5 / 51
寮食堂に歌え!
ようこそ、千錦寮へ(4)
しおりを挟む
全員で10号室に戻り、一年生はテーブルを中心に座り、上級生二人は部屋の住人である早希と佳織が二段ベッドの下に、あと二人は早希たちの机に備え付けのOAチェアに座った。
「この千錦寮には、代々受け継がれている特攻服があるらしいのよ……」
真面目くさって佳織が言った。
志信の地元、茨城県にも絶滅危惧種などと揶揄される暴走族は厳然と残っている。中学の同級生が派手に飾り立てたバイクで国道を飛ばし、夜のコンビニエンスストア駐車場でたむろしているのも見ていたが、まさか進学先にもそうした人たちがいるとは予想しなかった。
しかも、ここは『女子寮』なのだ。
確かに、食堂で見かけたショーコ先輩は、その風貌なども、少し二十世紀感を感じるところがあるにはあったが……、と、志信は思い返した。
「特攻服って、あれですよね、だらっと長くて、漢字で色々刺繍されてたりプリントされてたりするアレですか」
麻衣がおずおずと聞いた。
「そ、その名も『錦繍爆走族』」
……なんか、ものすごくきらびやかかつ派手な響きのある言葉だな、と、志信は思った。
「襲名式もやってたよね、先代からの、皆が入学してくる前だけど、写真、見る?」
そう言って、早希がスマホの画像を見せた。
その中には、特攻服姿のショーコ先輩と、黒い特攻服を来た男性数人が写されていた。
「あれ? レディースなのに男の人もいるんですね」
志信が尋ねると、早希はスマホを取り戻しながら、
「襲名式そのものはレクリエーション室使ってやったからね、男子寮からも何人か来てたみたい」
微妙に答えになっているような、なっていないような早希の言葉を聞きながら、志信はかすかな違和感を感じつつ、外出の支度をした。
志信以外の一年生三人は、すでに昨日のうちに日用品の買い物を済ませたそうで、志信と早希で近くのホームセンターへ行くことになっていた。
早希のスマホに着信があり、車を出してくれる事になっている上級生が駐車場へ向かったとの連絡を受けて、志信と早希の二人はヤンキートークに盛り上がる皆を残して部屋を後にした。
「この千錦寮には、代々受け継がれている特攻服があるらしいのよ……」
真面目くさって佳織が言った。
志信の地元、茨城県にも絶滅危惧種などと揶揄される暴走族は厳然と残っている。中学の同級生が派手に飾り立てたバイクで国道を飛ばし、夜のコンビニエンスストア駐車場でたむろしているのも見ていたが、まさか進学先にもそうした人たちがいるとは予想しなかった。
しかも、ここは『女子寮』なのだ。
確かに、食堂で見かけたショーコ先輩は、その風貌なども、少し二十世紀感を感じるところがあるにはあったが……、と、志信は思い返した。
「特攻服って、あれですよね、だらっと長くて、漢字で色々刺繍されてたりプリントされてたりするアレですか」
麻衣がおずおずと聞いた。
「そ、その名も『錦繍爆走族』」
……なんか、ものすごくきらびやかかつ派手な響きのある言葉だな、と、志信は思った。
「襲名式もやってたよね、先代からの、皆が入学してくる前だけど、写真、見る?」
そう言って、早希がスマホの画像を見せた。
その中には、特攻服姿のショーコ先輩と、黒い特攻服を来た男性数人が写されていた。
「あれ? レディースなのに男の人もいるんですね」
志信が尋ねると、早希はスマホを取り戻しながら、
「襲名式そのものはレクリエーション室使ってやったからね、男子寮からも何人か来てたみたい」
微妙に答えになっているような、なっていないような早希の言葉を聞きながら、志信はかすかな違和感を感じつつ、外出の支度をした。
志信以外の一年生三人は、すでに昨日のうちに日用品の買い物を済ませたそうで、志信と早希で近くのホームセンターへ行くことになっていた。
早希のスマホに着信があり、車を出してくれる事になっている上級生が駐車場へ向かったとの連絡を受けて、志信と早希の二人はヤンキートークに盛り上がる皆を残して部屋を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる