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「ミュエルにドレスを貸してあげてください。私が責任を持ってドレスをお返しします」

シャールの幼馴染のアニーが数えきれないほど度々でしゃばって来た。彼と浮気してるくせに押しかけて来て悪びれる風もない。

わざと嫌がらせしに来ていることは容易に分かる。全くその通りで最初からドレスを返す気も彼らには更々ないのです。


実はマライアは母にドレスを貸すことになるかもしれないと相談していました。母は悲しい気分を吹っ飛ばそうという表情で喋り始める。

「貸してあげなさい。それよりもこんなことが原因で殿下と仲が悪くなって婚約が無くなる方が切ないわ」

マライアは彼が浮気してることをこの時は母に正直に言えませんでした。心の底で誰よりも大切にしている母に一層悲しい思いをさせたくなかったのです。

「でもドレスを貸す時は殿下にも同席してもらって、ドレスがどんなに綺麗な状態なのか確認してから渡したほうがいいわ」
「お母様わかりました」
「汚れて返ってきたり、戻ってこなかったりしたら誰の目にも分かるようにね」 

母からは貸すように説得されましたが、マライアには結局その選択は出来ませんでした。自分を裏切り幼馴染と浮気している彼の頼みを聞きたくなかったのです。

「このドレスはお貸しできません!」
「マライアそんなに強情にならなくても……」

シャールの言葉に苛立つ気持ちを抑えられない。マライアは使用人に命令して彼も妹も幼馴染も取り巻きの令嬢達も全員家から叩き出しました。

「どうしたのですか?」
「いったい何で私達がこのような扱いをされるのですか?」
「マライア理由を教えてくれ!」
「胸に手を当てて考えてみなさい!」

追い出されたら全員が余裕もなくなり、なり振り構わず質問攻めにする。まぁ、いきなり体を掴まれて物騒に外に放りだされたら必死になるのも当然だと思う。

それに対して、しれっとした顔でその言葉をスルーしてぞんざいにあしらいマライアは一喝する。今叩き出した奴らは彼も含めてマライアの敵なので何も感じない。

「この前の事だろ?お祝いの約束を破ったことは申し訳ないと思ってる。そのことは毎日後ろめたさを感じていた。僕が酒に弱いから眠ってしまっただけなんだ。もう二度としないと誓うよ」
「アニーと浮気してるのは知っています」
「えっ!」

このまま放置すると嘘だらけの言い訳を永遠に繰り返しそうなので、アニーとのことを分かっていると伝えた。すると全員が驚く。思いがけない言葉だったらしく石のように固まっていた。だがシャールは目の色を変えて暴走状態になる。
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