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その後のふたり
貴方と歩む未来
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青を基調にした花束を両手で抱え、白いタキシードと、繊細な刺繍が施されたベールを身に纏う。
鏡に映った自分は、花嫁とも花婿とも言えない姿で佇んでいた。
「聡」
甘い声に振り向けば、間髪入れずに唇をついばまれる。
もとより垂れ目がちな瞳を更に緩ませた月島は、同じデザインのタキシードに身を包み、柔らかく微笑んでいた。
「とても綺麗だ」
「お前も、憎たらしいほど似合っているよ」
差し出された手を握り返し、スタッフの誘導に従って控室を後にする。
式場へ向かう道中、俺はふと三ヶ月前のことを思い出していた。
これほど幸せな気分になれるのなら、あの日、神原に口を滑らせて良かったと。
◆
三ヶ月前。
リビングで読書に勤しむ俺の横で、月島が何やら熱心にテレビを見詰めていた。
その様子が珍しくて顔を上げる。そして思わず面食らった。
ブライダル特集。
そう大々的に銘打たれた番組では、新婚の夫婦が仲睦まじくインタビューを受けていた。
「意外だな、こういうの興味あるのか?」
「……無くはない」
月島の答えに益々目を見張る。
この返しは、興味津々ということだ。月島基準では。
その証拠に、月島は澄ました顔をしながらも、一向に画面から視線を外そうとしない。
「結婚式か……」
正直、自分には縁の無い話だと思っていた。元から誰とも結婚する気が無かった上に、月島と付き合った後も、男同士で結婚式を挙げるという発想が無かったのだ。
月島の方も興味は無いとばかり思っていたが、俺の思い違いだったようである。
そんな願いがあるのなら、叶えてやるのもやぶさかではないのだが。
「別に、式を挙げたいという訳ではないよ。準備も大変だし、費用もかかるしね。ただ、君のタキシード姿は見てみたいと思ったのだ」
「ほほう」
「きっと、よく似合うのだろうな」
何処か遠くを見るような月島の表情に胸を締め付けられる。気付けば、俺は動揺も露にこう口走っていた。
「タキシードを着るだけなら、別に式を挙げなくてもできるだろ? ほら、記念写真だけでも撮れるみたいだし」
今の話は先程の番組から得た情報だ。付け焼き刃もいいところな知識だったが、月島の顔を晴れさせるには足りたようだ。
「そうだね。無理に形に拘らなくても、君との思い出が残せれば充分だ」
「だよな……?」
月島の言葉に相槌を打ちながらも、俺は何か引っかかる物を感じていた。
にこにこと笑う月島の態度はいつもと変わらない。それでも、何処か未練のようなものを感じてしまうのは俺の気のせいだろうか。
神原と話をしたのは、そんなやり取りをした翌日のことだった。
「そういう訳でさ、今度タキシードを着ることになったんだよ」
「え、篠崎先輩が!? いやぁ人は変わりますね」
世間話の一環として先日のやり取りを持ち出したところ、何故か神原は大袈裟に驚きの声を上げた。
どうやら何か勘違いをしているらしい。
「ちゃんと式には僕も呼んでくださいよ!」
「いや、盛り上がってるとこ悪いが写真を撮るだけなんだ」
「は!? 何言ってるんですかあんた!?」
今度は満面の笑みを一瞬で顰めて叫ぶ。忙しい奴だ。
「ついにあんた呼ばわりか……何かどんどん俺の扱いが雑になっていないか?」
「そんなこと今はどうでもいいんです。それより、何で今の流れで式を挙げない結論になるんですか!」
「え? いやだって忙しいし……アイツもそこまで拘ってないだろ」
「滅茶苦茶拘ってますよ! ねっ、保坂さん!」
「ああ、それはもう未練たらたらだな」
神原の振りに応えて保坂が大仰に頷く。社員旅行で幹事を共にこなした二人は、その後も仲良く過ごしているようだ。
俺としても気の置けない二人であるため、三人でつるむ機会は少なくないのだが、それでも広報課の保坂が経営企画課まで出張って来ている現状は解せない。
