歌え!寮食堂 1・2・3(アイン・ツヴァイ・ドライ)!

皇海宮乃

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寮食堂に歌え!

ようこそ、千錦寮へ(4)

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 全員で10号室に戻り、一年生はテーブルを中心に座り、上級生二人は部屋の住人である早希と佳織が二段ベッドの下に、あと二人は早希たちの机に備え付けのOAチェアに座った。

「この千錦寮には、代々受け継がれている特攻服があるらしいのよ……」

 真面目くさって佳織が言った。

 志信の地元、茨城県にも絶滅危惧種などと揶揄される暴走族は厳然と残っている。中学の同級生が派手に飾り立てたバイクで国道を飛ばし、夜のコンビニエンスストア駐車場でたむろしているのも見ていたが、まさか進学先にもそうした人たちがいるとは予想しなかった。

 しかも、ここは『女子寮』なのだ。

 確かに、食堂で見かけたショーコ先輩は、その風貌なども、少し二十世紀感を感じるところがあるにはあったが……、と、志信は思い返した。

「特攻服って、あれですよね、だらっと長くて、漢字で色々刺繍されてたりプリントされてたりするアレですか」

 麻衣がおずおずと聞いた。

「そ、その名も『錦繍爆走族』」

 ……なんか、ものすごくきらびやかかつ派手な響きのある言葉だな、と、志信は思った。

「襲名式もやってたよね、先代からの、皆が入学してくる前だけど、写真、見る?」

 そう言って、早希がスマホの画像を見せた。
 その中には、特攻服姿のショーコ先輩と、黒い特攻服を来た男性数人が写されていた。

「あれ? レディースなのに男の人もいるんですね」

 志信が尋ねると、早希はスマホを取り戻しながら、

「襲名式そのものはレクリエーション室使ってやったからね、男子寮からも何人か来てたみたい」

 微妙に答えになっているような、なっていないような早希の言葉を聞きながら、志信はかすかな違和感を感じつつ、外出の支度をした。

 志信以外の一年生三人は、すでに昨日のうちに日用品の買い物を済ませたそうで、志信と早希で近くのホームセンターへ行くことになっていた。

 早希のスマホに着信があり、車を出してくれる事になっている上級生が駐車場へ向かったとの連絡を受けて、志信と早希の二人はヤンキートークに盛り上がる皆を残して部屋を後にした。
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