「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。

第25話 愛人の攻撃に耐える兄を妹と両親は見守る

ダニエルは妹に何度も平手で頬を叩かれて、マリアには拳を握りしめて思い切り殴られ顔は真っ赤に腫れあがり顔の形が変わっていた。口の中を切ってしまったようで唇から血が垂れている。

「マリア、お腹の子供が私の子供なら責任を持って相応の金を支払う」
「ダニエル様は、私と結婚するつもりはないという事ですか？」

兄は曲がっていた背中を伸ばして真剣な顔でマリアを見つめて言う。マリアはダニエルとこれからの人生を一緒に生きたいと願っていた。

「すまないが私にマリアの人生を背負い込む覚悟はない。私は妹が好きなんだ。そして妹の子供との触れ合いは私の心の支えで会えないなんて考えられない。マリアは恋人と結婚して幸せになってくれ」

ダニエルが一番大事なのは妹と子供たち。この大切な宝物を喜ばせることが自分の生きる意味を与えている。何があっても失うわけにはいかない。

実はマリアが妊娠しているのは嘘で、ダニエルを繋ぎ止めるために言った言葉でした。だが通用する事もなく無情にもあっさりと振られる形となる。マリアは身を寄せてきてしっかりと兄にしがみついた。

「ダニエル様これならどうですか？　耐えられるものなら耐えてみなさい！」

マリアは突然兄にキスをした。強引に舌を差し込んできて熱いキスをくり返していた。ダニエルは少しも性的な興奮を感じる事もなく、眉一つ動かさずに表情を失った顔をしている。

「……」
「なるほど、あくまで無言でポーカーフェイスを貫き通すおつもりですか？」

破廉恥きわまるマリアの攻撃を兄は黙って真正面から全て受け止める。マリアはすがるような目で見つめてもダニエルは無気味なほどの無表情な顔を崩さない。

「……」
「やせ我慢がいつまで待ちますかね？　次はダニエル様の一番感じるところを責めますよ？　覚悟なさい！」

兄の姿は無我の境地に達している心が澄み切った仙人のようで、マリアからの性的な欲望や感情を兄は全く受け付けない。

ダニエル様はどうして反応しないの？　自分がいくら責めても手ごたえがまるでない兄に、マリアは驚きすぎた顔で眼球が飛び出るくらいの大きな衝撃と深い悲しみを受けた。

「ダニエル様捨てないで！　いやああああああっ!!　うわあああああああああああああ」

マリアは最後に兄に助けを求めても冷たい態度を取られて、絶望的に高らかな悲鳴をあげて床にへたりこんだ。妹とご両親様方は控え目な顔で静かに成り行きを見守っていた。

「――ジャック」

しばらく沈黙が続いたあとソフィアは夫の名前を呼んだ。よく通る美しい声は一種の気品を感じさせる。

夫はボロ雑巾のように床に放置されていた。生気が抜けた顔で半ば廃人に近い存在になっていたジャックは、妻の声が耳の中に流れ込んでくると生命を吹き込まれたかのように身体がピクリと動いて顔を上げた。

「あれこれ考えましたが離婚はしない事にします」
「ソフィア許してくれてありがとう。もう僕と子供の鑑定しろなんて言わない」
「勘違いしないでください。私はあなたを許したわけではありません」
「え？」

妻は夫とは離婚しない選択をした。次の瞬間ジャックは目を輝かせて表情を明るくする。だが完全に許したわけではない。別れたら夫が勝手放題に生きることが許せないと思えた。

何年後かに夫が別の人と再婚して幸せな家庭を築くのも容認できない。それならいっそ夫は飼い殺し状態にして苦しめたほうがいい。

「離婚したら思うがままに喜んで『恥ずかしい趣味』を楽しむつもりでしょう？」
「あんな事はしない。もうソフィアを悲しませるような事は今後一切しない」

兄とマリアが別れたので、夫がマリアと元の関係に戻る可能性も考えられる。それとも全く知らない女性と不倫をするかもしれない。ジャックは口では否定して家族を守ると言うが、一度裏切っているので信用できないと妻は結論づけた。

「わかりました。ですが夫とは思いません。生涯あなたは私と子供に尽くして罪を償い続けて生きてください」
「ソフィアの気が晴れるなら僕は何をされてもいい。これからはソフィアと子供のためだけに生きることを約束する！」

夫には不倫した事を忘れないで罪悪感を持って生きてほしい。妻の言葉にジャックは家族を守ることに絶対の誓いを立てた。

「ママ！」

その時、母は子供の声が聞こえた。メイドに連れられてリアムとトーマスが部屋に入って来た。