突然「彼と別れて婚約破棄してください」と言われる〜恋人の王太子殿下に確認すると浮気相手と結婚したい？弱みを握られてました

第12話

クロエ令嬢はすぐに後を追いかけようとしましたが既にマクシム殿下の後ろ姿がはるか遠くに見える。

事態が激変してこれが太陽の光りのように疑う余地のない事実なのか？　どうしても理解できなくて体を動かすことができずに泣くのも忘れて立ち尽くしていた。

「クロエ大丈夫か？　わけを教えてくれ！」

横からレオン令息が自分を呼ぶ声が何となく聞こえたが、思い詰めた表情の美少女は壊れた玩具のように何の反応もしない。

「クロエしっかりしろ！」

うっすらと意識がかすんできて今にも気を失いそう。

視界が揺れ目の前が暗くなった――


目を覚ますと声が聞こえた。

「クロエ！」
「レオン？」
「良かった……」

学園の医務室までレオン令息が運んできてくれたらしい。端正な顔立ちが少し微笑むと子犬のようになり愛らしい顔立ちになった。

その顔を見ると胸の中に蓄積されたもやもやとしたものが全部洗い落とされるみたいで心が和らぐ。

現実を受け止めることができなかったクロエ令嬢は頭が一杯になり、心に余裕が消え体が悲鳴をあげて倒れてしまったのです。

「私はどのくらい気を失っていたの？」
「ほんの10分くらいだよ」
「そう、ありがとう」
「それで聞きたいのは僕の方なんだけど……マクシムと何があったのかいい加減教えてくれないか？」

クロエ令嬢のいつもの美しい眼は定まらない視点で心の内で思い悩む。自分でもわからないのに話していいものかと。

イリス令嬢から言われたことをそのまま話すべきか？　そしたらレオン令息も力になってくれるかもしれない。いや、彼なら必ず助けてくれる。

義理と人情に厚い紳士が親友が困っていると聞けば協力してくれるだろう。クロエ令嬢は自分の知っていることを伝えました。

と言っても、詳しい理由もわからないのでイリス令嬢に乱暴に言い放たれたマクシム殿下と別れてくれと言う事だけですが。

「なんだそれ！？」
「どう思う？」
「僕も調べてみるよ」

男性から見ても吸付いてみたいほどの綺麗な顔の美少年の真剣な表情でやる気を見せられて、クロエ令嬢の心臓は跳ねて口笛を強く吹き鳴らしたいほど胸が熱くなる。


その頃、青白くなっている顔は目に生気がなく視線は下を向いているぎゅっと抱きしめたいくらいあどけない美少年がいた。

大粒の涙が止まることなく雨のように流れている。

食堂から飛び出したマクシム殿下が誰も居ないところで泣き崩れています。

「マクシム」
「イ、イリス……な、なんだよ…こ、こないでよ…僕を苦しめないで……」
「マクシム好きよ」
「こ、怖いことしないで……」

風のように舞い込んできたイリス令嬢が虫の息と言っていいほどの弱りかけのかわいい小動物に声をかけた。

震えた美少年は悲痛な切迫した口調で、タヌキ顔の美少女にひどく動揺して怖さで息も詰まる。

癒し系な雰囲気の顔のイリス令嬢に何をそんなに震えているのか？普通なら理解できないが、この怯えようは一目見た者なら生半可なことではないと察するだろう。

ほんのちょっとの隙をついてマクシム殿下は赤ちゃんみたいにハイハイして震えた足を絡ませながら生にしがみつくように逃げ出す。

「そんなスピードで逃げれると思ってるの？」
「や、やめて！　近づかないで……ん、ん…ん……んぐ…ん……んぐ…」

地面に手と膝を付きながら逃げられるはずもないのだが、とっくに頭の中がパニック状態になっているので最大限の頑張りで力の限り抵抗をしたと思っている。

イリス令嬢に突然キスをされた。かなり長い口付けにマクシム殿下は深い泥の底にいるような息苦しい気持ちでした。