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7.錆びた黄金④
しおりを挟む約束の朝を迎えた。
目覚ましの音が耳を刺す。
それでも止めずに暫く天井を見ていた。
寝た時間もそんなに早くないはずなのに、何故かいつもよりスッキリと起きられた。
スゥーっと息を深く吸い込んでから、よしっと起き上がって制服に着替えた。
リビングにはサービス業なので連休なんてものは存在しない出勤前の母の姿が見えた。
あら、今日は学校ないわよ?勘違いしちゃって。
なんて笑われたが、別に理由を説明する事もなく、僕はいつも通り母より先に家を出た。
いってらっしゃ~い。
リビングから響く声は僕の耳へギリギリ届いてドアが閉まった。
学校。
祝日なので登校してくる生徒こそいないが、遠くで野球部の掛け声らしき声や、女子テニス部の甲高い声が聞こえる。
保健室は校門から割と距離があったので、その間に心の準備を進めようとしたが、ただずっと深呼吸しているだけであった。
《ガラガラッ》
「あれ~。今日はお休みだよ~、知らないの~?」
桑山先生は今日も陽気に迎える。
知ってますよ、と揶揄いをスルーして辺りを見回した。
どうやら先についてしまったようだ。
なんか少し安心した。
「先生は何故今日も出勤なんですか?」
時間を持て余して、その間沈黙というのもなんなので質問をする事にした。
「それはね~、教師は色々あってね~。まあ今はここで川…」
《ガラガラッ》
誰か来たのかは容易く想像がついた。
川井さんが、おはようございます、と言って遂に目の前に現れた。
自分と桑山先生もおはようございます、と返して、先生は何やら色々書類を受け取っている。
何をしているかは聞かず、ただ待っていると、
「…待たせてごめんね、ここじゃなんだし中庭の自販機行こう、喉も渇いたし。」
いや、絶対俺のが渇いてる。
とは口には出さず、頷きだけして彼女の後に続いた。
桑山先生はニヤニヤしながら、若いね~などと茶化してきたが、それも軽くスルー。
というか下手に乗っかって逆鱗に触れるのはごめんだ。
自販機の前に着くと、何飲む?なんて聞いてくるので、
即座に、いや自分で買うよ、と突っ込んだ。
さすがにこの状況で奢ってもらうなんて意味がわからない。
彼女は緑茶を、自分はミルクコーヒーを買って、彼女はすぐそばにあるベンチに腰掛け座ってと僕に言ってきた。
気まずかったが逆らうわけにもいかないので、ベンチの端っこに3分の2だけ腰掛ける形で距離をとった。
さあ、何が始まる。
彼女の耳まで心臓の音が聞こえるんじゃないかと思うくらい脈を打っている。
悟られてはダメだ、と思い自分から切り出した。
「…で、今日は何のご用で…?」
すると眉間に少し皺を寄せて、
「昨日言ったじゃない、返したいものがあるって。そうね、ささっと受け取ってくれる?」
邪が出るか、鬼が出るか。
彼女がそう言って差し出してきたものは、半分ほどになった消しゴムだった。
「え…?なにこれ…?俺こんなの貸してたっけ??てかこれなら返さなくても良かったのに…。」
酷く拍子抜けした。
あんなにビビって損した、てか律儀すぎだろ。
すると彼女は続けた。
「そう…、本当に覚えてないのね…。なら返さないでおこうかな。いっそ。」
え、なにが…?
疑問しかないよさっきから。
頭パンクする。
「え、その消しゴムがどうかした…?もはや貸したことすら覚えてないんだけど。」
「うん、まあそうだよね。そうだと思う。でもさ、自分で書いた事くらいは覚えてなよ。」
ん???
疑問は深くまる一方。
あんま焦らさないで教えてよ、と返すと、
「消しゴムにさ…異性の名前書いて使い切ったら恋が叶う…みたいなやつ。あったじゃない…?ねえ…。」
は????????
まさか、え、そんな事俺がやってたのか??????
体温が上がるのを感じた、きっと今の自分は顔面が煮えきったタコのように赤いだろう。
「ま、そゆことだからさ、返すね、これ。それと…」
彼女はベンチから立ち上がり少し歩いてから続けた。
「続きを知りたかったら、また保健室か図書室で、ね。」
???????????????
消しゴムを返してもらったのはいいけど、続きってなんだ???
恥ずかしさと疑問符で押し潰されそうだ。
頭を抱えていると、彼女の姿はそこにはもうなかった。
だけど何故か、またきっと会える、なんてことを確信していた。
ちゃんと次は…ね…。
午後のバイトの事なんて、もう考える余裕はなかった。
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朝8時に必ず一本は投稿するのをルーティンにしようと思ってます!
その他の時間で出来上がったときは不定時で投稿します!
どうぞ次話も宜しくお願いします…!
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