203 / 332
201話 「きなこが無いなら作れば良いじゃない」
しおりを挟む
ごりごりと何かをする音が厨房に響く。
厨房では甘い香りが漂っており、その香りの発生源であるオーブンから熱く熱せられた鉄板が引き出される。鉄板の上にはケーキによく使う丸い型が乗っていた。
「ん、よしよしちゃんと火通ってるね」
焼かれたケーキの生地に串を突き刺しちゃんと焼けているのを見て満足そうに頷く加賀。
「後は冷ましてクリーム塗って……蜂蜜漬けの果物乗っけて……」
ごりごりと何かをする音が厨房に響く。
音の発生源はオーブンではない、生クリームを泡立て始めた加賀からでもない。それは厨房の椅子にちょこんと座るデーモンの手元から響いていた。
「ごめんねデーモンさん。ちょっと手が空いてる人がいなくてねー」
否定するように首を軽く振るデーモン。彼の手元では炒った大豆がすりこぎによってきなこへと変わっていく。なぜデーモンがそのような事をしているかと言うと、それは昨晩の八木の発言が原因である。
「このさー、鬼まんじゅうとサツマイモの餅たべたい」
サツマイモが届いた日の夜、八木はせっかくだからとサツマイモを使ったレシピを探し加賀へとおねだりしていた。
「んあー……鬼まんじゅうはいいよ。サツマイモのお餅はきなこが無いかなー」
レシピをちらっと見て一つは許可、もう一つは却下する加賀。
「えー……こっちも食べたぁい、きなこ作ってよー」
「大豆あるから作れなくは無いけど粉にするのめんど……手間だからなあ」
食べたいとごねる八木にきなこを作るのが手間だからなーと渋る加賀。
八木はこのままでは食べれないと考え、あることを思いついた。
「……デーモンさんにやってもらうとか」
「ん……いいのかな? お礼にケーキとか用意すればやってくれるかな……」
その様なやりとりが二人の間になり今朝になって試しデーモンへと話してみた結果ワンホールのケーキと引き換えにきなこ作成の依頼に成功したのである。
「アイネさんはどー?」
「もう少しで混ぜ終わるよ」
ちなみにアイネは蒸したサツマイモと餅を混ぜる作業をやっている。
加賀はすでに鬼まんじゅうは作成し終わり、デーモン用のケーキを作成している所である。
「できました」
「お、ありがとー。ケーキはもう少しで完成だよー冷蔵庫に入れておいて後で食べる? それともすぐ食べちゃう?」
「あとでお願いします」
了解と言ってきなこを受け取ってケーキに最後の飾りつけをしていく。とは言っても本職ではないのであくまで簡単なものではあるが。
ケーキの飾り付けが終わった後はきなこに砂糖を混ぜて行く、サツマイモの甘みが少ない品種のため割と多めである。
「できたできた……へへ、1個だけ味見しちゃお」
うー(いっこおくれー)
きなこをまぶした芋餅をつまみ上げぱくりと食べる。
出来るだけきなこをこぼさない様にした為、口の中は餅でいっぱいである。
「んー」
うー(こぼれたー)
口が餅でいっぱいなので喋れないが、しょーがないなあといった表情を浮かべうーちゃんの毛皮についたきなこをぽんぽんと軽くほろって上げる加賀。
「かなり柔く仕上がったね」
「……うん、サツマイモが多めだからかな? 冷えても固くなり難いそうだよ」
アイネの評価も悪くないようだ、一つ食べ終えると満足そうにぺろりと唇についたきなこを舐めとる。
「それじゃ持っていきましょうか。皆待ってる」
厨房では例によって新作のお菓子が提供されると聞いた探索者達、それに八木に咲耶、バクス達がすでに席について待ち構えていた。
さらに準備のいいことに八木と咲耶に至ってはおそらく緑茶を用意している。
「用意いいね。どしたのそれ?」
「ん、普通に発酵してないお茶ある?って聞いたら取り扱ってた」
「あ、そうなんだ……」
まさか普通に売っているとは思っていなかった加賀は軽くショックを受けた様子である。
紅茶などはあるのだしダメ元で聞いてみれば良かったと後悔するが、それはともかく今はせっかくの緑茶を楽しもう。そう考えお菓子を置き自分も椅子に腰かける。
「この周りの粉は何でしょう……もしかして豆ですか?」
「あ、味はともかく水分が……お茶をくれい」
「うんめうんめ」
