ドリームミュージカル

ぱっりん

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高校一年生、桜川高等学校合唱部

34話「コンクール当日と、夜美学園」

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ティロティロリン♪
部屋中に鳴り響くアラームを爆走で、止める。
四時半。
顔を洗い、スキンケアをする。
髪の毛をすぐに、ポニーテールにした。
洗濯をし、干す。
防犯用に、男物のジャケットも干しておく。
干していると、隣のベランダから歌乃が現れた。
といっても、隣との壁の小さな隙間からなのだが。
「頑張ろう」
声をかけると、歌乃は、任せてと言わんばかりに、
手をグッドマークにした。
制服を着る。スカートを膝下にする。靴下は、白。
バッグを持つ。カードキーをチャックつきポケットにいれ、
部屋をでると、葵が、オートロックの前にいた。
「よう」
オートロックによって、聞こえる葵の声。
「よっ」
ルアも、葵風に返してみる。
何だか妙に笑えて、二人で爆笑した。
歌乃が、出てくる。
ルア達をみて、
二人、頑張れよ、と言って、オートロックをすり抜けた。
ルアもオートロックを通る。
葵は、
「なあ、朝ご飯食べた?」
「食べてないけど」
「じゃ、これやるよ」
葵が、ランチパックを一つ、差し出す。
ハムの入ったランチパックを受け取り、お礼を言って、
ひとかじり。
「美味しい」
寮を出て、部室につく。
もう、皆集まっていた。
「ではいきましょう」
合唱を一度して、会場に向かった。


ザワザワと、東京大会など比べ物にならない騒ぎ声。
沢山の高校だ。
そんな集団から、夜美学園を見つけた。
ワンピース型の制服は、白色に、光っていた。
彼女達は、笑顔だったが、表情は、固まっていた。
夜美学園の誰か二人が、こちらを見て、駆けてくる。
「ルアー」
ゆかより、少し紫、青っぽい、ツインテールの女の子と、
赤ちゃんみたいに、高い二つのお団子の、女の子。
ツインテールの女の子は、ルアの、小学校、中学校からの友達、
猫野真美だ。同じ一年。
高校は、別々になったが。
「真美」
ルアも駆け寄る。
「そちらは?」
お団子の、女の子の方を向く。
「一年七々野夢、高校からの初心者です。
真美ちゃんの友達です。」
夢は、にかりと歯を見せて笑った。
真美は、いかにも地雷系って感じのツインテールと、猫と♪のヘアピンは、
完全に地雷系感抜群な見た目。夢は、茶色いお団子と、
たれ目気味なお目から、キュートないやし。
まあ、真美も、中身は少しサバサバしてる、いいこなのだが。
「真美、夜美学園はどう?」
「素敵だよ~まあ、女子校だから、バサバサしてるけどね」
「え?どういうこと。女子校って、こう、
お嬢様が通うような、学校じゃないの?」
「そんなん、アニメや漫画だけだよー。
実際は、皆全然毛剃ってないし、
男の目ないから、だらしないし」
ほらと、毛が生えてる腕を見せる。本当だ。
「えー。夢は剃ってるよ」
夢の腕は、ツヤツヤしていた。
「頑張ろう」
その言葉は、ルアではなく、夢に向けられていた。


舞台裏。桜川高校は待機していた。
「17番夜美学園、心の桜」
そう、桜川高校の前は、夜美学園なのだ。
これは、ヤバい。
夜美学園の歌が、鳴り響く。上手い。上手すぎる。
心の桜。綺麗な歌声が、響く。ソロでは、部長だろうか。
鳴り響くオブラートに、観客は涙を流す物さえいる。
ヤバい。
終わると、爆発のような拍手が聞こえて、思わず耳を塞ぐ。
こんなのに、勝てるのか。
「18番桜川高等学校、星空の麗」
舞台に行く。
合図を見て、思い切り息をすい、歌う。
ここは、Pだ。
ここは、fだな。
優しく歌う。
いよいよ、歌乃のソロだ。
歌乃の美しい、本物のミュージカルの歌声が、会場に響くと同時に、
ああーと、コーラスの、心と、戸森が歌い出す。
激しく、大きくなってく、歌は、終幕を迎える。
星見空の、綺麗な、完璧な、桜のような歌声と、
雪葉の、悲しみを持った歌声で、曲は終わる。
拍手。
しかし、やはり、夜美学園の歌には、勝ててない。
泣きそうになる。

終わった後、もう一つ、強豪校の、埼玉県立秩父南高校を見ていく。
まるで、綺麗な、夜空を彷彿とさせる、夜は長いという歌。
自転車が、ゆったり旅するか。そんな事を想わせるハーモニー。
ソロでは、副部長らしき、女の子が、高音を重ねていく。
そして、一気に低音になる、その瞬間。
女の子の声が、裏返る。ミスだ。
女の子をサポートするように、立ち直るが、もう、手遅れだ。
それを嬉しく思う自分が、醜く辛かった。

結果発表。
ドクンと高鳴る胸を押さえる。
「15番、千葉県立川高校、銀賞」
ひく、ひくと、泣きそうな声。
切なくなる。
「16番、私立渋谷高校、銅賞」
あっそ、という、むくれた声が聞こえる。
「17番、夜美女子学園、ゴールド」
うわーという声。ひくひくと泣く声がまたする。
嬉しいからだろう。真美が見える。夢と、笑いあっていた。
「続きまして、18番、桜川高等学校、ゴールド!!」
大きく響くその声に、聞き間違えじゃないか、と、思う。
驚いたままの、ルアに、葵が話しかける。
やったな、というその言葉に、うん、としか言えなかった。
「21番、埼玉県立秩父南高校、銀賞」
うああああ、という、叫び声は、ソロの子のようだった。
ミスは、大敵なのだろう。

発表が終わり、全国に行く高校が発表される。
「3番、東京都立東高校」
うおー!という声と、女子生徒のキャーという声が混じり合う。
「17番、夜美女子学園」
キャーという、華やかとは言い難い声が響く。
次。18番を超えたら桜川は全国には行けない。
ぎゅっと握った手は、熱く、燃えそうだった。
「18番桜川高等学校!!」
きゃー!!!思わずでた声は自分のなのだろうか。
頬に、涙が伝う。
やった。全国に、行ける。
その後は何も聞こえなかった。

寮に戻り、ベッドに入っても、目が冴えてねむれない。
全国!全国!
その言葉が頭を叩く。
全国だ。
そんな事を、思い眠りにつく。

絶対金賞を取る。
思った言葉は夢見る、素敵な台詞だった。

つづく
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