34 / 47
第34話
しおりを挟む
「はーっ」
独身者が出会いのためにパーティーに出席しているが、クロエは恋愛経験にも乏しいために苦戦していた。男女がカップル成立を目指すパーティーで婚活の一種だ。すぐに打ち解けることができないクロエはバルコニーへ出ると遠くの景色を眺めてため息をもらす。
天上の世界に戻ってきたクロエは神である父からの命令で、婿を取らなければならない。将来の神の後継者を連れて来いと言われたのだ。ところがどっちを向いてもろくな男がいない。さらに結婚なんかしなくてもいいと言う気持ちもある。その時、男性がひとりバルコニーに出てきた。
「あなたも望むとおりの人がいなかったのですか?」
クロエは自分と同じように良き相手がいなかったのだろうと思い反射的に話しかけてしまった。
「えっ?違いますけど?」
男性は不思議そうな顔をして言葉を返した。途端にクロエは恥かしそうな表情に変わっていく。その男性をよく見ると高身長で充実した雰囲気で俳優のような風貌で輝いている。そう言えば色んな女性に囲まれて楽しそうにしていたなと思い出した。
「あの……もし悩みがあるなら話を聞かせてくれないですか?僕も何か力になれるかもしれない」
人の良さそうな顔で男性はそう言ってきた。あれだけ女性たちに愛想の良い態度をとっておいて、自分も口説こうとするのかと積極的な姿勢にクロエは本能的にひるんでしまった。
「あなたに話しても……」
「そう言わないで」
クロエはちょっと躊躇したが、男性は近寄ってだんだん迫って来る。クロエは困ったように赤くなって強引な男性に諦めの顔を浮かべて話し始めるのだった。
「私はこの前まで地上で暮らしていて……」
「えぇ!?人間の世界に行っていたの?」
「はい……」
「どうして?」
クロエは話しました。神である父が20年くらい前に地上の不幸な国を救済のために自分を人間の世界に送り込んだこと。その国の王子に見初められ婚約していたが、婚約破棄されて国から追放された。今はしばらく静養していたら、父に婿を連れて来なさいと言われて、この男女の出会いの場に胸の中に不満をかかえながら嫌々やって来たと話した。
「私の人生ボロボロなんです。王子と婚約して多少は嬉しかったのにあんなことになって、最後に王子に求愛されても今さら納得できなくて帰って来たのです」
クロエはハアハアと息を切らしながら心の扉を開けた。会ったばかりの男性に何故か素直な気持ちで話した。男性はずっと黙って聞き役に徹していてくれたのも気持ちがよかったかもしれない。
「そのくらい騒ぎ立てるほどのことではないと思うけど?」
男性はクロエの話を聞き終えると、別に大したことないんじゃないかと屈託のない笑顔で応えた。
独身者が出会いのためにパーティーに出席しているが、クロエは恋愛経験にも乏しいために苦戦していた。男女がカップル成立を目指すパーティーで婚活の一種だ。すぐに打ち解けることができないクロエはバルコニーへ出ると遠くの景色を眺めてため息をもらす。
天上の世界に戻ってきたクロエは神である父からの命令で、婿を取らなければならない。将来の神の後継者を連れて来いと言われたのだ。ところがどっちを向いてもろくな男がいない。さらに結婚なんかしなくてもいいと言う気持ちもある。その時、男性がひとりバルコニーに出てきた。
「あなたも望むとおりの人がいなかったのですか?」
クロエは自分と同じように良き相手がいなかったのだろうと思い反射的に話しかけてしまった。
「えっ?違いますけど?」
男性は不思議そうな顔をして言葉を返した。途端にクロエは恥かしそうな表情に変わっていく。その男性をよく見ると高身長で充実した雰囲気で俳優のような風貌で輝いている。そう言えば色んな女性に囲まれて楽しそうにしていたなと思い出した。
「あの……もし悩みがあるなら話を聞かせてくれないですか?僕も何か力になれるかもしれない」
人の良さそうな顔で男性はそう言ってきた。あれだけ女性たちに愛想の良い態度をとっておいて、自分も口説こうとするのかと積極的な姿勢にクロエは本能的にひるんでしまった。
「あなたに話しても……」
「そう言わないで」
クロエはちょっと躊躇したが、男性は近寄ってだんだん迫って来る。クロエは困ったように赤くなって強引な男性に諦めの顔を浮かべて話し始めるのだった。
「私はこの前まで地上で暮らしていて……」
「えぇ!?人間の世界に行っていたの?」
「はい……」
「どうして?」
クロエは話しました。神である父が20年くらい前に地上の不幸な国を救済のために自分を人間の世界に送り込んだこと。その国の王子に見初められ婚約していたが、婚約破棄されて国から追放された。今はしばらく静養していたら、父に婿を連れて来なさいと言われて、この男女の出会いの場に胸の中に不満をかかえながら嫌々やって来たと話した。
「私の人生ボロボロなんです。王子と婚約して多少は嬉しかったのにあんなことになって、最後に王子に求愛されても今さら納得できなくて帰って来たのです」
クロエはハアハアと息を切らしながら心の扉を開けた。会ったばかりの男性に何故か素直な気持ちで話した。男性はずっと黙って聞き役に徹していてくれたのも気持ちがよかったかもしれない。
「そのくらい騒ぎ立てるほどのことではないと思うけど?」
男性はクロエの話を聞き終えると、別に大したことないんじゃないかと屈託のない笑顔で応えた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3,821
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる