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高校二年生、一年生とのギスギス
5話「波乱のメンバー決め」
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今年はメンバー決めが早い。
授業が終わると、爆走で、
向かう。
するともう始まっていた。
バレないようにコッソリと入る。横にいる梨音に
「先輩、ギリギリセーフですね」
と言われる。
「そーだねー」
と言いながら。
「では、皆さん楽譜を構えて下さい!
順番にメンバー決めします。
赤阪勇太さん」
「はい」
どんどんオーディションされていく人達。
梨音の番だ。
「行ってきますね、先輩」
微笑む彼女。
練習をいっぱいしてて、上手い梨音なら、
大丈夫で、あろう。
そう、思っていた。
入った梨音。思いっきり閉めたようだが、
反動で少し開いて、声が聞こえた。
「オーディション辞退します」
いつかどこかで聞いたような言葉を脳内で
繰り返す。終わった部長も一気に青ざめ二人は気づけば扉を開けていた。
「戸崎さん」
港が言う。
「梨音ちゃんは、ちょっと預からせていただきますか?
ちょっと…」
部長と二人で梨音を連れて行く。
港からは、じゃあ戸崎さんの後。と言われた。
「どうしたの、梨音ちゃん、
あんなに練習してたじゃん」
ルアが言う。純粋に分からなかった。
「…べつに。」
そっぽを向く梨音。
分からない。今年は曲の変更もないのだから。
「どうせ私の歌声じゃメンバーになれないんですから。
それなら傷つく前に止めたいじゃないですか」
そこに、琴が言う。
「石桃さん?
それはまだ分からないよ。メンバーになるかもしれない」
「不確かじゃあないですか。」
「不確かじゃないよ。だって梨音ちゃん上手いもん」
「証拠はあるんですか?」
「証拠、って…」
「ないんですよね?」
「うーんまあ。だけど、自分の声で分かるでしょ」
「分かりませんよ」
「上手いじゃん」
「上手くない。上手くないんですよっ」
空は曇ってる。
梨音が、学校の校門を飛び、走る。
「部長は戻った方がいいです」
そう言って追いかける。
まだ梨音はギリギリ見える。
「梨音ちゃん、まってっ」
靴でもない。上履きで梨音を追いかける。
走るのは嫌いだ。
早い梨音に、追いつけない。
無言で坂を上がる梨音。
「はあ、はあ…。
梨音ちゃん、オーディションを受けてよ」
その言葉に梨音は走りながら大声で返事する。
「嫌です嫌です嫌ですっ」
タダをこねるように梨音がいった。
すると、すこしほつりと雨がふったのもあって、梨音が滑る。
坂道で。
「あ、うぁ、あっ!」
梨音が、坂道から転げ落ちる。後ろには車も来ている。
「危ない」
咄嗟に梨音の肩下を両手で持ち、止める。
「大丈夫?」
すると、梨音は
「ステキですね。こんなめんどくさい後輩を
助けるなんて」
「だって死んじゃったらイヤだもん」
急いで車を避け言う。
「...ありがとうございます」
そっぽを向く彼女。しかし、頬に僅かな水滴が見えた。
泣いてるのだ。怖かったのだろう。
咄嗟に梨音を抱き締める。
「怖かったよね。」
すると、梨音は、わんわん泣き出した。
「うぇーっうっ。うっ。
何で私を助けるの?ほっといてよ」
梨音のその言葉はルアを向いているが、顔は後ろを向いていた。
「だって、梨音ちゃんとコンクール出たいから。
上手で可愛い梨音ちゃんと出たいから」
言葉を厳選して言う。
すると、梨音は、ばっと、離れ、
「ありがとうございます」
と濡れた状態で言う。
「ルア先輩には特別に教えますね」
ぐいっと坂道の上の公園に連れてこられ、屋根付きベンチに座る。
「私は、中学から歌、合唱部を始めました。
吹奏楽と違うんだから、合唱部は別にいっか、とか
思ったんですが、歌をやってみたかったので。」
微笑む彼女。目には涙跡がついているが。
