地方の田舎に住む女性、妹に幼馴染の彼をとられたけど、生徒に溺愛される医療魔法師

佐藤 美奈

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第1話

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「はい、今日の授業はここまで。みんな、よく頑張ったわね。帰ったらちゃんと復習しておくのよ」

「「「はーい、セシリア先生、さようなら!」」」

元気いっぱいの挨拶を背中に受けながら、私は教室の窓からひょこひょこと帰っていく小さな背中たちを見送る。ここは、王都から馬車で何日もかかるような、本当に何もない田舎町。私の仕事は、この町で唯一の魔法医療師であり、子供たちにその基礎を教える先生だ。

この教室は、もともと父と母が始めたもの。二人から引き継いだ、日当たりのいい、こぢんまりとした私の城。生徒の数も両手で数えられるくらいで、お世辞にも流行っているとは言えないけれど、私にはこれくらいがちょうどいい。

「ふぅ……」

誰もいなくなった教室で、私は一つため息をつく。机の上に置かれたままの教科書を整頓しながら、窓の外に広がるのどかな風景に目を細めた。穏やかで、代わり映えのしない優しい毎日。それが今の私のすべて。

私の趣味は料理。得意料理はハーブをたっぷり使ったポトフ。自分を客観的に見れば、『料理が趣味な、ごく普通の医療師』。それ以上でも、それ以下でもない。貴族の、それも男爵家の長女として生まれたけれど、それはもう遠い昔の話みたい。王都の華やかな社交界とは無縁の田舎貴族。それが私、セシリア・モントヴェールの現在地。

本当は、こんな場所でくすぶっているはずじゃなかったのかもしれない。数年前までは、幼馴染で伯爵家の嫡男であるエリオットとの婚約が決まっていたのだから。順当にいけば、今頃は王都で伯爵夫人として、彼の隣で微笑んでいたはずだった。

その未来を、あっさりと過去に変えてしまったのは、私のたった一人の妹、ローラ。

「ねぇ、お姉様。エリオット様のこと、本当に好きなの?」

キラキラした瞳で、悪気なんて一ミリもなさそうに、そう尋ねてきたローラの顔を、今でも鮮明に思い出せる。年の離れた妹は、両親にも私にも目一杯甘やかされて育った。素直で、わがままで、そして、王都の煌びやかな世界に強い強い憧れを抱いていた。

ローラも私と同じ魔法医療師の道を志したけれど、正直なところ、あまり筋は良くなかった。集中力も続かないし、地道な努力を何より嫌う。でも、彼女は持ち前の愛嬌と美貌で、いつも自分の欲しいものを手に入れてきた。

私の、婚約者さえも。
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