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prologue 『死者奴隷』
第1話 とある終わった世界の話
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─── ヒュゥゥゥゥゥゥ!!! コォォォォォォォ!!! ───
耳を裂くような風の音の中、紅く染まった空に一人の男が漂っていた。
その男に腕はなく、引き裂かれた灰色のローブがだらしなく垂れ下がり風に靡いている。
ボロボロの薄汚れた衣服を纏まとい、みすぼらしい身なりをしているが、頭には純白の環があり、誰もが崇めたくなるような神々しい光を放っている。
男は宙を漂いながらこの世界を見回す。
大地は大きく割れて宙に舞い、空は鮮やかな紅に染まり、そこには、黄色や緑、紫、橙などの光の線が走っている。
果たして、この世界を見たものはこの景色を混沌とした惨状ととるか、鮮やかなる終末ととるか。
どちらにしても「終わり」という答えに行きつくため些細な疑問ではあるが。
「争いのない世界に、とは言ったが・・・この有様か。
やっぱり俺たち人類には、早すぎた力みたいだな」
と自嘲気味に言った
たくさんの同胞達を失い、たくさんの希望を背負ってここまで来たというのに、蓋を開けてみればこの惨状だ。
自分たちの星、アーランドは生命が存在することのできない世界に変貌を遂げようとしている。
そんなことを考えていると突如、男の全身が強く光り出した
「おっと、もう時間か。まだやり終えていないことがあったな」
男が頭上にある光の環をちらりと見やると、その光がものすごい速度で同心円状に広がり、空を駆けていく。
「俺で200番目。様々な場所に飛ばされたNo.の中では、俺が最後のはずだが... 予想が正しければもう一人いるはずだ」
目を閉じながらブツブツと何かを思案していた男は、ほんの少しだけその身をよじった。辛うじて肩に掛かっていたローブの右肩部分がずれる。さらけ出された肩には薄くアラビア数字で「200」と書かれていた。
「うーん... 俺の予想では失われた本当の自分オリジナル───No.201───がどこかにあるはずなんだが。失われたって言われているっだけあってそう簡単に...居た」
暫くの間、目を閉じていた男だったが、静かに瞼を開くと再度光の環を飛ばす。
「さて、これでよしと。もう後はお前だけだ。できる限りの情報は送ったが後はお前次第だからな。何とかやってくれよ」
身体を包み込んでいた光は更にその強さを増す。さらには男から周囲へと、その規模を増やしながら広がっていく。男はまた目を閉じた。この世界迄もを包み込みながら大きくなっていく光に身を任せ、たった一つ残された希望に全てを賭けながら。
誰もが争いなんてくだらない命の削り合いなんかせず、互いに笑い合って暮らすことが出来る。そんな世界にしたかった。残された希望はただ一つ、思いのほか小さくなってしまった本当の自分オリジナルを思い浮かべながら男は意識を手放した。
遂に生命が一つ残らずなくなってしまった世界で、残された光は、止まることなく辺り一面を白く染め上げていき───
耳を裂くような風の音の中、紅く染まった空に一人の男が漂っていた。
その男に腕はなく、引き裂かれた灰色のローブがだらしなく垂れ下がり風に靡いている。
ボロボロの薄汚れた衣服を纏まとい、みすぼらしい身なりをしているが、頭には純白の環があり、誰もが崇めたくなるような神々しい光を放っている。
男は宙を漂いながらこの世界を見回す。
大地は大きく割れて宙に舞い、空は鮮やかな紅に染まり、そこには、黄色や緑、紫、橙などの光の線が走っている。
果たして、この世界を見たものはこの景色を混沌とした惨状ととるか、鮮やかなる終末ととるか。
どちらにしても「終わり」という答えに行きつくため些細な疑問ではあるが。
「争いのない世界に、とは言ったが・・・この有様か。
やっぱり俺たち人類には、早すぎた力みたいだな」
と自嘲気味に言った
たくさんの同胞達を失い、たくさんの希望を背負ってここまで来たというのに、蓋を開けてみればこの惨状だ。
自分たちの星、アーランドは生命が存在することのできない世界に変貌を遂げようとしている。
そんなことを考えていると突如、男の全身が強く光り出した
「おっと、もう時間か。まだやり終えていないことがあったな」
男が頭上にある光の環をちらりと見やると、その光がものすごい速度で同心円状に広がり、空を駆けていく。
「俺で200番目。様々な場所に飛ばされたNo.の中では、俺が最後のはずだが... 予想が正しければもう一人いるはずだ」
目を閉じながらブツブツと何かを思案していた男は、ほんの少しだけその身をよじった。辛うじて肩に掛かっていたローブの右肩部分がずれる。さらけ出された肩には薄くアラビア数字で「200」と書かれていた。
「うーん... 俺の予想では失われた本当の自分オリジナル───No.201───がどこかにあるはずなんだが。失われたって言われているっだけあってそう簡単に...居た」
暫くの間、目を閉じていた男だったが、静かに瞼を開くと再度光の環を飛ばす。
「さて、これでよしと。もう後はお前だけだ。できる限りの情報は送ったが後はお前次第だからな。何とかやってくれよ」
身体を包み込んでいた光は更にその強さを増す。さらには男から周囲へと、その規模を増やしながら広がっていく。男はまた目を閉じた。この世界迄もを包み込みながら大きくなっていく光に身を任せ、たった一つ残された希望に全てを賭けながら。
誰もが争いなんてくだらない命の削り合いなんかせず、互いに笑い合って暮らすことが出来る。そんな世界にしたかった。残された希望はただ一つ、思いのほか小さくなってしまった本当の自分オリジナルを思い浮かべながら男は意識を手放した。
遂に生命が一つ残らずなくなってしまった世界で、残された光は、止まることなく辺り一面を白く染め上げていき───
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