の底に突き落とされた。
しかしそれからすぐ『本物のつまはじき』を知ることになる。
社会的な孤立をメインに書いているので読む人によっては抵抗があるかもしれません。
一人称視点と三人称視点が交じっていて読みにくいところがあります。
【完結】気味が悪いと見放された令嬢ですので ~殿下、無理に愛さなくていいのでお構いなく~
Rohdea
恋愛
───私に嘘は通じない。
だから私は知っている。あなたは私のことなんて本当は愛していないのだと──
公爵家の令嬢という身分と魔力の強さによって、
幼い頃に自国の王子、イライアスの婚約者に選ばれていた公爵令嬢リリーベル。
二人は幼馴染としても仲良く過ごしていた。
しかし、リリーベル十歳の誕生日。
嘘を見抜ける力 “真実の瞳”という能力に目覚めたことで、
リリーベルを取り巻く環境は一変する。
リリーベルの目覚めた真実の瞳の能力は、巷で言われている能力と違っていて少々特殊だった。
そのことから更に気味が悪いと親に見放されたリリーベル。
唯一、味方となってくれたのは八歳年上の兄、トラヴィスだけだった。
そして、婚約者のイライアスとも段々と距離が出来てしまう……
そんな“真実の瞳”で視てしまった彼の心の中は───
※『可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~』
こちらの作品のヒーローの妹が主人公となる話です。
めちゃくちゃチートを発揮しています……
幼なじみのとばっちりに巻き込まれ、そんな彼女に婚約者を奪われるまでしつこくされ、家族にも見捨てられた私に何を求めているのでしょう?
珠宮さくら
恋愛
カミーユ・サヴィニーは、幼なじみに婚約者を奪われることになった。
実母はそんなことになった結果だけを見て物凄く怒っていた。そして、勘当でも、修道院にでも行かせようとして、恥を晒した娘なんて、家に置いておけないとばかりに彼女の両親はした。実の兄は我関せずのままだった。
そんなカミーユのことを遠縁が養子にしたいと言い出してくれたことで、実家との縁を切って隣国へと行くことになったのだが、色んなことがありすぎたカミーユは気持ちに疎くなりすぎていたからこそ、幸せを掴むことになるとは思いもしなかった。
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる