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第9話

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「私が2年前に絶対に治らない不治ふじやまいで、苦しんでいたことはお前も知っているだろう?」

国王は自分が深刻な病気にかかり、当時どんなに辛い思いに耐えてきたことかと口調に熱がこもってくる。

勿論もちろんのことレオナルドも印象深く覚えている。止まることなくいつくしまれて育てられたので両親のことは好きでした。頻繁ひんぱんに見舞いに訪れて、病気療養中だったときに心身ともに弱り果てている父の姿を実際に見ていた。

レオナルドは、とても情熱的で強い意志を含んでいる瞳を向けて、早く良くなってください!と優しく励まして元気付けていた。その記憶も頭の中に残っていたことを不意に思う。

今は他ならぬ自分自身が、まともに足腰もたたないほど弱ってしまい普通に呼吸も出来ない状況です。レオナルドは病気で息が自然に出来ない苦痛を身にしみて感じていました。

「そ、そうでしたね……はぁーっはぁーっ……お、お父様も大変でした……ぜぇーっぜぇーっ……」
「無理して話さなくてもよいぞ」

レオナルドは思わず声が出てしまった。体中が痛くても、じたばた暴れる体力はとっくに無い。あらゆる苦悩に耐えている表情をしながら、苦しそうな息づかいで話す息子に国王は再び、辛いなら口を開く必要はないと言い聞かせるように声を出す。

「信頼する医師からも助からないと見放されて、今のお前のように絶望的な状態であった。そんな時にアリーナ令嬢が命を救ってくれて、私は神のおぼしに感謝と幸福の涙を流したのだ……」

医師から諦めてくれと余命宣告よめいせんこくされて悲惨ひさんな運命をになった国王は、アリーナと出会い彼女の能力を知って自分に神が舞い降りてきた気がした。

「え?……はぁーっはぁーっ……ま、まさかそんな!?……ぜぇーっぜぇーっ……」

アリーナが――神?

目を閉じて今にも息が詰まりそうな呼吸を繰り返すばかりだったレオナルドが、頭が混乱して不安で落ち着かなくなり、ますます呼吸が激しくなり心臓は爆発しそうに騒いでいる。

「そして生まれつき体の弱いお前は、様々な持病じびょうを抱えていたな?」
「で、ですが……はぁーっはぁーっ……わ、私は少し前に体の病気が……はぁーっはぁーっ……完全に回復して……ぜぇーっぜぇーっ……」
「それは全てアリーナ令嬢が治療ちりょうしてくれたおかげでお前は生きていられるのだっ!!!」

アリーナのおかげで父も自分も命拾いしている。国王はりゅう咆哮ほうこうを思わせる声を上げるとレオナルドはその言葉に胸をつらぬかれた。

レオナルドが田舎娘で無能と見下していたアリーナは、自分の病気を治して命を助けてくれた限りなく貴重な女性で、この世界で誰にも真似のできない希少価値きしょうかちの高い能力を持っていたことをやっと理解したのだった。

その瞬間、レオナルドは戦慄せんりつが背筋を走り抜けると、体が痛みを一時的に忘れて心臓が急に痙攣けいれんでも起こしたように全身が恐怖で震えていた。
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