婚約者の家に行ったら幼馴染がいた。彼と親密すぎて婚約破棄したい。

佐藤 美奈

文字の大きさ
15 / 44

第15話

しおりを挟む
「クロエ……」
「勝手に娘に話しかけるな!まだ反省していろ!」

ひれ伏した低姿勢のジャックが顔を上げて恋人の名前を救いを求める瞳で頼りなさげな声で呼ぶと父親が爆発したように怒鳴り烈火のごとく叱責した。

「お父様ジャックと二人きりで話させてください」
「それは駄目だ!お前一人ではこの男に言いくるめられる」
「彼のことはよく分かっていますから大丈夫です。何かあれば迷うことなく奇声を発して大騒ぎしますから……」
「わかった。それなら二人で話してみろ」

クロエは父親に恋人と他に誰も居ない二人だけの状況で話し合いたいと口にするが、父親は少し荒い声でビシッと否定してクロエの感情など一切受け付けてもらえない。

それも親が子供を心配する筋が通っている理由で、ジャックから一方的に言われてクロエが納得させられるのを警戒して気にかけていた。ところがクロエから不測の事態が起きれば即座に大声で助けを呼ぶと説得すると父親の承諾を得られる。ジャックを大変な剣幕で睨みつけながらその場から姿を消す。

巧みに父親を説き伏せて部屋から退出させたクロエは、カエルのように床に這いつくばるジャックに慈愛に満ちた表情を向けて優しく微笑み心のうちを明かし始める。

「別に私はエリザベスが嫌いで帰ったんじゃないよ」
「それならどうして?」
「エリザベスがあなたのことを馬鹿にしたのよ」
「えっ……どういうこと?」

エリザベスは一般常識も欠けているしお姫様みたいな自己中心的な性格で他人の心の中を土足で踏み荒らし懐いた人には際限なく甘えてきて厚かましいが、クロエは本気でエリザベスのことを嫌っているのではないと言う。

この日も毎度のごとくクロエはエリザベスに呼び寄せられてジャックの家で楽しいお喋りをしてエリザベスの趣味のことなど話し合っていた。するとエリザベスは何げなく口に出す。

「ジャックは優しくてお人好しで素朴な心を持っている人だけど頭の発達が幼稚でお話にならない低能だからクロエさんと私の趣味が分かり合えて嬉しい」
「はっ?私の恋人を馬鹿にしないでくれる?」
「ごめんなさい……私そんなつもりで言ったんじゃ……」
「じゃあどういうつもりで彼を馬鹿だと言ったの?」

エリザベスはジャックを低く見て、なめた感じでせせら笑うような言い方をしたのだ。恋人を見下され上から目線で過小評価されたクロエは不愉快な顔つきになり、とがめるような厳しい口調で怒りをこめて睨みつける。

怒られ慣れてないエリザベスは気持ちが高ぶって突如として泣き出す。クロエがいくら謝って慰めても泣き止まず身を震わせながら高周波の泣き声を上げ続けた。

クロエは妙な戸惑いを感じて疲れた顔で困り果てる。警報器のように頭に響くうっとうしい泣き声に我慢の限界で衝動的に突き動かされて部屋から飛び出して帰ったと言うのが真相らしい。

「あなたは家の問題もあるし今まで通りエリザベスと仲良くすればいい。でも私はたまになら彼女の相談に乗って話し相手になるけど頻繁に呼ばれるのはもう無理だから」
「クロエ今までごめんね」

恋人から本音を漏らされたジャックは態勢を立て直して謝罪すると、上品で美しい顔は無邪気に微笑みジャックも嬉しさに動かされて無意識に微笑み返した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ

恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。 王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。 長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。 婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。 ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。 濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。 ※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています

フッてくれてありがとう

nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」 ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。 「誰の」 私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。 でも私は知っている。 大学生時代の元カノだ。 「じゃあ。元気で」 彼からは謝罪の一言さえなかった。 下を向き、私はひたすら涙を流した。 それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。 過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──

元平民の義妹は私の婚約者を狙っている

カレイ
恋愛
 伯爵令嬢エミーヌは父親の再婚によって義母とその娘、つまり義妹であるヴィヴィと暮らすこととなった。  最初のうちは仲良く暮らしていたはずなのに、気づけばエミーヌの居場所はなくなっていた。その理由は単純。 「エミーヌお嬢様は平民がお嫌い」だから。  そんな噂が広まったのは、おそらく義母が陰で「あの子が私を母親だと認めてくれないの!やっぱり平民の私じゃ……」とか、義妹が「時々エミーヌに睨まれてる気がするの。私は仲良くしたいのに……」とか言っているからだろう。  そして学園に入学すると義妹はエミーヌの婚約者ロバートへと近づいていくのだった……。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

幼馴染の王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。 何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。 同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。 もうやめる。 カイン様との婚約は解消する。 でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。 愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません! 一度完結したのですが、続編を書くことにしました。読んでいただけると嬉しいです。 いつもありがとうございます。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

旦那様は私より幼馴染みを溺愛しています。

香取鞠里
恋愛
旦那様はいつも幼馴染みばかり優遇している。 疑いの目では見ていたが、違うと思い込んでいた。 そんな時、二人きりで激しく愛し合っているところを目にしてしまった!?

婚約者は幼馴染みを選ぶようです。

香取鞠里
恋愛
婚約者のハクトには過去に怪我を負わせたことで体が不自由になってしまった幼馴染がいる。 結婚式が近づいたある日、ハクトはエリーに土下座して婚約破棄を申し出た。 ショックではあったが、ハクトの事情を聞いて婚約破棄を受け入れるエリー。 空元気で過ごす中、エリーはハクトの弟のジャックと出会う。 ジャックは遊び人として有名だったが、ハクトのことで親身に話を聞いて慰めてくれる。 ジャックと良い雰囲気になってきたところで、幼馴染みに騙されていたとハクトにエリーは復縁を迫られるが……。

【完結】精神的に弱い幼馴染を優先する婚約者を捨てたら、彼の兄と結婚することになりました

当麻リコ
恋愛
侯爵令嬢アメリアの婚約者であるミュスカーは、幼馴染みであるリリィばかりを優先する。 リリィは繊細だから僕が支えてあげないといけないのだと、誇らしそうに。 結婚を間近に控え、アメリアは不安だった。 指輪選びや衣装決めにはじまり、結婚に関する大事な話し合いの全てにおいて、ミュスカーはリリィの呼び出しに応じて行ってしまう。 そんな彼を見続けて、とうとうアメリアは彼との結婚生活を諦めた。 けれど正式に婚約の解消を求めてミュスカーの父親に相談すると、少し時間をくれと言って保留にされてしまう。 仕方なく保留を承知した一ヵ月後、国外視察で家を空けていたミュスカーの兄、アーロンが帰ってきてアメリアにこう告げた。 「必ず幸せにすると約束する。どうか俺と結婚して欲しい」 ずっと好きで、けれど他に好きな女性がいるからと諦めていたアーロンからの告白に、アメリアは戸惑いながらも頷くことしか出来なかった。

処理中です...