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3話

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「久しぶりね」
「……ナタリア様!?」

見た感じ堅物そうな男の門番が立っていた。ナタリアが笑顔で陽気な声をかけると門番は一瞬だけ間があり驚いた声をあげた。この男とは互いに面識があり何度か挨拶程度の会話を交わしたこともある。最初に会った時は怖そうに思ったが以外に気のいい性格。

ナタリアが公爵令嬢で主人であるラウル王子の婚約者なので、柔らかな笑みをうかべて頭をさげるという丁寧な態度をとっていた。男は今は大きな口をあけてただ驚いている。

「カール驚きすぎよ?ふふふ」
「ナタリア様……お体は大丈夫なのですか?」

ナタリアは以前に聞いた名前を思い出した。男の名前はカール。信じられないほど動揺するカールにナタリアはいたずらっぽい視線を送って笑った。

カールは心を落ち着かせながら少し震えたように声を出した。ラウルの話ではナタリアは重い病気にかかって現在は病気療養に専念していることを教えてもらった。それなのに突然姿を見せたので度肝どぎもを抜かれる思いだった。

「ラウルはいる?」
「は、はい、ラウル様ならご在宅です」
「そう、ありがとう」

門番のカールと話すのも久しぶりで楽しいですが、当初の目的を実現させるべく恋人のラウルの居場所を聞き出す。カールは慌てたように返事をしてラウルが邸宅にいることを教えてくれた。ナタリアはお礼を言ってその場を立ち去っていく。

「ナタリア様!お待ち下さい!」
「え?」

ナタリアが邸宅内に入ろうとした時だった。後ろから声が聞こえた。大声で叫んでいるに等しい声の主はカール。ナタリアはいま一度立ち止まると後ろを振り返った。大急ぎで近づいてくるカールの顔は恐怖心を抱いて、取り乱していると言っていいほどに冷静さを失っていた。

「ラウル様はおりません!よく考えたらいらっしゃいませんでした!」
「カール何言ってるの?たった今いると言ったじゃないの?」

カールは耳を疑うことを言い始めた。ラウル王子はいないという。さっき言った事と180度異なる答えだった。おかしなことを言う人だと思いながらナタリアは首をかしげ眉を寄せてカールを見た。

「ナタリア様すみません。私の勘違いだったようです」
「カールあなた変よ。大丈夫?」

カールは勘違いだと言いますが、勘違い?ってそれはないでしょう。人間の記憶はあやふやなものですが、今言ったことを忘れるほどではない。どうしてカールは突然そんなことを言い出したのかと思えてくる。
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