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第一幕 江戸にイこう!
第十四話 親知らず子知らず
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続けて千代姫は木から地へ華麗に着地を決めては、周囲の者たちが大いにざわめく。女の子が飛ぶにしては、かなり高い位置からのジャンプ。それでも足元をよろめくこともなく、キビキビと動き出すのを見て、意外にも体力のある子だと認識した。それとこの短時間で殿様は、俺の首に突き出していた刀そそくさと鞘へ収納。娘に恐ろしい物は見せない、子どもを思う親心なのだろうか。
ここで少し遅れてご登場したのは、お世話係のような女性たちに、袴姿の男たち。絶対に見張っておけと言われたのか、数人はえっちらおっちらと、よろけている。ざっと数えただけで十人はいる。これだけの人数を娘一人、よく法の目を掻い潜ってこれたことに脱帽。
「ま~ったく他の者はなにをしとる! ……姫ぇ~、いけませんぞぉ? ここは危ないお所じゃぞ?」
「そうです、早くお戻りになってください!」
俺と殿様の方向へ歩き始めていく千代姫を爺やとミツはなんとか食い止めようとするが、
「おどきなさい。あなた方とお話しに来たのではありません」
父同様、冷淡な口ぶりを投げつけては素通り。ミツはショックで青くなり、爺やは安定の「あばば」連打。こんなものを見せつけられたら、もう止めるゆとりすらない。
すげぇ……。あんなにも堂々と……。
私は何も間違っていない。千代姫の胸には、そう書いているかのように、大きく腕を振っては迷うことなく前進。そして俺と距離が近くなると、小走りになって駆け寄って、
「大丈夫ですか? 今から縄を解きますね」
なんと父上である殿様がガン見している真ん前で、拘束されている縄をほどき始めていったのだ。これには黙りこんでいた見物人も「ああ~っ」「なんてことを」等々、主に批判に近い声が上がっていく。
ちょっとずつ縄がほどけていく途中、自由になるのは助かるが、これじゃ千代姫の身も危ういと思ってしまった。でも、それ以上にこんな絶望の中で救いの手を差し伸べてくれる人が現れたことが最高に嬉しくって、情けなくも恥ずかしくも、千代姫がいるのに本気の男泣きをしてしまった。
最後のひと撒きを解けば、晴れて自由の身というところで千代姫は二人羽織みたく重なっては、こう耳打ちをしてきた。
「私、正直に生きてみます」
熱い吐息が触れたのと、彼女の本能の暴走が始まる予感の音が聞こえた。
え――?
ずっと身体を固定されて縛られていたので、血液の巡りが悪く、すぐには思うように動かない。腰に手を当てて、対面する千代姫と殿様を見上げることしかできず。何か事が起こりそうだと何となしに感じることは、全ての者が同意見のようだった。大袈裟な表現ではなく、父と娘の間には確実にビリビリと痛い電流が走っている。これは壮大な親子喧嘩の幕開けなのだと、察知した。
いくら娘だからって殿様にどこまで融通が通るのか。あまりにも予測不可能。けれど、娘大好きのパパって感じでは絶対なさそうだから、こりゃ一筋縄ではいかない、険しい道に等しいかもしれん。
がんばえ、千代姫! まけるな、千代姫! 小さい子が戦闘ヒーローショーで熱気立つさながら、またまた心の中でペンライトを振り回して応戦するチキンな俺だった。
ここで少し遅れてご登場したのは、お世話係のような女性たちに、袴姿の男たち。絶対に見張っておけと言われたのか、数人はえっちらおっちらと、よろけている。ざっと数えただけで十人はいる。これだけの人数を娘一人、よく法の目を掻い潜ってこれたことに脱帽。
「ま~ったく他の者はなにをしとる! ……姫ぇ~、いけませんぞぉ? ここは危ないお所じゃぞ?」
「そうです、早くお戻りになってください!」
俺と殿様の方向へ歩き始めていく千代姫を爺やとミツはなんとか食い止めようとするが、
「おどきなさい。あなた方とお話しに来たのではありません」
父同様、冷淡な口ぶりを投げつけては素通り。ミツはショックで青くなり、爺やは安定の「あばば」連打。こんなものを見せつけられたら、もう止めるゆとりすらない。
すげぇ……。あんなにも堂々と……。
私は何も間違っていない。千代姫の胸には、そう書いているかのように、大きく腕を振っては迷うことなく前進。そして俺と距離が近くなると、小走りになって駆け寄って、
「大丈夫ですか? 今から縄を解きますね」
なんと父上である殿様がガン見している真ん前で、拘束されている縄をほどき始めていったのだ。これには黙りこんでいた見物人も「ああ~っ」「なんてことを」等々、主に批判に近い声が上がっていく。
ちょっとずつ縄がほどけていく途中、自由になるのは助かるが、これじゃ千代姫の身も危ういと思ってしまった。でも、それ以上にこんな絶望の中で救いの手を差し伸べてくれる人が現れたことが最高に嬉しくって、情けなくも恥ずかしくも、千代姫がいるのに本気の男泣きをしてしまった。
最後のひと撒きを解けば、晴れて自由の身というところで千代姫は二人羽織みたく重なっては、こう耳打ちをしてきた。
「私、正直に生きてみます」
熱い吐息が触れたのと、彼女の本能の暴走が始まる予感の音が聞こえた。
え――?
ずっと身体を固定されて縛られていたので、血液の巡りが悪く、すぐには思うように動かない。腰に手を当てて、対面する千代姫と殿様を見上げることしかできず。何か事が起こりそうだと何となしに感じることは、全ての者が同意見のようだった。大袈裟な表現ではなく、父と娘の間には確実にビリビリと痛い電流が走っている。これは壮大な親子喧嘩の幕開けなのだと、察知した。
いくら娘だからって殿様にどこまで融通が通るのか。あまりにも予測不可能。けれど、娘大好きのパパって感じでは絶対なさそうだから、こりゃ一筋縄ではいかない、険しい道に等しいかもしれん。
がんばえ、千代姫! まけるな、千代姫! 小さい子が戦闘ヒーローショーで熱気立つさながら、またまた心の中でペンライトを振り回して応戦するチキンな俺だった。
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