蛙は嫌い

柏 サキ

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6.錆びた黄金 3.5

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~バイト先 喫茶店にて~




「おはようございまあす。」


 放課後、直でバイト先にて向かい17時に出勤した。
 今日は5月2日…お、店長は休みだっ。

 明日からゴールデンウィークなわけだが、5月3.4.5が祝日でさらに 土日を挟んでくれるから5連休になる。

 まあ、明日のことを考えると少し憂鬱なわけだけど。


「おーい、西くん。ボーッとしてないでさ、ほらっ、やる事ないなら掃除掃除ーっ。」


 バイト先の先輩の【宮内さん】は欠伸をしながら窓の掃除をしに行った。


 喫茶店『douce(ドゥース)』、フランス語で快適という意味らしい。

 まあ確かに店内は木造になっていて、ソファもアンティーク感があり、心地の良いところではあるのだけれど。

 このお店は店長の【日比野さん】が個人経営している店なのだが、ちゃんと経営できてるのかな…。

 暇だ、お客さんが1人として来ない。
 自分の出勤する前からいるおじいさんが1人だけだ。
 そのおじいさんはいびきをかいて寝ている。


 宮内さんも暇そうに、雑巾で窓の枠を拭いている。
 毎日こんな感じだ。


 自分の入れる時間帯というのが、大体夕方からになってしまうのでランチタイムやティータイムとも被っていない。
 それもあるのだろう。


 今日は他にバイトがもう1人【健斗さん】がいるが、健斗さんに関しては奥で携帯を弄ってサボっている。


 自分は冷蔵庫の中の整理を始めた。
 きっと昨日もやってたみたいで、もう既に整っているのだけれど。

 そのあと、テーブルを全て拭いて、キッチンで考え事をしていた。

 御察しの通り、明日のこと。


 何を渡されるのか、もしかしてその場で刺されるんじゃないか、まあ刺されても保健室だし応急処置はしてもらえるな、なんて妄想は尽きない。

 もしかして昔の事はもう気にしてなくて、実は僕に気があって、保健室で…。

 やめよう、もうなんか不謹慎だと思われそうな妄想だ、これ以上は。
 まあ許してくれよ、まだまだ思春期真っ盛りみたいなものなんだから。


 永遠にさえ感じたバイトの時間はやっと22時を回り、退勤して駅へと向かった。


 いつもよりゆっくり着替えてしまったので、電車の振り切りが降りそうになったところを小走りで駆け抜けた。


 電車に10分ほど揺られ、改札を抜け、自転車に跨り、携帯を見ると若宮からメールが来ていた。


《5/4はとりあえず11時に大須駅の8番出口でってことで田嶋と話してたから、忘れんなよ!》


 了解、とだけ返して、家に向かった。


 帰宅すると作り置きの晩御飯があったので、白米を1杯おかわりして、その後お風呂に入って布団についた。


 遠足前の小学生並みに寝付けない。
 そんないいイベントではないんだけど。



 寝付けないので、少し灯をともして『凍てつく空の下 4巻』を続きから20ページ程読んだ辺りで記憶をなくした。



「…絶対ね。」




 夢を見た気がする。
 もうよく思い出せない。



 身勝手に約束された朝を迎える。



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