婚約したのに好きな人ができたと告白された「君の妹で僕の子を妊娠してる」彼に衝撃の罰が下される。

第24話

「いつも私といるから休みの日くらい家族と過ごしたら？」
「でもアリスと一緒にいたいんだ」

アリスが聞かない限り男も家庭の話をしなくなる。だが前よりも男と会う回数は増えていた。それでもアリスは男とずっと寄り添っていたかったけど心で強がってみせた。

男の前では笑顔を絶やさぬようにと気を配った。でも、影では泣くことも多くて家族や友人の誘いも断るようになり、アリスは自分の時間を空けていつでも男と会えるように待っていた。

「今度は私と会えるって言ったでしょ？」
「すまない……急に用事ができて……」
「私のことはどうでもいいの？」
「そんなことはない」

この頃は、ほんの些細な出来事でも苛立ちを覚えるようになり、口喧嘩をして手紙での連絡が少しでも遅れるだけで無性に不安になった。

本当は聞きたくないけど気になって家庭のことを尋ねると、嬉しそうに話す男にも憎らしく思えて仕方がなかったのである。

アリスは男の家庭がうらやましく感じるようになって、余裕がなくなっていた自分に気がつく。

アリスの場合は子供はメイドに任せきりで、夫のテリーと子供にもそれほど愛情はない。だが男に対しては陽だまりのような愛情を注いでいた。

「久しぶりのアリスとの旅行で気分が高まる」
「私もよ」

男が寛容な性格だから、自分の全てを受け止めてもらいたくなる。もちろん口にはしていませんが、いつでも励まして欲しいし慰めて欲しい。

だが、この時男の家族に自分の中に嫉妬めいた感情が芽生えてしまって、アリスは男と別れてけじめをつけようと考えを巡らせていたのです。

二人で海に行く約束をして帰ったら終わりにしようと思っていた。アリスの気持ちなんて全く知らない男は当日に近づくにつれて笑顔で語っていました。

「あなたは奥さんになんて言ったの？」
「仕事で用事があるって……アリスは？」
「私は友人と旅行に行くって言ったわ」

当日はお互いの家族に適当な口実をもうけて出掛ける。アリスのほうは全然問題はないけど、男のほうは妻に知られたら大変である。

主要取引先の幹部から、ぜひにとすすめられて断るのも悪いと思ったと無理のない理由を考えたらしい。

これが男との最後の思い出になるかもしれないと心で感じていたアリスは複雑な気持ちだった。男は移動中も楽しそうに、はしゃぐ声を出していましたが逆にアリスは静まり返っていた。

「アリスもおいで！」

海に到着すると、今までに見たことがないくらい男が喜んで子供みたいに飛びまわる。そんな楽しそうな男の姿を見てしまったら、切ない気持ちが胸に込み上げてきて思わず涙が出てしまう。

「どうしたんだ？」

アイスの異変に気がついた男は、足早に近づいてきて肩を抱きゆっくりと撫でながら、穏やかな顔で心情を思いやる言葉で慰め続けていた。