家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「93話」

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ふぅ……血も綺麗に落ちたし、そろそろ出るかな。

「さって、上がって飯食って寝るか――」

そう言ってシャワーを止め、戸を開けて更衣室に向かい……そこでふと、鏡を見てしまう。

「――変態」

一言で言えばまさにそれである。

猫耳と尻尾を生やした、やたらと筋肉質で全裸な男。
こんなのが外を歩いていたら一発で逮捕されるだろう。

いや、まあ全裸な時点でアウトだけど……これは服着ていても職質ものだろう。

さっきまでの浮かれていた気分が吹き飛び、スンッて感じで表情が消える。


そして何か無性に泣きたくなってきた。

「ふぐぅ……俺みたいな野郎が猫耳つけたって似合わないんだよ、似合うはずが無いんだよっ」

誰も突っ込んでこなかったから気にしていなかったけど、この手のはやっぱ俺みたいな野郎がつけてもダメなんだと思う。
自分の姿を見て、自分にダメージが入るとかもうね。

気付かなかったら着けていられたけど……気付いてしまった以上はキツい。

しかし、このまま猫耳を使わないと言うのも勿体なさ過ぎる。
これがあれば魔法を使える様になるんだし、死蔵するのはあり得ない。

そうなると……。

「くそう……北上さん着けてくんないかなあ……訴えられそうだよなあ。訴えられなくても社会的に死にそう」

誰か他の人の……候補としては北上さんしか居ない訳だけど。
猫耳を手にして、これ着けてくださいって言うんだよね?ダメじゃん!


あと、そもそもの問題としてだ。

「そもそも猫耳着けてるとヘルメットが着けられないしなー……」

猫耳着けたままだとヘルメット被れないんだよね……不快感が無視できないレベルでヤバい。

……とりあえず着替えてしまうか。
剥ぎ取り品の整理しないといけないし。



休憩所に戻り、皆からの視線を感じつつ個室へと向かう。

「どうしよ、これヘルメットに着かないかな」

剥ぎ取り品の整理も終わり、猫耳を手にどうしたものかと悩み。
何となくヘルメットに猫耳を押し当てて見るが。

「着いたっ!?」

なんと見事にくっついたではないか。

これなら見た目はなんとか……まだなんとか行けると思いたい。
猫耳ついたヘルメットって既存品であるじゃない?

これならあいつの一種って事でいけると思うんだ。
よくよく見るとモフモフしてるけど、許容範囲でしょ。

あとはヘルメットにつけてちゃんと装備として機能するかだね。

ちなみに猫耳の効果だけど、まず聴力に補正……位置とかが分かりやすくなる効果が付いている。

それに全身体能力に補正値が100入る。
筋力だけが上がるんじゃ無いんだよね、脳の処理速度や動体視力とか反射神経とか神経の伝達速度とかもろもろ上がってるっぽい。

あと、尻尾とセット効果とかついてて、全身体能力に追加で補正値50入るそうだ。

全市単体能力に補正値つくのは地味にやばいと思う。

着ける前後ではっきりと体感できるレベルだ。


あとは落下ダメージ軽減に、夜目、気配遮断とか。猫っぽい効果も付いている。

アクセサリーについている効果だけでも相当なもんだと思う。
さすがこの階層のレア装備ってとこかな。



……最後に人間性を捧げるって書いてあるのがちょっと気になるけど。



「あ、ちゃんと猫耳の効果もある……これならまだましかあ」

恐る恐るヘルメットを被ってみると、体の感覚が変わるのが分かる。
ヘルメットにつけてもきっちり装備の効果はでるようだ。

これなら問題ないだろう……あとは隊員さんの誤解を解いておくか。
さっきは浮かれてて気が付かなかったけど、猫耳つけて皆の前に出たのはいかん。絶対何か勘違いされていると思う。

いっそ尻尾は有用装備だと伝えて全員で着けるように仕向けるか……?
敵の弱点を看破出来るんだし、十分有用なはずだ。そうしよう。





「と、言うわけで尻尾は有用なのでお勧めします。セット効果あるってのも分かりましたし」

着替えてちゃんと尻尾と猫耳を外し、隊員さんに装備の効果について説明する。
ちゃんと有能なんだよ?ってことをアピールするのだ。

「なるほどなあ」

「……俺たちはまだカードとか特殊な効果付き装備を持ってなくてな、感覚的に良く分からないんだが、その装備の効果ってやっぱすごいのか?」

有用だから着けていると言うのは一応理解はしてくれたらしい。
ただ、それがどれぐらい有用なのか実感が湧かないと……確かに補正値100とか150とか言われても、実際にカードとか入手して体感して見ないと実感湧かないか。

「すごいですよ。着けてみますか?あ、セットじゃないとダメですけど」

そう言って……まずは都丸さんに進めてみるが……。

「いや、俺は……」

そう言って目を反らし、そのまま他の隊員へと目を向ける。

「いやっす」

「さすがにおっさんがそれ着けるのはキツイだろ、色々と」

「わ、私もちょっとそれは……」

が、どの隊員さんもすっと目を反らす。
そんな嫌か、嫌なんか。

吉田さん、ちょっとオタクっぽい気配があるから……と思ったが、お偉いさんの筋トレに付き合ってて話に加わってないんだよな。


「となると……」

男性隊員が全滅すると、残るのは北上さんだけな訳で、皆の視線が北上さんへと集まる。

「え、私?別にいいけどー……」

まあ、そりゃ断るよ……おう?
えっ、いいの??


てっきり断るかと思ったのだけど……とりあえず猫耳と尻尾を渡してっと。

「これどうやって着けるの……こう?」

「ですです」

そう言って腰に尻尾を押し当てる北上さん。

それだけで尻尾はぴとっと腰に付く。
別に素肌じゃないとダメとかないからね、俺は直で付けてるけど。

装備の上からいけるって知らんかったんだからしょうがない。



「本当についたし。じゃあ、耳も……うわっ、これすごっ」

「え、そんなにっすか?」

「うん、すっごいよこれー」

猫耳も乗っけるだけでぴとっと付く。
で、着けると同時に猫耳本体の効果と尻尾とのセット効果が発動する。

俺でもはっきりと変化が分かるんだから、レベルが大分離れている者ならその恩恵はより大きく感じる事が出来るだろう。


北上さんがすごいすごいと連呼していたので、結局他の隊員さんも試しに着けてその効果を体感する事となった。

これできっと、隊員の間で尻尾装備が流行るに違いない。
くくく。周りが皆着けていれば奇異の目で見られる事もないっ、完璧だ。

ぞろぞろと集団で動く、尻尾をつけたむさいおっさん達が爆誕する訳だ……やべえな、早まったかも知れない。
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