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第15話

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「クロエ……」
「勝手に娘に話しかけるな!まだ反省していろ!」

ひれ伏した低姿勢のジャックが顔を上げて恋人の名前を救いを求める瞳で頼りなさげな声で呼ぶと父親が爆発したように怒鳴り烈火のごとく叱責した。

「お父様ジャックと二人きりで話させてください」
「それは駄目だ!お前一人ではこの男に言いくるめられる」
「彼のことはよく分かっていますから大丈夫です。何かあれば迷うことなく奇声を発して大騒ぎしますから……」
「わかった。それなら二人で話してみろ」

クロエは父親に恋人と他に誰も居ない二人だけの状況で話し合いたいと口にするが、父親は少し荒い声でビシッと否定してクロエの感情など一切受け付けてもらえない。

それも親が子供を心配する筋が通っている理由で、ジャックから一方的に言われてクロエが納得させられるのを警戒して気にかけていた。ところがクロエから不測の事態が起きれば即座に大声で助けを呼ぶと説得すると父親の承諾を得られる。ジャックを大変な剣幕で睨みつけながらその場から姿を消す。

巧みに父親を説き伏せて部屋から退出させたクロエは、カエルのように床に這いつくばるジャックに慈愛に満ちた表情を向けて優しく微笑み心のうちを明かし始める。

「別に私はエリザベスが嫌いで帰ったんじゃないよ」
「それならどうして?」
「エリザベスがあなたのことを馬鹿にしたのよ」
「えっ……どういうこと?」

エリザベスは一般常識も欠けているしお姫様みたいな自己中心的な性格で他人の心の中を土足で踏み荒らし懐いた人には際限なく甘えてきて厚かましいが、クロエは本気でエリザベスのことを嫌っているのではないと言う。

この日も毎度のごとくクロエはエリザベスに呼び寄せられてジャックの家で楽しいお喋りをしてエリザベスの趣味のことなど話し合っていた。するとエリザベスは何げなく口に出す。

「ジャックは優しくてお人好しで素朴な心を持っている人だけど頭の発達が幼稚でお話にならない低能だからクロエさんと私の趣味が分かり合えて嬉しい」
「はっ?私の恋人を馬鹿にしないでくれる?」
「ごめんなさい……私そんなつもりで言ったんじゃ……」
「じゃあどういうつもりで彼を馬鹿だと言ったの?」

エリザベスはジャックを低く見て、なめた感じでせせら笑うような言い方をしたのだ。恋人を見下され上から目線で過小評価されたクロエは不愉快な顔つきになり、とがめるような厳しい口調で怒りをこめて睨みつける。

怒られ慣れてないエリザベスは気持ちが高ぶって突如として泣き出す。クロエがいくら謝って慰めても泣き止まず身を震わせながら高周波の泣き声を上げ続けた。

クロエは妙な戸惑いを感じて疲れた顔で困り果てる。警報器のように頭に響くうっとうしい泣き声に我慢の限界で衝動的に突き動かされて部屋から飛び出して帰ったと言うのが真相らしい。

「あなたは家の問題もあるし今まで通りエリザベスと仲良くすればいい。でも私はたまになら彼女の相談に乗って話し相手になるけど頻繁に呼ばれるのはもう無理だから」
「クロエ今までごめんね」

恋人から本音を漏らされたジャックは態勢を立て直して謝罪すると、上品で美しい顔は無邪気に微笑みジャックも嬉しさに動かされて無意識に微笑み返した。
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