魂の回収者

宵闇カラス

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少年の成仏補助

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「行かないで!」 その声を聞いた瞬間俺の周りの景色が消え 一瞬の闇に包まれ 急激に視界がひらけ目に光が飛び込んで来た
寝てた・・・ のか・・・
ふと上を見上げて時計を確認すると3時間経っていた
霞む目をこすりながらあくびをして伸びをしながら立ち上がり完全に冷めきったコーヒーを飲み干しまだ意識のぼやける頭で歩き出す

本部を出ると冷たい空気が頭の中のもやを晴らし 身が引き締まる
今回の依頼は少年の成仏補助
少年の未練を晴らすことだ 俺の所に依頼が回ってくるほどってことは簡単なのか?
いや 低ランクの俺が当て馬に使われた可能性のほうが高いな
そういえばさっきの夢・・・「行かないで」そう言っていた・・・
頭の中を全力で探るが 探そうとすれば探そうとするほど夢が不鮮明になっていく
あの夢は一体何だったのだろうか
まぁいい 今は依頼に集中だ 少年の居場所はここから北におよそ3キロ もうかなり近くまで来ているはずだ
相手は10歳 17歳の俺とは7歳差・・・ 俺にもそんな歳の弟がいたような気がするが・・・よくわからない
俺には未練があるのだが 記憶がない だから無い記憶から未練を解決するもしくは記憶を取り戻してから未練を取り払うしか無い だから俺は死神になった 分からない未練を解決しろなんて無理ゲーだ だから自分で探す
そんなことを考えているうちに目標の地点についた
子供・・・ いないな・・・生魂せいこんは白だから探しやすいはずだ

シュウッ

!?!? 何だ今の 前から・・・風? にしては一瞬だし勢いが・・・
後ろを向くと鎌を持った謎の影が1つ
何だ? 死神にしては小さすぎる まるで小動物のような・・・
そう思った瞬間俺の横で何かが飛び散る
なんだこれ 血???
何だコイツ・・・ 敵か?

ーー腐魂は形を変えるものもいるーー

敵だかまいたちみたいなものに形を変えている 形を変えるものはEランクにはいないはずだということは・・・
それもDランク以上 小動物型だったらD辺りだろう だが俺からしたらはるか格上だ撤退推奨少し防御有線で戦闘しながらスキをみて逃げる
...っ!?
後ろに白い影 間違いなく生魂
こちらに歩み寄ってくる
だがそんなことは今気にならない
目の前の強敵をどうにか対処しなければ
後ろに生魂がいるのでどうしたものか

「鎌!」
すかさず鎌を呼び出し臨戦態勢に移る

相手の動きをつま先から重心 頭までしっかりと動きを意識しながらジリジリと下がる
つま先が傾いた 来る!
黒いかまいたちの重心がぐいっと傾いてものすごい勢いで突進してくる
対する俺は鎌を傾けて前に突き出す相手の鎌が俺の鎌に触れて鋭い金属音を出している

「せいっ!」気合いを入れて相手の鎌を振り払う
相手は小動物 速度は負けるがパワーなら勝てる
パワー戦に持ち込めれば 俺の勝ち
鋭い風が俺の頬を掠め紅く染める
「はやっ」
無理だ 正直舐め腐っていた
そうだ...カウンターの人が 困ったらこれ使えって えーっと確か...自分の真後ろに...
ひとつしかない小さいボールを取りだしほんとに使い方があっていることを祈りながら後ろに叩きつける
と同時にパァンと炸裂音がして辺りを光が包む
目くらまし!?!? なんの意味が...
俺からは見えないが何故かはっきりと光の炸裂でできた自分の影が揺らいだことがわかった

「何突っ立ってんの? 子供の相手は嫌いだから後はよろしく」

!?!?誰か俺の後ろにいる

恐る恐る首を後ろに回すと...
子供?にしてはなんか小刀持って...

「アサシン先輩?!」

「何?」

「な なぜ先輩がここに?」
驚きで声が上擦った

「説明するのは嫌いだ 後でゴリラにでも聞け」アサシン先輩はなんかブツブツ言っているがはっきりとは聞こえない
状況が呑み込めない どういうことだ?
アサシン先輩が「ん」と言ってお前は向こうにいけと言わんばかりに子供の生魂を見つめるので
「ありがとうございました」とお礼を言って子供の方に向き直る

さて この子供 どうしたものか腐魂の影を見つめて何か言っている

どうしたの?と声をかけるが応答は無い
しばらく沈黙が続き 口を開いたのは子供の生魂だった
「僕のハムスター死んじゃったの?」
なるほど
少々合点がいったこの腐魂は生前のペットかなにかだろうか
「ううん 魂は きっとまだ生きてるよ」
そう言いながら影の核を取り出して渡す
「よかったぁ~」満面の笑みでそういう少年の全身を光が包むその光が一際力を増し無くなる頃にはもう子供の姿はなかった
成仏したの...かな


今回戦ったハムスター...生前のあの子のペットだったのだろうか...
完全に予測なのだが
散歩か何かをしている時に事故か何かで一緒に死んだのか
いや この場合は少年が病院とかで死んだの方が合点が行く 先に死んだハムスターは時間がたち腐魂となってあとから死んだ少年はその腐魂が心配で成仏出来なかった的な感じだろう
だがハムスターは俺を見るなり襲いかかってきた腐魂は生魂を襲う
なぜあの子は...
まさか 死ぬ前の思い出が二人の間に奇跡を起こしたとか?二人の絆が腐魂生魂の壁を超えたのか!?!?
そんなことを考えながら歩いていると本部に着いた
カウンターで依頼達成を告げゴリラ先輩はどこにいるかと聞いたら俺が来たら先輩を呼ぶようにカウンターの人に言ってあったらしい
今日のあれはなんだったのだろうか...色々想定外が多くて疲れたなぁ...
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