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第13話
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医務室から出たクロエ令嬢は教室に戻りましたが、これから直ぐに午後の授業が始まるというのにマクシム殿下の姿はどこにもありません。
「あの…」
「何でしょう? クロエ様」
「マクシム殿下は知りませんか?」
「王太子殿下……いえ、存じません」
その後もクロエ令嬢はクラスメート数人にマクシム殿下のことを尋ねてみましたが何も知らないようだった。
「クロエ!」
「レオン!?」
先ほど医務室で別れたレオン令息が心の高ぶりと焦りを抑えきれない顔をして乱れた声で呼ぶ。
「マクシムは早退したらしい」
「え? もう学園にいないってこと?」
「そのようだね。聞いた話によるとイリス令嬢と一緒にいたそうだよ」
「じゃあ二人で帰ったんだね……」
学園の食堂であんなことがあって学園にいるはずもないかと思い、胸の底から寂しさがこみ上げる美しい金髪の美少女。
「どうする?」
「どうするって?」
「決まってるじゃないか。僕達も早退してマクシム達の後を追うんだ」
「そうだね……ついてきてくれる?」
「僕はいつでも君の力になるよ」
立ち直れないほど落ち込んでいたクロエ令嬢だったが、なんとも言えない勇ましい親友と呼べる優男の言葉に力を感じて気持ちを奮い起こす。
やっぱり彼に相談して良かった。頼りになるレオン令息に沈んだ気分と心が洗われるように頭の中の霧が晴れ、彼の笑顔は細波のようにクロエ令嬢の胸の中に広がる。
今は学園を出てクロエ令嬢とレオン令息は馬車の中。二人は頭に浮んだ考えを整理するかのように呟き、とりあえずイリス令嬢の邸宅に行くことが決まる。
「クロエ」
「レオンなに?」
「こんな時に言うのもなんだけど……」
「うん」
「僕はクロエのことが好きなんだ」
「え……?」
「昔からずっと好きだった。君の顔を見るたびに心が苦しかった……」
想いが口からあふれ出てきたレオン令息。今言わないと後悔すると思って突然の告白の決意をした。
クロエ令嬢は気が動転して言葉が見つからない。心が波立ち騒いで落ち着かなくなり激しく心臓が鼓動し始める。
「なに冗談言ってるの?」
隣にいる胸のうちを明かしてきた彼の気持ちをうかがうように上目遣いの笑顔で切り返す。
彼のことは好きだ。好きなのは間違いないが、自分はマクシム殿下の恋人で婚約者。
愛嬌のある憎めない子供のようにあどけないレオン令息の顔を見ると、胸のどこかを小突かれたようにときめいて感情が燃え立つのを感じた。
「ごめん…今のは忘れてくれ…どうかしてた。それにマクシムに悪いよな……」
「私もレオンのことが好き」
「クロエ……」
クロエ令嬢も彼のことを好きなことに気がついた。心が躍り上がりこの胸の高鳴りはもう抑えられない。
じっとお互いの目を見つめる二人は映画スターのよう。レオン令息はまともでないと思われてもいいようなほど力強くクロエ令嬢を抱き締める。
「もう離したくない!」
「レオン!?」
「正直に言うと、話を聞いた時今回のことは都合が良いと思った」
「どうして?」
「マクシムがイリスと結婚すれば僕がクロエと一緒になれるから…」
「……」
「僕はずるい奴だな…親友が大変な時に……」
「そんなことない!」
「え? クロエ?」
「私もレオンに心を支えられたから……」
二人は激しく抱き合う度に信じ合った心は鋼よりも固いという信頼の絆を結ぶ。
両目から涙がはらはらと流れるクロエ令嬢は今まで寂しさを堪えていた。
イリス令嬢の言った通りにマクシム殿下から別れを切り出された時は、現実を受け止められなくて辛くてこの世が終わるような悲しみで全てから逃げ出したかった。
「マクシムとイリスの間に何があってもクロエは僕が守るから安心していいからね」
「うん……」