「何でお前がこんな所にいるんだよ」
「スクープの匂いがした」
「馬鹿言えよ」
「いやいや、社員の結婚出産は社報に載っけてるだろー?」
言われてみればそうだった気もする。
正直、さほど興味を持っていなかったので曖昧な記憶しか残っていなかったが、広報課職員の手前それは黙っておくことにした。
「お前の写真も撮るから式には呼べよな!」
「だから挙げないって」
「往生際の悪い奴だな、大人しく祝福されろ」
「そんな横暴な」
本当に祝福する気があるのか怪しい保坂の言に苦く笑う。
しかし、冗談と受け止めた俺とは裏腹に、保坂と神原は真面目な表情をしていた。
「人生の一大イベントですし、嫌でなければやっておいた方がいいんじゃないですか?」
「そうだそうだ。お前、相手が相手なら破局の危機だぞ」
「は、破局?」
不穏な単語を耳にして鼻白む。
俺の動揺を他所に、神原と保坂は神妙に頷き合っていた。
「いいですか、篠崎先輩。価値観は人それぞれですが、結婚という人生の節目をとても大事にしている人もいるんです。月島さんがそうだった場合、先輩の行動次第では後に禍根を残す可能性もありますよ」
「月島の性格なら面と向かってお前に文句を言ってはこないだろうが、隠れて落ち込むくらいはするんじゃないか。あれは引きずるタイプだぞ、絶対」
妙に実感の篭もった言葉だ。まだ未婚の筈の二人に何があったのだろうか。
「僕の姉は、同じような話で破局寸前まで行きました」
「俺は彼女に似たようなことをやらかして破局した」
「お、おう……」
咄嗟に言葉が浮かばないが、保坂に関しては御愁傷様と言っておこう。
いずれにせよ、深く考えなければならない問題だということはよく分かった。
差し当たっては、月島を昔から知る人物に話を聞いてみることにしようか。
「それで俺のところに来たのか」
「はい、猫宮さんは月島の昔馴染みですし、御結婚もされているので是非相談に乗っていただきたくて」
打ち合わせにかこつけて猫宮を引っ張り出し、月島の話を持ちかけたところ、猫宮は困り顔で天井を見上げた。
「頼りにしてもらって悪いが、月島とそんな話をしたことはないなぁ」
「猫宮さんが結婚すると聞いても変わりはありませんでしたか? 例えば、羨ましそうにしてたりとか、寂しそうにしてたりとか……」
「いや、いつもどおりだったと思う」
「……そうですか」
どうやら当てが外れてしまったようだ。
こうなったら本人にそれとなく聞いてみようかと思案していたところ、猫宮が悪戯っぽく笑いながら言った。
「そんな顔をするな。他でもない大事な弟分の話なら、俺も無関係じゃない。一週間もらえるか?」
「はい、何をする気……ま、まさか」
含みのある言葉に、猫宮の前職を思い出して顔が引き攣る。
思わず白い目を向けると、猫宮は俺の想像を裏付けるようにウインクを飛ばした。
「調査報告書は、紙と電子どっちが良い?」
「口頭で結構です」
「冗談だって。それじゃあ、今度の土曜はアイツ借りていくからな」
それだけ言って猫宮は去って行った。
まさか恋人の結婚願望を調べるのに探偵を使う羽目になるとは思ってもいなかったが、この際、細かいことは考えないようにしておこう。
「……」
などと、自分を納得させていたのだが。
きっちり一週間後。妙に畏まった顔をした猫宮が、恭しく紙束を差し出してきた。
「こちら、御依頼の品です」
月島亮介調査報告書。
何だかデジャブ感のある紙束からは、ロクでもない気配しかしない。
「あの……」
「まあまあ、これはサービスだから」
「いや……」
そんなサービス精神はいらないんですけど、という言葉は飲み込んで渋々資料をめくる。
中にはがっつりと酔い潰されたと思しき月島の写真が載せられていた。というか、そればっかりで肝心の報告内容がほとんど記載されていない。
末尾に一筆、「式は挙げた方が良いと思われる」と書かれているのみだ。
「……」
とても元探偵とは思えないやり口と報告内容に、言葉も無く猫宮を見詰める。