「結構強豪校でした。
メンバー決めもあります。
...私にはステキな先輩がいました。
依存してました。
一緒にコンクールで歌いたい。だから、がんばりました。
すると、結果は私が受かって先輩は落ちた。
先輩は、怒って、私がいなければ、と私を
避けるようになりました。
…私は、ルア先輩にも避けられたくないんです。
ルア先輩が好きだから」
だから、本当に強豪校で、
そんな事も言わないであろう桜川にきたんです。
歌の勉強もしたいのでミュージカル科に。と梨音は言葉を続ける。
しかし、ルアは思わず言葉が出る。
「それって、依存の対象を私に移しただけじゃ?」
バッと口を塞ぐ。なんてことを。
「違います、違います...」
下を俯く彼女。図星なのは明らかである。
「愛に理由なんてありません」
どこかでみた、台詞を呟く彼女。
だが、彼女は先輩、に依存しないとやっていけない体質なのだろう。
彼女のキュートなカチューシャは濡れて、濃く見えた。
「別に、梨音ちゃんがメンバーになって、
私が落ちても、私はそれでいいんだけどなあ」
「何でですか?」
「だって…これはメンバーオーディションだもん」
その言葉に目を見開く梨音。
「ホント、なんですか。
さっき一緒に歌いたいって…嘘だったんですか」
「嘘ではないけど、オーディションだもん」
そう言うルアに信じらんないと言う目を向ける。
彼女は、あは、アハハハハハと狂気的に笑い出した。
「…どうやら、私の愛には理由があったようですねぇ」
そう言う彼女の目は、泣いていた。
学校に戻ると、皆にメチャクチャ見られた。
濡れてる女の子二人。
ティッシュでふくがとれるわけなく。
透けないのはまだよかったことだ。
歌乃が終わり、ルアの番。
普通に、練習した通りに紫のルルを歌う。
次は、梨音だ。
頑張ってと口をパクパクする。
グッドをする彼女。
そのあと、彼女の歌声が聞こえてきた。
結果発表の日。
「結果をお伝えします」
梨音がパクパク口を開ける。
「理由があってもルア先輩を好きなのは
同じですから」
それにくすりと笑う。
「3年青山琴さん」
「はい」
「2年赤阪勇太さん」
「はあい」
「2年赤桜由子さん」
「はいっ」
「...1年石桃梨音さん」
「...はい!」
梨音が泣きそうになる。良かったねと呟く。
「2年…高島歌乃さん」
「はいっっ!!!」
港に名前を呼ばれ高い声で返事する歌乃。
「2年…戸崎ルアさん」
「はいっ」
梨音とハイタッチする。
葵ゆかも受かった。
今、最高な気分だ。
笑いながら梨音にいうと
「私もです」
と言われた。
つづく
授業が終わると、爆走で、
向かう。
するともう始まっていた。
バレないようにコッソリと入る。横にいる梨音に
「先輩、ギリギリセーフですね」
と言われる。
「そーだねー」
と言いながら。
「では、皆さん楽譜を構えて下さい!
順番にメンバー決めします。
赤阪勇太さん」
「はい」
どんどんオーディションされていく人達。
梨音の番だ。
「行ってきますね、先輩」
微笑む彼女。
練習をいっぱいしてて、上手い梨音なら、
大丈夫で、あろう。
そう、思っていた。
入った梨音。思いっきり閉めたようだが、
反動で少し開いて、声が聞こえた。
「オーディション辞退します」
いつかどこかで聞いたような言葉を脳内で
繰り返す。終わった部長も一気に青ざめ二人は気づけば扉を開けていた。
「戸崎さん」
港が言う。
「梨音ちゃんは、ちょっと預からせていただきますか?
ちょっと…」
部長と二人で梨音を連れて行く。
港からは、じゃあ戸崎さんの後。と言われた。
「どうしたの、梨音ちゃん、
あんなに練習してたじゃん」
ルアが言う。純粋に分からなかった。
「…べつに。」
そっぽを向く梨音。
分からない。今年は曲の変更もないのだから。
「どうせ私の歌声じゃメンバーになれないんですから。
それなら傷つく前に止めたいじゃないですか」
そこに、琴が言う。
「石桃さん?