食いなれた者は別としてきなこもまた独特な食べ物ではある、水分が奪われる感じが苦手というものが多少なりともいるようだ。
「こっちは生地がすっごいもちっとしてるねー」
「きなこあったのねえ……」
「大豆炒って粉にするだけだしね。大豆自体はあったからさー」
久しぶりに食べたきなこが嬉しかったのか、何時になく笑顔を浮かべお菓子を頬張る咲耶。
お茶を飲んでほっと一息つくと加賀へ話しかける。
「ちょっと味違うけど緑茶も久しぶり……そうそう、きなこってまだ余ってるのかしら」
「余ってるよー、いる?」
きなこはデーモンのがんばりにより大量生産が叶った。
もし無くなったとしても炒めてすればすぐ作れるので使っても問題ない。加賀はきなこがたっぷり入った器を見せ咲耶に手渡す。
「こんなにはいらないのだけどね……ほら、あれしようと思って?」
「あれ?」
「あれよあれ、ほら……牛乳に混ぜるやつ」
あー……と加賀と八木の口から声が同時にでる。
確かにそんなのあったなと、そういえば健康に良いからと咲耶が飲んでいたのを思い出す。
八木も加賀の家にいったさいに目撃してるのだろう。
「これを牛乳に……どうなるんだ? ふくらむのか?」
「ドロドロになりそう……」
きなこを受け取った咲耶はご機嫌だが、まわりはちょっと引き気味である。
いずれ宿できなこ牛乳がはやる日が……くるのだろうか。
厨房では甘い香りが漂っており、その香りの発生源であるオーブンから熱く熱せられた鉄板が引き出される。鉄板の上にはケーキによく使う丸い型が乗っていた。
「ん、よしよしちゃんと火通ってるね」
焼かれたケーキの生地に串を突き刺しちゃんと焼けているのを見て満足そうに頷く加賀。
「後は冷ましてクリーム塗って……蜂蜜漬けの果物乗っけて……」
ごりごりと何かをする音が厨房に響く。
音の発生源はオーブンではない、生クリームを泡立て始めた加賀からでもない。それは厨房の椅子にちょこんと座るデーモンの手元から響いていた。
「ごめんねデーモンさん。ちょっと手が空いてる人がいなくてねー」
否定するように首を軽く振るデーモン。彼の手元では炒った大豆がすりこぎによってきなこへと変わっていく。なぜデーモンがそのような事をしているかと言うと、それは昨晩の八木の発言が原因である。
「このさー、鬼まんじゅうとサツマイモの餅たべたい」
サツマイモが届いた日の夜、八木はせっかくだからとサツマイモを使ったレシピを探し加賀へとおねだりしていた。
「んあー……鬼まんじゅうはいいよ。サツマイモのお餅はきなこが無いかなー」
レシピをちらっと見て一つは許可、もう一つは却下する加賀。
「えー……こっちも食べたぁい、きなこ作ってよー」
「大豆あるから作れなくは無いけど粉にするのめんど……手間だからなあ」
食べたいとごねる八木にきなこを作るのが手間だからなーと渋る加賀。
八木はこのままでは食べれないと考え、あることを思いついた。
「……デーモンさんにやってもらうとか」
「ん……いいのかな? お礼にケーキとか用意すればやってくれるかな……」
その様なやりとりが二人の間になり今朝になって試しデーモンへと話してみた結果ワンホールのケーキと引き換えにきなこ作成の依頼に成功したのである。
「アイネさんはどー?」
「もう少しで混ぜ終わるよ」
ちなみにアイネは蒸したサツマイモと餅を混ぜる作業をやっている。
加賀はすでに鬼まんじゅうは作成し終わり、デーモン用のケーキを作成している所である。
「できました」
「お、ありがとー。ケーキはもう少しで完成だよー冷蔵庫に入れておいて後で食べる? それともすぐ食べちゃう?」
「あとでお願いします」
了解と言ってきなこを受け取ってケーキに最後の飾りつけをしていく。とは言っても本職ではないのであくまで簡単なものではあるが。
ケーキの飾り付けが終わった後はきなこに砂糖を混ぜて行く、サツマイモの甘みが少ない品種のため割と多めである。
「できたできた……へへ、1個だけ味見しちゃお」
うー(いっこおくれー)
きなこをまぶした芋餅をつまみ上げぱくりと食べる。
出来るだけきなこをこぼさない様にした為、口の中は餅でいっぱいである。
「んー」
うー(こぼれたー)
口が餅でいっぱいなので喋れないが、しょーがないなあといった表情を浮かべうーちゃんの毛皮についたきなこをぽんぽんと軽くほろって上げる加賀。