これなら俺でもできる、という言葉も飲み込んでおいたのだが、何となく言いたいことは伝わったらしい。
「そんな目で見るなよ……やっぱり細かいことは本人の口から聞いた方がいいと思ってさ」
「はぁ」
「代わりにほら、オマケ付けといたから」
猫宮に促されて、資料編と銘打たれたページを開く。
そこには近隣の式場と相場など、式の準備に役立つ情報がまとめられていた。
「これ完全にオマケが本編じゃないですか」
「亮介の写真、余計だったか?」
「……」
いらないなら返してくれてもいいんだぞ、と言外に滲ませた猫宮を無視して、報告書を懐に仕舞い込む。
泥酔した月島のレア写真は、俺が責任を持って管理しておくとしよう。
猫宮はそんな俺を見て笑うと、最後に一言残して去って行った。
「一度、ゆっくり話を聞いてやってくれよ。自己完結しちゃってるみたいだからさ」
「……分かりました」
猫宮の言葉に神妙に頷いて、自分の課へと戻る。
パソコンの向こうに覗く月島は、いつもと変わらない無表情だ。
しかし、その下にまた何か隠し込んでいるのだろうか。
「亮介……」
そうして物思いに耽っていた俺は、隣から神原が身を乗り出してきていることに気が付かなかった。
「篠崎先輩、どうでした猫宮さんの話は……げっ」
「あ、いや、これは猫宮さんの悪ふざけでな」
俺の手元を覗き込んだ神原が、報告書を見て露骨に嫌な顔をする。
確かに引かれても無理のない題名だが、そこまで辟易とした顔をしなくてもいいのに。何か嫌な思い出でもあるのだろうか。
「猫宮さんに相談するってそういう意味だったったんですね……」
「おい、待て。話を聞け」
「いや、いいんです。本当、お似合いのカップルだと思いますよ。うんうん」
「勝手に納得するな、違うって言ってるだろ!」
神原は、俺と接していると何かが移るとでも言わんばかりに、じりじりと距離を取っていく。
何とか捕まえて弁明を試みたが、俺の話よりも先に昼休みが終わりを迎えるのだった。
◆
月島より、少し早く帰宅したある日のこと。
俺は夕食の準備を済ませて、手持ち無沙汰に猫宮の報告書を読み返していた。
式を挙げるための費用は問題ない。大きな出費だが、俺も年齢相応の貯金は持っている。
事前準備の手間については、大変だが、時期さえ選べばどうにかできるだろう。神原や保坂も手伝うと言ってくれているし、ここは好意に甘えさせてもらうとしよう。
互いの親戚にも既に顔合わせは済ませているので、残る問題と言えば。
「本人の意思、か……」
改めて自問自答する。
式を挙げたいのかと問われれば、どちらでも良いというのが俺の率直な答えだ。
けれども、「せっかくだから挙げておくか」などと軽い気持ちで行えるものではない。
するとやはり、話は振出しに戻る。
「結局、月島の気持ち次第なんだよなぁ」
こればかりは、本人に直接聞くしかないだろう。その本人がなかなか口を割りそうにないのが問題なのだが。
「ただいま、待たせてしまったね」
「おかえり。風呂と飯どっち先にする?」
「ここはやはり、君にすると言うべきシチュエーションかな?」
「軽口叩ける元気が残ってて何よりだ、ばぁか」
結構、先に食事を取ることにした月島と、向かい合って食卓に座る。
温め直した夕食をつまみながら、俺は努めて自然に切り出した。
「この間、結婚式の番組を見てただろ。その時、お前は式を挙げたい訳じゃないって言ってたけどさ、あれは本心なのか?」
「……それは」
「結構、興味ありそうに見えたけどな。俺自身も、全く興味がない訳じゃないんだ。遠慮しないで言ってくれるか?」
極力、優しい声色と表情を作って月島に問いかける。
月島はしばらく悩む素振りを見せていたが、やがて、言葉を選びながらぽつりぽつりと話し始めた。
「とても、独善的な理由だよ」
「何だっていい、聞かせてくれ」
「……その、私たちは男同士で、婚姻届を出すことが出来ないだろう」
「そう、だな」
思わず声のトーンが落ち、月島もつられて目を伏せる。
