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第23話
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「兄さん何をしているのですか!」
翌朝、いきなり家中に鋭い怒声が響き渡った。少年が床に正座している兄に向かって一喝する。怒られている理由は、夜中にオリビアの部屋の中へ入り込もうとしたことであった。
いくら慕っている兄でも自分が連れてきた客人のオリビアに対して、何か粗相を働いたらしいとお手伝いから聞かされた少年は、兄の責任を追及する必要があると思ったのだ。
「オリビアさんのことが本気で好きになってしまったんだ……」
「兄さんは恥ずかしい人です!」
兄は強く主張したが弟は聞き入れませんでした。その理由は、自分が兄を手助けするようなことを言えば、この場にいるオリビアが気を悪くするんじゃないかと不安になった。
結婚相手を連れてきて欲しいと、全くモテない兄からお願いされて街で声をかけたオリビアを、家に招待した自分にも責任を感じたのです。
最初に出会って声をかけた時は、ただ綺麗な人だという印象でしたが、食事をしながら話しているうちに社交的で親切な人柄であるオリビアに対して、少年は自分でも気がつかない間にほのかな恋心を抱き始めていた。
「いったい何があったのですか?」
その時、背後から女性の声がした。この家の奥さんで少年と兄の母。数日前から出かけて留守だったが今日帰ってきたのである。
家に入ろうとしたら、いきなり息子の大声が耳の中に入り込んできたので、ひどく驚いて何が起こったのかと走るような足取りで駆けつけて来た。
「実はお兄様が客人の女性に夜這いをしかけたそうなのです」
「またですか……」
少年の返答を聞いた母は呆れ気味に批判しつつ、ゆっくりと女性に視線を移した途端オリビアと目が合った。
「……オリビア様!」
短い間を置いて、真正面にいるオリビアの顔を見て、あまりの驚きに夫人は思わず叫んでしまったのである。夫人は良く知っている人物でした。
祖父から代々続くかなり裕福な商人の家であり、夫人の旦那は父から家業を継ぎ社会的階層の上流に属する。
幅広く商いを行う大店の若旦那と夫人にふさわしく、夫婦は貴族との知り合いも多く今までに、様々なパーティーに招待されて出席していた。
「奥様お久しぶりですね」
とあるパーティー会場で顔を合わせて挨拶したことを思い出したオリビアは、夫人に向かって軽く会釈して柔和な笑顔で返す。
皇太子殿下の婚約者である伯爵令嬢に顔を覚えられていた夫人は、身にあまるお言葉に日頃に似合わぬ恐縮ぶりで、体が固まって動けなかった。
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翌朝、いきなり家中に鋭い怒声が響き渡った。少年が床に正座している兄に向かって一喝する。怒られている理由は、夜中にオリビアの部屋の中へ入り込もうとしたことであった。
いくら慕っている兄でも自分が連れてきた客人のオリビアに対して、何か粗相を働いたらしいとお手伝いから聞かされた少年は、兄の責任を追及する必要があると思ったのだ。
「オリビアさんのことが本気で好きになってしまったんだ……」
「兄さんは恥ずかしい人です!」
兄は強く主張したが弟は聞き入れませんでした。その理由は、自分が兄を手助けするようなことを言えば、この場にいるオリビアが気を悪くするんじゃないかと不安になった。
結婚相手を連れてきて欲しいと、全くモテない兄からお願いされて街で声をかけたオリビアを、家に招待した自分にも責任を感じたのです。
最初に出会って声をかけた時は、ただ綺麗な人だという印象でしたが、食事をしながら話しているうちに社交的で親切な人柄であるオリビアに対して、少年は自分でも気がつかない間にほのかな恋心を抱き始めていた。
「いったい何があったのですか?」
その時、背後から女性の声がした。この家の奥さんで少年と兄の母。数日前から出かけて留守だったが今日帰ってきたのである。
家に入ろうとしたら、いきなり息子の大声が耳の中に入り込んできたので、ひどく驚いて何が起こったのかと走るような足取りで駆けつけて来た。
「実はお兄様が客人の女性に夜這いをしかけたそうなのです」
「またですか……」
少年の返答を聞いた母は呆れ気味に批判しつつ、ゆっくりと女性に視線を移した途端オリビアと目が合った。
「……オリビア様!」
短い間を置いて、真正面にいるオリビアの顔を見て、あまりの驚きに夫人は思わず叫んでしまったのである。夫人は良く知っている人物でした。
祖父から代々続くかなり裕福な商人の家であり、夫人の旦那は父から家業を継ぎ社会的階層の上流に属する。
幅広く商いを行う大店の若旦那と夫人にふさわしく、夫婦は貴族との知り合いも多く今までに、様々なパーティーに招待されて出席していた。
「奥様お久しぶりですね」
とあるパーティー会場で顔を合わせて挨拶したことを思い出したオリビアは、夫人に向かって軽く会釈して柔和な笑顔で返す。
皇太子殿下の婚約者である伯爵令嬢に顔を覚えられていた夫人は、身にあまるお言葉に日頃に似合わぬ恐縮ぶりで、体が固まって動けなかった。
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