婚約していた幼馴染の彼から別れ話を切り出され婚約破棄される、彼は妹と結婚するらしい

第6話

「まだ来ないね。待ち合わせしてる相手ってひょっとしてクロエさん？」
「う、うん」

クロエが来ないのは既に念頭にあるがジェシカは特に意識せずに待ち合わせしてる相手は恋人かと尋ねるとノアは心苦しく思いながら同意する。

「ちょっと…」

そう答えた直後にノアが席を立ち御手洗いに向かう。

「先ほどの方はお知り合いですか？」

一人になったジェシカにバーテンダーが声をかけて来た。

「少し前まで恋人だったんですよ」
「そうですか。今日は偶然にお会いになられたのですか？」
「ですね」
「運命的な出会いですね」
「ふふふ、そうかもしれませんね。私も彼に会って驚きました。あの、少し席を外します」

ちょっと前まで付き合っていたと話すとバーテンダーは二人は引き寄せられるかのように出会ったんですねと返事をする。

ジェシカは少し声を立てて笑い自分もここで彼に出会えたことに驚きで心臓が高鳴ったと返答して席を立ち花を摘みに行きました。

「え、なに？」
「待ってた」

トイレから出るとノアが待っていた。その場所は死角になっていて店内にいる人には見えない。

「ちょっとどうしたの？」

突然ノアが何も言わずに抱きしめてきた。ジェシカは息が止まるほどギュッとされて目をパチクリさせ頬を引きつらせながら笑い冗談ぽく問いかける。

「いや、あの時はひどいこと言ってごめんね」
「なに急に？」
「いきなりあんな別れるとか言ってジェシカには寂しい思いをさせた」
「もう気にしてないから…」
「ジェシカは変わらないね。そういうところ。僕はジェシカのことが変わらず好きだ」
「そんな…今更言われても…」
「今ならジェシカのこと大事にしてあげれる気がする」
「なに言ってるの？結婚するんでしょ？」
「あの時ジェシカのこと全然考えてなかったから。ジェシカがいなくなってから大事なことに気づいて」

ノアは最初は抱きしめていたが、緩やかにジェシカの肩や腕を触り始める。ジェシカは終始押し黙って気まずそうな顔をしている。

徐々に荒い息をするノアはジェシカの髪を触り頬を撫でて別れたのを後悔したように顔を近づかせて瞬間的にキスをした。

「なに考えてるの？ちょっとやめて！」

ジェシカはキスされて本能的に体を押し返す。しかしノアは諦めきれないのかもう一度口付けを迫るがジェシカは歯をくいしばって首を振り離れようとする。

「僕はまだジェシカのことが好きなことに気がついた」
「やだ！」

パンッ！と頬に平手打ちを一発食らわしてジェシカはその場から早々に立ち去り店を出た。