「周囲にも受け入れられ、君と共に過ごせるだけで本当に幸せだと思う。しかし、もっと強い結び付きが欲しいと考えてしまうのも、また事実なのだ」
「……うん」
「だから、少し、考えてしまったんだ。せめて結婚式という形で、君と将来を契り合うことができたら、と」
「――この野郎、それのどこが独善的な理由なんだよ」
申し訳なさそうに言葉を紡ぐ月島を見ていられず、目の前で俯いた頭をぐしゃぐしゃにかき混ぜる。
箸と茶碗で両手が塞がっている月島は、抵抗もせずにされるがままになっていた。
「だって、君はそんなことを気にしていないだろう? 君は、私の言葉だけで満足してくれているというのに、私は……」
「そこは価値観の違いだろ。確かに俺は気にしていないが、だからと言って、お前も気にするなとは言わないよ。お前が形式を大事にするなら、俺もそうしたい」
「しかし、私の独りよがりに君や皆を付き合わせる訳には……」
「お前の喜ぶ顔が見たいから、俺も式を挙げたい。これで二人よがりだ。いいからやるぞ、絶対やるぞ。お前、親族多いならさっさと招待客名簿用意しろよな」
「……本当にいいのか?」
「これでやらなかったら俺はとんだ甲斐性無しだ。そんな情けない男にさせないでくれ」
あの月島が結婚式などという浮ついたものに興味を持つなんて珍しいと、軽く考えていた自分の胸倉を掴み上げてやりたい。
結婚『式』。そう、儀式なのだ。
婚姻の成立や将来を誓い合うための儀式なのである。
婚姻届という法律上の形で俺たちの関係を証明できないなら、儀式をもって強固な関係を築きたいなんて。そんなことを言われて誰が嫌だと言えよう。
「お前は日本式と西洋式どっち派? 当然、披露宴もやるよな。どうせやるなら盛大にやるぞ」
「あの、聡。その手元の資料は何……カズに何を頼んだのだ」
「招待状とか式場の花とか、装飾に拘りはあるか? 音楽は? 料理はちょっと良いやつにしといた方が格好がつくかな?」
「君が積極的に考えてくれるのは嬉しいのだが一つ聞いてくれ」
「何だ? 何でも言えよな」
月島が遠慮しないよう、微笑みながら言葉を待つ。
月島は、焦りと嬉しさと申し訳なさをない混ぜにした表情で両手を掲げていた。
「ちょっと、落ち着いて欲しい……」
「すまん」
いつの間にか浮かせていた腰を椅子に下ろし、一先ず食事に戻る。
何とも言えない空気での夕食は落ち着かなかったが、悪い気はしなかった。
◆
挙式を決意してから一週間後。
俺たちは互いの親族に結婚の報告をして回っていた。
今日は朝から月島の両親と会い、昼には俺の叔母である葵さんの事務所に向かい、その足で玲二の住むマンションを訪れたところである。
「そういう訳で玲二クン、余興は頼んだぞ」
「よし分かった、兄貴に関する『心温まるエピソード』を語ってやればいいんだろ?」
「それでいい」
「全く良くない」
俺と玲二の会話を聞いた月島が仏頂面で呟く。
玲二の部屋に足を踏み入れてからというものの、ずっとこの調子だ。
一方、玲二は朗らかな笑顔を浮かべていた。
最近、出世をしたらしい玲二の表情は明るく、以前の卑屈な雰囲気は見る影もない。
兄弟関係も大幅に改善され、良い意味で互いに遠慮が無くなり、顔を合わせては仲良く喧嘩しているようである。
「しかし、あの兄貴が結婚かぁ……」
「お前はどうなんだ。誰か、良い人はいないのか」
「兄貴までやめてくれ。そういうことを聞いて来るのは母さんだけで充分だ」
どうやら、兄貴の余波を食らって大層げんなりしているらしい。
確かに玲二の浮いた話は聞いたことがない。本人曰く、今は仕事に集中したいとのことだが。
「それで玲二、式の当日なのだが……」
「分かってるよ、挨拶回りでも案内役でも何でもしてやるさ。何なら事前準備も手伝ってやるよ」
そんな玲二に式の手伝いを頼むのは気が引けたが、月島が水を向けると、意外にも二つ返事で了承された。
一体どういう風の吹き回しなのかと、思わず月島と顔を見合わせる。
「兄貴に貸しを作る滅多にない機会だからな」
それを聞いて大いに納得がいく。
「なるほど。悪いな玲二、俺の分も亮介にツケといてくれ」