「かなり柔く仕上がったね」
「……うん、サツマイモが多めだからかな? 冷えても固くなり難いそうだよ」
アイネの評価も悪くないようだ、一つ食べ終えると満足そうにぺろりと唇についたきなこを舐めとる。
「それじゃ持っていきましょうか。皆待ってる」
厨房では例によって新作のお菓子が提供されると聞いた探索者達、それに八木に咲耶、バクス達がすでに席について待ち構えていた。
さらに準備のいいことに八木と咲耶に至ってはおそらく緑茶を用意している。
「用意いいね。どしたのそれ?」
「ん、普通に発酵してないお茶ある?って聞いたら取り扱ってた」
「あ、そうなんだ……」
まさか普通に売っているとは思っていなかった加賀は軽くショックを受けた様子である。
紅茶などはあるのだしダメ元で聞いてみれば良かったと後悔するが、それはともかく今はせっかくの緑茶を楽しもう。そう考えお菓子を置き自分も椅子に腰かける。
「この周りの粉は何でしょう……もしかして豆ですか?」
「あ、味はともかく水分が……お茶をくれい」
「うんめうんめ」
食いなれた者は別としてきなこもまた独特な食べ物ではある、水分が奪われる感じが苦手というものが多少なりともいるようだ。
「こっちは生地がすっごいもちっとしてるねー」
「きなこあったのねえ……」
「大豆炒って粉にするだけだしね。大豆自体はあったからさー」
久しぶりに食べたきなこが嬉しかったのか、何時になく笑顔を浮かべお菓子を頬張る咲耶。
お茶を飲んでほっと一息つくと加賀へ話しかける。
「ちょっと味違うけど緑茶も久しぶり……そうそう、きなこってまだ余ってるのかしら」
「余ってるよー、いる?」
きなこはデーモンのがんばりにより大量生産が叶った。
もし無くなったとしても炒めてすればすぐ作れるので使っても問題ない。加賀はきなこがたっぷり入った器を見せ咲耶に手渡す。
「こんなにはいらないのだけどね……ほら、あれしようと思って?」
「あれ?」
「あれよあれ、ほら……牛乳に混ぜるやつ」
あー……と加賀と八木の口から声が同時にでる。
確かにそんなのあったなと、そういえば健康に良いからと咲耶が飲んでいたのを思い出す。
八木も加賀の家にいったさいに目撃してるのだろう。
「これを牛乳に……どうなるんだ? ふくらむのか?」
「ドロドロになりそう……」
きなこを受け取った咲耶はご機嫌だが、まわりはちょっと引き気味である。
いずれ宿できなこ牛乳がはやる日が……くるのだろうか。
0
あなたにおすすめの小説
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される
秋.水
ファンタジー
記憶を無くした主人公は魔法使い。しかし目立つ事や面倒な事が嫌い。それでも次々増える家族を守るため、必死にトラブルを回避して、目立たないようにあの手この手を使っているうちに、自分がかなりヤバい立場に立たされている事を知ってしまう。しかも異種族ハーレムの主人公なのにDTでEDだったりして大変な生活が続いていく。最後には世界が・・・・。まったり系異種族ハーレムもの?です。
湖畔の賢者
そらまめ
ファンタジー
秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。
ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。
彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。
「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」
そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。
楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。
目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。
そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる