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高校一年生、桜川高等学校合唱部
37話「コンクール当日」
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プルルルル...寮の部屋に鳴り響く、
そんな、公衆電話のような音に、ルアは反応して、
スマホの応答ボタンをおす。非通知。誰だろう。
恐怖感もありながら出る。
「もしもし」
「あっルアピー?」
雪葉の声だ。どこか掠れているが、雪葉だ。
「雪葉先輩!?えっあの...どこで電話番号を?」
「なあに言ってんの。見学のとき、電話番号を教え合ったでしょ」
また、電話越しに笑い声がする。その事実に、どこか笑みが
こぼれた。
はにかむように、少し笑うと、
雪葉が喋り出す。
「今病院の、電話何だけどさ」
「え、あ、はい!大丈夫ですか?お体は...」
「まあ、大丈夫か?と言われたら大丈夫じゃないんじゃない?
うん。
たださあ、全国大会まで3日しかないけど、明日には
退院できるから。病気でもなくて、何か、風邪気味だったみたい」
「そうですか」
ほっとする。
「お母様かと思いました」
思わずでたその言葉に口を覆う。なんて失礼なことを。
「でしょう。
でもね、もう、家には行かないことにしたの。
だから、ただの風邪気味。」
ほっとして、胸を押さえる。
「行かない...?」
「うん。今までは、母親があんななのも、
私が不完璧だからだと思ってた。だけど、
高校に入ってから、どんどん、エスカレートして...。
前のお休みで首を絞められて、もうやだ、と思った。
ママとは縁を切るよ。」
少し声は、震えていた。
「絶対コンクール前日には、参加するから」
その言葉に、はいとしか返すことはできなかった。
コンクール前日。雪葉は、本当に、参加した。
勿論完璧だった。
そして、コンクール当日。
朝、4時とかに起きる。癖っ毛な髪の毛を、黒いゴムで結び、
はみ出たのはピンで止めまくる。
いててと思わず声がでた。
桜川の茶色の制服のスカート丈は、膝下。
スキンケアをして、外にでる。
今日は、誰にも出会わなかった。
「おはようございます。」
部室のドアを開くと、雪葉と、歌乃、他十人程度の部員がいた。
「おはよ」返事はバラバラに返る。
「ルアピー今日がんばろうな」
ハイタッチを思わせる素振りで手を上げる雪葉に、優しく手をタッチした。
そして、部員と港が集まった後、学校最後の合唱をした。
バスの中、朝焼けと日の出が見える。
だけど、やはり眠い。
隣から、葵の、星空の麗が聞こえて、
ルアも、つい口ずさんだ。
「皆さん」
本番前の、場所で、港に言われる。
「ついに、時が来ました。夢の全国、
目標は叶いました。」
頑張りましょうと言う港のあと、雪葉が挨拶をする。
「まさか全国にいけるなんて!嬉しい。
ゴールド、絶対取ろう。全力で挑んで。」
そして、合唱をする。
出番だ。
野花開く星が私達を呼ぶ
心はいつもキラキラと星空
どうせダメだとギスギス読んで
どうでもいいお話毎日読む
そろそろソロだ。
「きっと間違いだらけの星座と夢が叶う場所」
完璧な歌乃の歌声。オブラートの効いたその声に、痺れる。
盛り上がる歌に、コーラスの、音。
涙が思わず溢れる。素敵な歌声だ。
完璧な合唱だ。
星見空も、最高最強の歌声を披露する。
雪葉と見空は、コンビが最高だ。
ルアも出番だ。
もっと歌ってたい。楽しい。嬉しい。
夢のような一時に時間を載せる。
眠りにつくかのような、星空が見えて、ハモる。
そして、合唱は終わった。
最高の合唱だった。これで、ゴールドを取れないわけがない。
バチバチバチと、あの時聞いた拍手の音。
間違いない。ゴールドだ。
結果発表。もう、次の大会はない。
「雪葉先輩」
思わず問いかける。
「私、雪葉先輩の歌声大好きでした」
思わず潤んだ目を、見て、雪葉も、少し目を覆って、
ありがとう、と返す。
その姿に、更に涙が出る。もっと雪葉と歌っていたい。
これで終わりなんてイヤだ。
雪葉と、ずっと...
「9番、静岡森高等学校、銀賞」
わーと、微妙な歓声。
「14番、夜美学園、...ゴールド!!!」
その言葉にキャアアアアアアアアという、
耳が痛くなる声がする。
不安で胸がいっぱいになる。
「17番、桜川高等学校、...銀賞」
バスの前で、記念撮影をする。
涙跡のついた、瞳と、笑顔一つない、その表情は、見てて、
気持ちいい物ではない。
銀賞。あの合唱で、銀賞なのだ。
また、涙が出そうになる。それを止めるように、雪葉が前に出た。
「あとすこしで、金なのに、と悔しいのは、分かる。
だけど、それ、凄く大事。
三年の私らは引退しちゃっても、来年頑張って。次の部長と、
副部長で。ね?」
はい、と涙ぐんだ返事が辺りから帰る。よし、と雪葉は微笑む。
彼女の涙袋は、赤かった。
「じゃあ行こうか」
バスは、少し賑わってきた。来年は、絶対ゴールド。
,..絶対に。
嘘だったらいいのに。
そして、三年は引退した。
もう、雪葉とは合唱する事はない。
あの、歌声を聞く事はない。
その事実が、とてつもなく、いじらしかった。
ただ、雪葉と時々、喋る度コンクールを思い出す。
そして、
コンクールが終わると言うことは、入学試験も、
もう、すぐなのである。
つづく
そんな、公衆電話のような音に、ルアは反応して、
スマホの応答ボタンをおす。非通知。誰だろう。
恐怖感もありながら出る。
「もしもし」
「あっルアピー?」
雪葉の声だ。どこか掠れているが、雪葉だ。
「雪葉先輩!?えっあの...どこで電話番号を?」
「なあに言ってんの。見学のとき、電話番号を教え合ったでしょ」
また、電話越しに笑い声がする。その事実に、どこか笑みが
こぼれた。
はにかむように、少し笑うと、
雪葉が喋り出す。
「今病院の、電話何だけどさ」
「え、あ、はい!大丈夫ですか?お体は...」
「まあ、大丈夫か?と言われたら大丈夫じゃないんじゃない?