「そうしておくよ。別に、聡義兄さんのためなら喜んで働くんだけどな」
「……素直に礼を言い難いところだが、感謝しておこう」
とても人に感謝を伝えているとは思えない表情で、月島が言葉を絞り出す。
苦々しい謝辞を、したり顔で受け止めた玲二は、ふと何かを思いついた様子で天を仰いだ。
「そういえば、これで堂々と聡義兄さんと呼べる訳だ」
「今までも、大して遠慮などしていなかっただろう」
「それは兄貴を嫌がらせるためにわざとやってたからな」
「貴様……」
「落ち着け落ち着け」
仲が良くなったのは結構なのだが、玲二が一言喋る度に月島の眉間の皺が深まっていくのは勘弁して欲しい。
見ている分には愉快なのだが、いつ巻き込まれてもおかしくないと思うと気が気ではない。
「お前たち、もうちょっと穏便に話せないのか?」
「無理」
「こういう時だけ息合わせやがって……」
声を揃えて顔を顰めた兄弟に思わず溜息が零れる。
もしかしたら、俺と月島の間に挟まれている時の神原も同じ気持ちなのかもしれない。
今後からもう少し配慮するとしよう。
俺まで難しい顔で考え込んでいると、玲二は肩をすくめて言った。
「ま、兄貴を揶揄うのもこの辺にしておくよ。出来ることがあったら連絡してくれ、手伝うからさ」
「おう、頼りにしてるぜ」
「……よろしく頼む」
「下手に出る兄貴っていうのも珍しいな」
「おいおい玲二、その辺にしてやってくれ」
ここで口論が始まってしまっては、帰宅が夜になってしまう。
何とか兄弟を諫め、俺は逃げるように玄関に向かった。
月島も続いて席を立ったが、リビングを出る前に玲二が小さく声をかける。
「兄貴、ちょっと」
その声色がいつになく真面目だったので、俺はそのままリビングを離れることにした。
俺が居ては、話し辛いこともあるだろう。
「鈴鹿さんのことだけどさ……」
そう。例えば幼馴染の元カノに関する話とか。
「兄貴のことは俺から伝えておこうと思うんだけど、いいよな」
「……構わない」
「アンタと別れた後もしばらく気にしてたからさ。ちゃんと相手を見つけられたんだって教えてやりたいんだ。鈴鹿さんなら、幼馴染として、御近所さんとして、素直に喜んでくれると思う」
「私も、そう思う。……悪いが頼んだ」
「任されたよ」
そう長くない間に内緒話を終わらせた月島たちは、俺が靴を履き終える頃にやってきた。
「もういいのか?」
「ああ、待たせたね」
俺の手から靴べらを受け取り、月島も支度を整える。
それを横目で見ながら、出て行く前に今一度礼を言っておこうと玲二に向き直った。
「今日は突然邪魔して悪かったな。これから迷惑かけるがよろしく頼むよ」
「構わないって。今度は聡義兄さん一人で来てくれよな」
「誰が行かせるものか」
玲二の軽い挑発に乗った月島が、俺を隠すように目の前に立ちはだかる。
いよいよ収集がつかなくなる予感がして、俺は月島の腕を引いて強引に踵を返した。
広い背を押し出すようにして玄関をくぐり、扉を閉めようとしたその時。
「あー、最後に一つ」
顔も見せずに、わざとらしい声だけが追いかけてきた。
「聡義兄さん。ついでに兄貴も、結婚おめでとう」
「……そういうことは、面と向かって言って欲しいものだ」
素直じゃない玲二に対して月島は呆れてみせているが、その声には隠しきれない喜びが滲んでいる。
眉間に深く刻まれた皺はみるみるうちに解れていき、月島はここにきてようやく、笑顔を浮かべたのであった。
◆
「……」
「どうした、ぼうっとして。緊張しているのか?」
「ああ。いや、大丈夫だ」
月島に声をかけられ、我に返る。
式に至るまでの思い出を少し懐かしむだけのつもりが、随分と長く考え込んでしまっていたようだ。
それだけ、多くの人に支えられてきたという訳である。
「ちょっと式までのことを思い返していたら、思いの外色々あってな」
「そうだね。……ありがたい話だ」
俺の言葉を受けて、月島も何やら遠くを見やる。
口元を綻ばせているところをみると、月島も俺と同じ思いを抱いたのだろうか。