それはまだ分からないよ。メンバーになるかもしれない」
「不確かじゃあないですか。」
「不確かじゃないよ。だって梨音ちゃん上手いもん」
「証拠はあるんですか?」
「証拠、って…」
「ないんですよね?」
「うーんまあ。だけど、自分の声で分かるでしょ」
「分かりませんよ」
「上手いじゃん」
「上手くない。上手くないんですよっ」
空は曇ってる。
梨音が、学校の校門を飛び、走る。
「部長は戻った方がいいです」
そう言って追いかける。
まだ梨音はギリギリ見える。
「梨音ちゃん、まってっ」
靴でもない。上履きで梨音を追いかける。
走るのは嫌いだ。
早い梨音に、追いつけない。
無言で坂を上がる梨音。
「はあ、はあ…。
梨音ちゃん、オーディションを受けてよ」
その言葉に梨音は走りながら大声で返事する。
「嫌です嫌です嫌ですっ」
タダをこねるように梨音がいった。
すると、すこしほつりと雨がふったのもあって、梨音が滑る。
坂道で。
「あ、うぁ、あっ!」
梨音が、坂道から転げ落ちる。後ろには車も来ている。
「危ない」
咄嗟に梨音の肩下を両手で持ち、止める。
「大丈夫?」
すると、梨音は
「ステキですね。こんなめんどくさい後輩を
助けるなんて」
「だって死んじゃったらイヤだもん」
急いで車を避け言う。
「...ありがとうございます」
そっぽを向く彼女。しかし、頬に僅かな水滴が見えた。
泣いてるのだ。怖かったのだろう。
咄嗟に梨音を抱き締める。
「怖かったよね。」
すると、梨音は、わんわん泣き出した。
「うぇーっうっ。うっ。
何で私を助けるの?ほっといてよ」
梨音のその言葉はルアを向いているが、顔は後ろを向いていた。
「だって、梨音ちゃんとコンクール出たいから。
上手で可愛い梨音ちゃんと出たいから」
言葉を厳選して言う。
すると、梨音は、ばっと、離れ、
「ありがとうございます」
と濡れた状態で言う。
「ルア先輩には特別に教えますね」
ぐいっと坂道の上の公園に連れてこられ、屋根付きベンチに座る。
「私は、中学から歌、合唱部を始めました。
吹奏楽と違うんだから、合唱部は別にいっか、とか
思ったんですが、歌をやってみたかったので。」
微笑む彼女。目には涙跡がついているが。
「結構強豪校でした。
メンバー決めもあります。
...私にはステキな先輩がいました。
依存してました。
一緒にコンクールで歌いたい。だから、がんばりました。
すると、結果は私が受かって先輩は落ちた。
先輩は、怒って、私がいなければ、と私を
避けるようになりました。
…私は、ルア先輩にも避けられたくないんです。
ルア先輩が好きだから」
だから、本当に強豪校で、
そんな事も言わないであろう桜川にきたんです。
歌の勉強もしたいのでミュージカル科に。と梨音は言葉を続ける。
しかし、ルアは思わず言葉が出る。
「それって、依存の対象を私に移しただけじゃ?」
バッと口を塞ぐ。なんてことを。
「違います、違います...」
下を俯く彼女。図星なのは明らかである。
「愛に理由なんてありません」
どこかでみた、台詞を呟く彼女。
だが、彼女は先輩、に依存しないとやっていけない体質なのだろう。
彼女のキュートなカチューシャは濡れて、濃く見えた。
「別に、梨音ちゃんがメンバーになって、
私が落ちても、私はそれでいいんだけどなあ」
「何でですか?」
「だって…これはメンバーオーディションだもん」
その言葉に目を見開く梨音。
「ホント、なんですか。
さっき一緒に歌いたいって…嘘だったんですか」
「嘘ではないけど、オーディションだもん」
そう言うルアに信じらんないと言う目を向ける。
彼女は、あは、アハハハハハと狂気的に笑い出した。
「…どうやら、私の愛には理由があったようですねぇ」
そう言う彼女の目は、泣いていた。
学校に戻ると、皆にメチャクチャ見られた。
濡れてる女の子二人。
ティッシュでふくがとれるわけなく。
透けないのはまだよかったことだ。
歌乃が終わり、ルアの番。
普通に、練習した通りに紫のルルを歌う。
次は、梨音だ。
頑張ってと口をパクパクする。
グッドをする彼女。
そのあと、彼女の歌声が聞こえてきた。
結果発表の日。
「結果をお伝えします」
梨音がパクパク口を開ける。
「理由があってもルア先輩を好きなのは
同じですから」
それにくすりと笑う。
「3年青山琴さん」
「はい」
「2年赤阪勇太さん」
「はあい」
「2年赤桜由子さん」
「はいっ」
「...1年石桃梨音さん」
「...はい!」
梨音が泣きそうになる。良かったねと呟く。
「2年…高島歌乃さん」
「はいっっ!!!」
港に名前を呼ばれ高い声で返事する歌乃。
「2年…戸崎ルアさん」
「はいっ」
梨音とハイタッチする。
葵ゆかも受かった。
今、最高な気分だ。
笑いながら梨音にいうと
「私もです」
と言われた。
つづく
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