うん。
たださあ、全国大会まで3日しかないけど、明日には
退院できるから。病気でもなくて、何か、風邪気味だったみたい」
「そうですか」
ほっとする。
「お母様かと思いました」
思わずでたその言葉に口を覆う。なんて失礼なことを。
「でしょう。
でもね、もう、家には行かないことにしたの。
だから、ただの風邪気味。」
ほっとして、胸を押さえる。
「行かない...?」
「うん。今までは、母親があんななのも、
私が不完璧だからだと思ってた。だけど、
高校に入ってから、どんどん、エスカレートして...。
前のお休みで首を絞められて、もうやだ、と思った。
ママとは縁を切るよ。」
少し声は、震えていた。
「絶対コンクール前日には、参加するから」
その言葉に、はいとしか返すことはできなかった。
コンクール前日。雪葉は、本当に、参加した。
勿論完璧だった。
そして、コンクール当日。
朝、4時とかに起きる。癖っ毛な髪の毛を、黒いゴムで結び、
はみ出たのはピンで止めまくる。
いててと思わず声がでた。
桜川の茶色の制服のスカート丈は、膝下。
スキンケアをして、外にでる。
今日は、誰にも出会わなかった。
「おはようございます。」
部室のドアを開くと、雪葉と、歌乃、他十人程度の部員がいた。
「おはよ」返事はバラバラに返る。
「ルアピー今日がんばろうな」
ハイタッチを思わせる素振りで手を上げる雪葉に、優しく手をタッチした。
そして、部員と港が集まった後、学校最後の合唱をした。
バスの中、朝焼けと日の出が見える。
だけど、やはり眠い。
隣から、葵の、星空の麗が聞こえて、
ルアも、つい口ずさんだ。
「皆さん」
本番前の、場所で、港に言われる。
「ついに、時が来ました。夢の全国、
目標は叶いました。」
頑張りましょうと言う港のあと、雪葉が挨拶をする。
「まさか全国にいけるなんて!嬉しい。
ゴールド、絶対取ろう。全力で挑んで。」
そして、合唱をする。
出番だ。
野花開く星が私達を呼ぶ
心はいつもキラキラと星空
どうせダメだとギスギス読んで
どうでもいいお話毎日読む
そろそろソロだ。
「きっと間違いだらけの星座と夢が叶う場所」
完璧な歌乃の歌声。オブラートの効いたその声に、痺れる。
盛り上がる歌に、コーラスの、音。
涙が思わず溢れる。素敵な歌声だ。
完璧な合唱だ。
星見空も、最高最強の歌声を披露する。
雪葉と見空は、コンビが最高だ。
ルアも出番だ。
もっと歌ってたい。楽しい。嬉しい。
夢のような一時に時間を載せる。
眠りにつくかのような、星空が見えて、ハモる。
そして、合唱は終わった。
最高の合唱だった。これで、ゴールドを取れないわけがない。
バチバチバチと、あの時聞いた拍手の音。
間違いない。ゴールドだ。
結果発表。もう、次の大会はない。
「雪葉先輩」
思わず問いかける。
「私、雪葉先輩の歌声大好きでした」
思わず潤んだ目を、見て、雪葉も、少し目を覆って、
ありがとう、と返す。
その姿に、更に涙が出る。もっと雪葉と歌っていたい。
これで終わりなんてイヤだ。
雪葉と、ずっと...
「9番、静岡森高等学校、銀賞」
わーと、微妙な歓声。
「14番、夜美学園、...ゴールド!!!」
その言葉にキャアアアアアアアアという、
耳が痛くなる声がする。
不安で胸がいっぱいになる。
「17番、桜川高等学校、...銀賞」
バスの前で、記念撮影をする。
涙跡のついた、瞳と、笑顔一つない、その表情は、見てて、
気持ちいい物ではない。
銀賞。あの合唱で、銀賞なのだ。
また、涙が出そうになる。それを止めるように、雪葉が前に出た。
「あとすこしで、金なのに、と悔しいのは、分かる。
だけど、それ、凄く大事。
三年の私らは引退しちゃっても、来年頑張って。次の部長と、
副部長で。ね?」
はい、と涙ぐんだ返事が辺りから帰る。よし、と雪葉は微笑む。
彼女の涙袋は、赤かった。
「じゃあ行こうか」
バスは、少し賑わってきた。来年は、絶対ゴールド。
,..絶対に。
嘘だったらいいのに。
そして、三年は引退した。
もう、雪葉とは合唱する事はない。
あの、歌声を聞く事はない。
その事実が、とてつもなく、いじらしかった。
ただ、雪葉と時々、喋る度コンクールを思い出す。
そして、
コンクールが終わると言うことは、入学試験も、
もう、すぐなのである。
つづく
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