幸せを噛み締めるように笑う月島に、何だか無性に触れたくなって肩を寄せる。
ぴたりと触れ合った腕から布越しにも月島の体温が感じられ、胸の奥がじんわりと温まっていく。
式場の扉を前にして、俺たちはしばしの間、無言で寄り添い合っていた。
「そろそろ出番だよ。準備はいいかい?」
「もちろん」
俺たちの気持ちが整った頃合いを見計らったかのように、式場の扉が開け放たれる。
そうしてすぐに、割れんばかりの拍手に包まれた。
真っ赤な絨毯と、その両脇に並んだ参列者の笑顔を見て、柄にもなく感慨を覚える。
隣を見れば、しゃんと背筋を伸ばした月島と目が合った。
「行こう」
「ああ」
差し出された左腕に、右手を添える。
ベール越しに真っ直ぐと前を見据え、俺たちは足並みを揃えて歩み始めた。
次々とかけられる祝福の言葉に笑みを返しながら、十字架の外された祭壇の前まで歩を進める。
ここに、神はいない。
月島と話し合った結果、俺たちは人前式を執り行うことにしていた。
「本日は、新郎様御両名並びに、御両家、御列席の皆さま、誠におめでとうございます」
司会進行役のスタッフが声を上げたのを合図に、拍手が静まっていく。
打って変わって静まり返った参列者に対して、人前式の説明が始まった。
俺たちがこの場で将来を誓うのは、神でも仏でもない。
お互いと、ここに参列してくれた大切な人たちだ。
「それでは、誓いの言葉を」
説明を終えたスタッフに促され、月島と小さく頷き合う。
そして、まず月島が口火を切った。
「本日、私たち二人は、ここに結婚の誓いをいたします。今日という日を迎えられたのも、未熟な私どもを支えてくださった皆様のおかげです」
一拍置いて、俺も胸を張って口を開く。
「私たちは、将来を約束し合い、二人の新居も構えて新しい生活をさせていただいております。本日は皆様の前で、一層互いの関係を深めるべく、次のことを誓います」
手と手を取り合って、月島と正面から向き合う。
怖いくらい真剣な顔つきをした月島は、厳かに誓いの言葉を述べた。
「私、月島亮介は、聡さんを生涯のパートナーとし、如何なる時も共に歩み、支え合い、愛することを誓います」
それを受けて俺も、心の底から月島に誓う。
「私、篠崎聡は、亮介さんを生涯のパートナーとし、これからも互いを尊重し、信頼し、愛することを誓います」
どちらからともなく、頭を垂れる。
式の台本には無かったが、何故だか身体が勝手に動いていた。
互いに敬意を表し合い、再び参列者へと向き直る。
繋いだ手はそのままに、月島と声を合わせて言う。
「今後何があっても、二人で協力し、繋いだ手を決して離さず、幸せになる事を誓います。この場に御列席くださった皆様が、その証人です」
誓いを終え、深々と腰を折ると、会場は温かい拍手に包まれた。
時折、啜り泣くような声も聞こえてきて、こちらまで釣られて涙腺が緩みそうになってしまう。
そんな中、一際ひどい声が俺の耳に届いた。
「篠崎先輩ぃぃおめでとうございますぅッ!」
「いやお前かよ」
顔を上げた先にぐずぐずに泣き崩れた神原がいて、思わず笑ってしまう。
参列者が主役を食う勢いで泣くんじゃない。俺の立場も考えてくれ。
周囲が苦笑する勢いで泣き崩れる神原の姿が面白くて、笑って、笑い過ぎて、とうとう涙が零れてきてしまった。
「馬鹿だなぁ、もう」
神原に泣かされたとあっては一生の恥だ。
今はベールに隠されていて良かった。それも、じきに取り払われてしまうのだが。
「聡、書けるか?」
「へーき」
滲む視界の中、月島に支えられて何とか結婚証明書への記名を済ませる。
震える指先でペンを置くと、式が進み、ついにベールに手がかけられた。
まるで割れ物を扱うかのようにゆっくりと、慎重にベールが捲り上げられていく。
遮る物の無くなった視界では、涙を流す姿さえ様になっている男が、光を背負って立っていた。
「綺麗だよ」
お前もな、とは流石に言えず、曖昧に微笑むのみに留める。
いつの間にか静けさを取り戻していた式場の中で、しばし、時も忘れて見詰め合っていた。
