「私も新婚旅行に一緒に行きたい」彼を溺愛する幼馴染がお願いしてきた。彼は喜ぶが二人は喧嘩になり別れを選択する。

第18話

「ハリー！やっと起きてくれた……」

頼みの綱のハリーが失神していて望みが絶たれたエレナ。かすかな光しかない小部屋にいたような孤独で寂しい気持ちから、安心しきってるようだった。

ハリーは寝起き直後の半分寝ぼけている状態なので、エレナの身にどんな緊急事態が発生しているのか分かっていない。

「なんでエレナは泣いているんだ？」

自分にとって何より大事なエレナが、涙を流し疲れきって病気でもしてる風な悲しい顔をしていた。

そんな姿のエレナを見れば、いくら鈍感なハリーでも思わず顔色を変えた。自分の知らない間に何かが起こっていたと気づいたのである。

「私は罰せられて命がなくなるの！ハリー助けて！」

いきなりエレナが信じられないことを叫んでいる。その言葉を聞いたときにハリーは我が耳を疑って異様な表情を浮かべた。

かなり苦しい立場に置かれていると見られることは、泣きすがるエレナの声が明白に物語っているのであった。

「えっ！？それはどういうこと……？」
「私を守って……ハリーお願い！」
「もう大丈夫だからエレナは安心していいからね。後は僕に任せろ！」

エレナに向かって問いかけると、エレナはいじらしく助けを求めてきた。その様子がハリーの目には、いかにもけなげに映ったのである。

守ってあげたくなる切なそうなエレナの顔に、同情したハリーは腕を伸ばして両腕に力を込めて、エレナを全力で抱きしめたのだ。

紳士的な笑顔で説得してエレナの心を落ち着かせたハリーの顔つきは、どこまでも新妻のイリスと戦う決意を示している。

崖っぷちに立たされているエレナの生命を救わねばならないと、もはやイリスを敵とみなして弱みは見せまいと気を張っていた。

「大人しく口を閉じていればイリスは思うがままにエレナを苦しめて……僕は許さないからな！」
「何言っているの？ハリーはただ気を失っていただけでしょ？」

自分が黙っていたら好き勝手な真似をして、エレナを責め続けてくれたな！奈落の底まで追いつめられたエレナの辛い表情が頭に残っていて離れない。ハリーの声には強い意気込みのほどが感じられる。

あなたは勝手に気絶しといて何をふざけてるの？からかい半分の口調でイリスは言った。

「そ、そんなことはない。僕は見守っていただけで、これ以上はエレナの悲しい姿を見るのに我慢できなかったから口を出した！」

立ちながら間抜けに気を失っていたことに、情けなく恥ずかしいと思っているハリーは、自分の意識がなくなっていたことを頑なに認めなかった。

ハリーは一生懸命に否定し続けていたが、その後ろで床に座り込んでいるエレナは何とも言えない感情が沸いてきて、苦しげな顔でハリーを見つめていた。