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第13話 美しい顔で能力の高い兄の最大の弱点
「――イリスどこにいるんだ? イリスーーーーー! お願いだから返事をしてくれえええ!」
伯爵邸の広い正面ホールで妹の名を叫んだ兄のシモンは、イリスを目指して猪突猛進にぐるぐる走り回っていた。
現在は薄暗い部屋の中で大声で妹を呼びかけ続けたが、反応はなく途方に暮れるばかりだった。
「イリスが助けを待っているのに……何もできない自分が悔しい……」
兄として情けないと思いながら、シモンは不満そうに愚痴をこぼすと悔しさに耐えるように唇を噛んだ。周囲から呆れられるほどイリスを溺愛して朝から晩まで頭の中にイリスがいる。
「私はなんて無能な男なんだ……」
妹を救うためにやって来たのに、自分自身に言いようのない腹立たしさを感じていた。シモンは今にも泣きそうな顔でうるんだ眼が美しく光って見えた。
「――こんなの絶対おかしい! あの料理人の言う通りに進んでいたのに……」
シモンはぶつぶつ文句を言いながら、これまでの行動を振り返ってみた。今から三十分前には最高の気分でイリスという姫を助けるべく伯爵邸へ勇ましく乗り込んだ。
イリスの危機を知ったのは深夜早朝の時間帯。シモンは世界でも指折りの自然魔法の使い手で、大切な妹に色々な魔法を施して身を守っていた。
「今日のイリスはどうかなぁ?」
シモンは盗聴器と同じような機能の魔法をイリスの体を包むように付与している。それにより日頃からイリスの会話や音声を盗み聞きして陰ながら見守っていた。
プライバシーに関わるので当然だがイリスには秘密で言えない。正直に盗聴魔法をかけたいと言えば、頑なに拒むことは目に見えているのであえて言う必要もありません。
この日もシモンは毎日の楽しい日課になっているイリスの安全確認を行うために、録音された音声を再生した。途中までは問題はないと何度も頷きながら、口元が緩んでニヤけた顔つきで聞いていた。
「――何だと!?」
夫婦の会話を聞いていた時でした。突然シモンは気迫のこもった声を出して平常心を失った顔になる。夫のレオナルドがイリスに家を出て行けと言った。
「あいつは何を言ってるんだ? 冗談じゃなく本気か?」
最初シモンはレオナルドがふざけて冗談で言っていると思いましたが、残念なことに間違いなく真面目に言っていると確信した。
「レオナルド許さん! 私との約束を忘れたのか? 今度イリスを傷つけたら命はないと言って脅しておいたのに。あいつは頭に障害でもあるのか? とにかく頭が悪いらしいな……」
次々と耳を疑うような言葉を発するレオナルドに、過去の一連の出来事が頭に浮かんでレオナルドの頭は大丈夫なのか? と正気とは思えない気がした。
シモンは急いで支度を整えるとイリスが暮らす伯爵領へ向かった。
伯爵邸の広い正面ホールで妹の名を叫んだ兄のシモンは、イリスを目指して猪突猛進にぐるぐる走り回っていた。
現在は薄暗い部屋の中で大声で妹を呼びかけ続けたが、反応はなく途方に暮れるばかりだった。
「イリスが助けを待っているのに……何もできない自分が悔しい……」
兄として情けないと思いながら、シモンは不満そうに愚痴をこぼすと悔しさに耐えるように唇を噛んだ。周囲から呆れられるほどイリスを溺愛して朝から晩まで頭の中にイリスがいる。
「私はなんて無能な男なんだ……」
妹を救うためにやって来たのに、自分自身に言いようのない腹立たしさを感じていた。シモンは今にも泣きそうな顔でうるんだ眼が美しく光って見えた。
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シモンはぶつぶつ文句を言いながら、これまでの行動を振り返ってみた。今から三十分前には最高の気分でイリスという姫を助けるべく伯爵邸へ勇ましく乗り込んだ。
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「今日のイリスはどうかなぁ?」
シモンは盗聴器と同じような機能の魔法をイリスの体を包むように付与している。それにより日頃からイリスの会話や音声を盗み聞きして陰ながら見守っていた。
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「――何だと!?」
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次々と耳を疑うような言葉を発するレオナルドに、過去の一連の出来事が頭に浮かんでレオナルドの頭は大丈夫なのか? と正気とは思えない気がした。
シモンは急いで支度を整えるとイリスが暮らす伯爵領へ向かった。
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