「誓いの口付けを」
その言葉で我に返り、瞼を閉じる。
月島の大きく暖かい手が頬に添えられ、一拍遅れて、唇に柔らかい感触が訪れた。
キスなんて、もう数えきれないほど交わしている。
それでも、これは特別だった。
自分でも意外なほど、多幸感が溢れてくる。
今、月島も、この想いを共有してくれているのだろうか。
「亮介」
唇が離れていく刹那、小さく呼び止める。
「今、幸せか?」
拍手に掻き消されそうになりながら投げかけた問いに、月島は満面の笑みをもって応えた。
「――ああ。世界で一番、幸せだ!」
鏡に映った自分は、花嫁とも花婿とも言えない姿で佇んでいた。
「聡」
甘い声に振り向けば、間髪入れずに唇をついばまれる。
もとより垂れ目がちな瞳を更に緩ませた月島は、同じデザインのタキシードに身を包み、柔らかく微笑んでいた。
「とても綺麗だ」
「お前も、憎たらしいほど似合っているよ」
差し出された手を握り返し、スタッフの誘導に従って控室を後にする。
式場へ向かう道中、俺はふと三ヶ月前のことを思い出していた。
これほど幸せな気分になれるのなら、あの日、神原に口を滑らせて良かったと。
◆
三ヶ月前。
リビングで読書に勤しむ俺の横で、月島が何やら熱心にテレビを見詰めていた。
その様子が珍しくて顔を上げる。そして思わず面食らった。
ブライダル特集。
そう大々的に銘打たれた番組では、新婚の夫婦が仲睦まじくインタビューを受けていた。
「意外だな、こういうの興味あるのか?」
「……無くはない」
月島の答えに益々目を見張る。
この返しは、興味津々ということだ。月島基準では。
その証拠に、月島は澄ました顔をしながらも、一向に画面から視線を外そうとしない。
「結婚式か……」
正直、自分には縁の無い話だと思っていた。元から誰とも結婚する気が無かった上に、月島と付き合った後も、男同士で結婚式を挙げるという発想が無かったのだ。
月島の方も興味は無いとばかり思っていたが、俺の思い違いだったようである。
そんな願いがあるのなら、叶えてやるのもやぶさかではないのだが。
「別に、式を挙げたいという訳ではないよ。準備も大変だし、費用もかかるしね。ただ、君のタキシード姿は見てみたいと思ったのだ」
「ほほう」
「きっと、よく似合うのだろうな」
何処か遠くを見るような月島の表情に胸を締め付けられる。気付けば、俺は動揺も露にこう口走っていた。
「タキシードを着るだけなら、別に式を挙げなくてもできるだろ? ほら、記念写真だけでも撮れるみたいだし」
今の話は先程の番組から得た情報だ。付け焼き刃もいいところな知識だったが、月島の顔を晴れさせるには足りたようだ。
「そうだね。無理に形に拘らなくても、君との思い出が残せれば充分だ」
「だよな……?」
月島の言葉に相槌を打ちながらも、俺は何か引っかかる物を感じていた。
にこにこと笑う月島の態度はいつもと変わらない。それでも、何処か未練のようなものを感じてしまうのは俺の気のせいだろうか。
神原と話をしたのは、そんなやり取りをした翌日のことだった。
「そういう訳でさ、今度タキシードを着ることになったんだよ」
「え、篠崎先輩が!? いやぁ人は変わりますね」
世間話の一環として先日のやり取りを持ち出したところ、何故か神原は大袈裟に驚きの声を上げた。
どうやら何か勘違いをしているらしい。
「ちゃんと式には僕も呼んでくださいよ!」
「いや、盛り上がってるとこ悪いが写真を撮るだけなんだ」
「は!? 何言ってるんですかあんた!?」
今度は満面の笑みを一瞬で顰めて叫ぶ。忙しい奴だ。
「ついにあんた呼ばわりか……何かどんどん俺の扱いが雑になっていないか?」
「そんなこと今はどうでもいいんです。それより、何で今の流れで式を挙げない結論になるんですか!」
「え? いやだって忙しいし……アイツもそこまで拘ってないだろ」
「滅茶苦茶拘ってますよ! ねっ、保坂さん!」
「ああ、それはもう未練たらたらだな」
