ドリームミュージカル

ぱっりん

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高校一年生、桜川高等学校合唱部

8話「いらっしゃい!夏」

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寮の中には、
キッチン、ベッド、テーブルイス、箸くらいしかなかった。
疲れながら、昨日コンビニで買った、
卵とご飯、ケチャップ、チキンを出し、チキンライスを作り出し
チキンライスをオムレツに包み、オムライスにする。
ブロッコリーとトマトをお皿に添え、完成する。
はむ,..我ながらいい出来だ。
...お父さん。
うちはお父さんが、オムライスを作ってくれていた。
半熟卵に包まれた、甘いチキンライス。
銀色のスプーンに乗っけたそれはとても美味しかった。
私のオムライスは、半熟卵ではない。
ふわふわでもない。はあ。
何だか少し涙がでる。飼ってた猫の、ララ、元気かな。
寮に入ったのは近かったからだけど...
何だか悲しい。
それに、劇団宇宙に入るためには、
宇宙養成学園に入らなければならない。逆にそこに入れれば確実だ。
オーディションとは宇宙養成学園の入学試験である。
高1と高2しか受けられず、完全寮生だ。
更に、もちろん受かれば転校となる。
...それに二年制。
ベッドに寝ころぶ。
スマホを持つと、何だか歌乃を思い出した。
まだ歌乃と出会って4ヶ月。
もう8月か。
まだ歌乃とは少しぎこちない。
親友とかじゃなく普通に友達だ。


...暑い。もう夏か。
21時を指す、時計を見て、
クーラーボタンを押す。
スマホにアラームをかけて、黄色の羽毛布団をかけて眠りについた。

ぴらぴろぴろりんっ♪ぴらぴろぴろりんっ♪ぴろぴろぴろりん!

アラームが部屋に響く。
...何時だ?...7時半!!
出席を取るのは、八時!!
服はパジャマ、髪の毛はアホ毛だらけのボサボサリン!
やばいっ!!
たたでさえ私は癖っ毛なのだ。
しっかり食べないと芸事はついていけない!
トーストを焼いている間に目玉焼きとベーコンをやき、
食べ終わったのは、7時41分!!
制服を着き、スカートをいい感じに調整し、
スカートの下にオーバーパンツを着ける。
白と黒が選べる靴下の白を装着し、
前髪に水でぬらした布をつけ、
髪をとかす。
バッグに色々入れるともう55分!
寮の部屋を出て、怒られるの覚悟で、猛ダッシュ。
寮と学園が繋がってて良かった、とこの時ほど思ったことはない。
学生寮と学園が繋がる扉をカードキーで開き一階のミュージカル教室Aにつく。
ま、間に合ったか....?
時計は59分。やばい!
席に座ると、その瞬間先生がきた。
間にあったー。
とっくに来てたそぶりの歌乃は読書を、花は心とお話ししていた。
前の席の歌乃がそっと後ろを向いて、
「どうしてそんなに遅れたの?」
と小声で言う。少し笑ってる。
「目覚ましかける時間間違ってた」
と返す。
本当なら6時半にかけるのだが、眠かった私は、間違えたのだった。
出席、一時間目、二時間目は数学と、声楽だった。
そして、20分休み。
校内の自販機にドリンクを買いに行く。水筒を忘れたのだ。
寮は8時になると16時まで閉まってしまう。