魅力に溢れた美少年の胸に頬を寄せ、胸の中で溶けてしまいそうなくらいに泣いた。新しい涙が泉のように湧いて彼の心臓の上に耳をつけて心を落ち着かせる。
「あの…」
「何でしょう? クロエ様」
「マクシム殿下は知りませんか?」
「王太子殿下……いえ、存じません」
その後もクロエ令嬢はクラスメート数人にマクシム殿下のことを尋ねてみましたが何も知らないようだった。
「クロエ!」
「レオン!?」
先ほど医務室で別れたレオン令息が心の高ぶりと焦りを抑えきれない顔をして乱れた声で呼ぶ。
「マクシムは早退したらしい」
「え? もう学園にいないってこと?」
「そのようだね。聞いた話によるとイリス令嬢と一緒にいたそうだよ」
「じゃあ二人で帰ったんだね……」
学園の食堂であんなことがあって学園にいるはずもないかと思い、胸の底から寂しさがこみ上げる美しい金髪の美少女。
「どうする?」
「どうするって?」
「決まってるじゃないか。僕達も早退してマクシム達の後を追うんだ」
「そうだね……ついてきてくれる?」
「僕はいつでも君の力になるよ」
立ち直れないほど落ち込んでいたクロエ令嬢だったが、なんとも言えない勇ましい親友と呼べる優男の言葉に力を感じて気持ちを奮い起こす。
やっぱり彼に相談して良かった。頼りになるレオン令息に沈んだ気分と心が洗われるように頭の中の霧が晴れ、彼の笑顔は細波のようにクロエ令嬢の胸の中に広がる。
今は学園を出てクロエ令嬢とレオン令息は馬車の中。二人は頭に浮んだ考えを整理するかのように呟き、とりあえずイリス令嬢の邸宅に行くことが決まる。
「クロエ」
「レオンなに?」
「こんな時に言うのもなんだけど……」
「うん」
「僕はクロエのことが好きなんだ」
「え……?」
「昔からずっと好きだった。君の顔を見るたびに心が苦しかった……」
想いが口からあふれ出てきたレオン令息。今言わないと後悔すると思って突然の告白の決意をした。
クロエ令嬢は気が動転して言葉が見つからない。心が波立ち騒いで落ち着かなくなり激しく心臓が鼓動し始める。
「なに冗談言ってるの?」
隣にいる胸のうちを明かしてきた彼の気持ちをうかがうように上目遣いの笑顔で切り返す。
彼のことは好きだ。好きなのは間違いないが、自分はマクシム殿下の恋人で婚約者。
愛嬌のある憎めない子供のようにあどけないレオン令息の顔を見ると、胸のどこかを小突かれたようにときめいて感情が燃え立つのを感じた。
「ごめん…今のは忘れてくれ…どうかしてた。それにマクシムに悪いよな……」
「私もレオンのことが好き」
「クロエ……」
クロエ令嬢も彼のことを好きなことに気がついた。心が躍り上がりこの胸の高鳴りはもう抑えられない。
じっとお互いの目を見つめる二人は映画スターのよう。レオン令息はまともでないと思われてもいいようなほど力強くクロエ令嬢を抱き締める。
「もう離したくない!」
「レオン!?」
「正直に言うと、話を聞いた時今回のことは都合が良いと思った」
「どうして?」
「マクシムがイリスと結婚すれば僕がクロエと一緒になれるから…」
「……」
「僕はずるい奴だな…親友が大変な時に……」
「そんなことない!」
「え? クロエ?」
「私もレオンに心を支えられたから……」
二人は激しく抱き合う度に信じ合った心は鋼よりも固いという信頼の絆を結ぶ。
両目から涙がはらはらと流れるクロエ令嬢は今まで寂しさを堪えていた。
イリス令嬢の言った通りにマクシム殿下から別れを切り出された時は、現実を受け止められなくて辛くてこの世が終わるような悲しみで全てから逃げ出したかった。
「マクシムとイリスの間に何があってもクロエは僕が守るから安心していいからね」
「うん……」
魅力に溢れた美少年の胸に頬を寄せ、胸の中で溶けてしまいそうなくらいに泣いた。新しい涙が泉のように湧いて彼の心臓の上に耳をつけて心を落ち着かせる。
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