2つある自販機売り場までやってきて、ペイペイでポカリを買う。
はあー美味しいなあ。
小さく呟くと、肩にぽんっと軽く手が置かれた。
「うわあっ!」
跳ね上がるかのように、私は驚き、ポカリを少しこぼしてしまった。
後ろを見ると、歌乃だった。
「わっ、ご...ごめん」
零された水滴を見て歌乃は申しわけなさそうにこちらを見つめる。
「あー...いいよ。それより、何?」
ポカリのキャップを閉めて、ベンチに座ると、歌乃もベンチに座る。
「お昼ご飯、一緒に食堂で食べない?」
歌乃は、こちらを向く。相変わらず美女だ。
「いいけど、歌乃は寝坊してないんでしょ?
お弁当じゃないの?」
歌乃に問いかけると、歌乃はぷるぷるのピンクの唇を開き
「私、本当なら、宅配弁当のキャビアだったんだけど」
寮には宅配弁当が昼にのみある。希望者にのみ。
その日の朝に届くもの。低、中、高があり、たとえば低がミートボール弁当、中がハンバーグ弁当、
高がステーキみたいな感じでグレードアップする。
歌乃は高なのだ。
「キャビアなんて高級だねー。高って一食15000¥だっけ?」
「そう。お父さんに払って貰ってたんだけど、今日、
お弁当がないひなの忘れてて」
「あー。毎月十二日は、お弁当係の苦労削減で休みなんだったけ?」 「そう、
だから自分でお弁当作るなりしないとなんだけど、忘れてて」 
「なるほどー。じゃ、一緒に食堂行くか!」
ペイペイの残高をみる。大丈夫だ。
歌乃も財布の中を見ている。
「じゃ、行こうか!」私が立ち上がると、歌乃は、座ったまま、
「どの席がいい?」という。
「んー。夏だから人少ないけど日陰だし、景色見れるテラス席がいいんじゃない?」
私はテラス席が好きだ。蝉の音、染み渡る暑さ、
風の音。
日焼け止めも塗ったし大丈夫だろう。
「!え、本当に?室内の席のことだったんだけど」
歌乃が目を見開く。
?何でそんなに驚いているんだろう。別に
気温も今日は31度だけど、テラス席だと日陰だから28度くらいなのに。
「本当に。てかテラス席がいいな」
ゆっくりと喋ると、歌乃は、また目を見開く。その目は、
怒りでもなく、心配、だ。
?何で?
良く分からないけど、20分休みが終わりそうなので、教室に戻った。




お昼。食堂に、一時間の昼休みのうちにいく。
テラス席につき、外を見る。
...なんかへんだ。
日陰だし、扇風機もあるから28度が体感温度だろうに、
めちゃくちゃ暑い。
パタパタやる私に、歌乃は、
「...ルア。なんで冬服なの?」
「..,え?」
「もう夏服の時期だよ。衣替えだよ。」
よく見れば、歌乃は既に紺の夏服だった。
マジか。焦ってて気づかなかった。歌乃に説明し、
袖まくりをして、メニューを見る。
「んー、私は、オレンジジュースと、ハンバーグ定食にしようかな。
歌乃はどうする?はいメニュー」
メニューを隣の歌乃に渡す。
テラスなのに横並びの椅子なのはかなり珍しいだろう。
「ねえ、ルア。」
「ん?」
「ハンバーグってなに?」
ズドーン...まじかよ。
ハンバーグを、知らない?
「ステーキの丸い版?」
歌乃はお嬢様だった。
父は政治家、母は有名モデル、歌乃はミュージカル経験者。
豪邸だと噂である。
だが、ハンバーグを知らないとは...しかもステーキの丸い版ってなんやねん。
「なんかね、ステーキよりやすい、丸いお肉。」
...我ながらなんだこの説明。
へーと嬉しそうな歌乃はメニューをめくる。
カレーライスが出てくる。
無言の歌乃。これはまさか...
「カレー《ライス》甘口ってなに?」
「カレーにナンの代わりにご飯ってこと!」
本場のカレーしか食べたことのないお嬢様め。
「じゃ、カレーライス?とルアと同じオレンジジュース?にする」
歌乃は店員呼び出しボタンを軽く押し、
注文する。
12分後、二人の昼飯が届いた。 ジューシーなケチャップの乗ったハンバーグと、
ぷりぷりの白米、豆腐とワカメの味噌汁,
甘いがどこかピリ辛のカレーと、白い白米がカレーで黄色になってるカレーライスと、
40パーのオレンジジュース。
いただきます!と響く声。初めてカレーライスを食べた歌乃は、
美味しい...と呟く。何か初々しくて可愛い。
ジューシーなハンバーグを食べ終え、節約のため自炊してたけど、
食堂も悪くない。と口についたケチャップをぺろんと舐める.
ごちそうさま!
食べ終わった二つのお皿とコップ。 
暑くなってきた日差しと、首の後ろの汗で
もう夏だなあ...と思いながら歌乃をみる。
初めてのカレーライスを食べた歌乃はものすごく美味しかったようで、
ずっとお皿を見つめていた。
「また、一緒に食堂いこ?」
私が問いかけると歌乃は上を向いて、うんと呟く。 
「その時もテラス席がいい」
暑い生ぬるい風を感じながら歌乃の声が響く。
そうだね、と言いながら、空を見る。
夏だなあ。
お会計は一人1300¥だった。
また、食堂に、歌乃とこれるといいな。

つづく
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