神原の振りに応えて保坂が大仰に頷く。社員旅行で幹事を共にこなした二人は、その後も仲良く過ごしているようだ。
俺としても気の置けない二人であるため、三人でつるむ機会は少なくないのだが、それでも広報課の保坂が経営企画課まで出張って来ている現状は解せない。
「何でお前がこんな所にいるんだよ」
「スクープの匂いがした」
「馬鹿言えよ」
「いやいや、社員の結婚出産は社報に載っけてるだろー?」
言われてみればそうだった気もする。
正直、さほど興味を持っていなかったので曖昧な記憶しか残っていなかったが、広報課職員の手前それは黙っておくことにした。
「お前の写真も撮るから式には呼べよな!」
「だから挙げないって」
「往生際の悪い奴だな、大人しく祝福されろ」
「そんな横暴な」
本当に祝福する気があるのか怪しい保坂の言に苦く笑う。
しかし、冗談と受け止めた俺とは裏腹に、保坂と神原は真面目な表情をしていた。
「人生の一大イベントですし、嫌でなければやっておいた方がいいんじゃないですか?」
「そうだそうだ。お前、相手が相手なら破局の危機だぞ」
「は、破局?」
不穏な単語を耳にして鼻白む。
俺の動揺を他所に、神原と保坂は神妙に頷き合っていた。
「いいですか、篠崎先輩。価値観は人それぞれですが、結婚という人生の節目をとても大事にしている人もいるんです。月島さんがそうだった場合、先輩の行動次第では後に禍根を残す可能性もありますよ」
「月島の性格なら面と向かってお前に文句を言ってはこないだろうが、隠れて落ち込むくらいはするんじゃないか。あれは引きずるタイプだぞ、絶対」
妙に実感の篭もった言葉だ。まだ未婚の筈の二人に何があったのだろうか。
「僕の姉は、同じような話で破局寸前まで行きました」
「俺は彼女に似たようなことをやらかして破局した」
「お、おう……」
咄嗟に言葉が浮かばないが、保坂に関しては御愁傷様と言っておこう。
いずれにせよ、深く考えなければならない問題だということはよく分かった。
差し当たっては、月島を昔から知る人物に話を聞いてみることにしようか。
「それで俺のところに来たのか」
「はい、猫宮さんは月島の昔馴染みですし、御結婚もされているので是非相談に乗っていただきたくて」
打ち合わせにかこつけて猫宮を引っ張り出し、月島の話を持ちかけたところ、猫宮は困り顔で天井を見上げた。
「頼りにしてもらって悪いが、月島とそんな話をしたことはないなぁ」
「猫宮さんが結婚すると聞いても変わりはありませんでしたか? 例えば、羨ましそうにしてたりとか、寂しそうにしてたりとか……」
「いや、いつもどおりだったと思う」
「……そうですか」
どうやら当てが外れてしまったようだ。
こうなったら本人にそれとなく聞いてみようかと思案していたところ、猫宮が悪戯っぽく笑いながら言った。
「そんな顔をするな。他でもない大事な弟分の話なら、俺も無関係じゃない。一週間もらえるか?」
「はい、何をする気……ま、まさか」
含みのある言葉に、猫宮の前職を思い出して顔が引き攣る。
思わず白い目を向けると、猫宮は俺の想像を裏付けるようにウインクを飛ばした。
「調査報告書は、紙と電子どっちが良い?」
「口頭で結構です」
「冗談だって。それじゃあ、今度の土曜はアイツ借りていくからな」
それだけ言って猫宮は去って行った。
まさか恋人の結婚願望を調べるのに探偵を使う羽目になるとは思ってもいなかったが、この際、細かいことは考えないようにしておこう。
「……」
などと、自分を納得させていたのだが。
きっちり一週間後。妙に畏まった顔をした猫宮が、恭しく紙束を差し出してきた。
「こちら、御依頼の品です」
月島亮介調査報告書。
何だかデジャブ感のある紙束からは、ロクでもない気配しかしない。
「あの……」
「まあまあ、これはサービスだから」
「いや……」
そんなサービス精神はいらないんですけど、という言葉は飲み込んで渋々資料をめくる。
中にはがっつりと酔い潰されたと思しき月島の写真が載せられていた。というか、そればっかりで肝心の報告内容がほとんど記載されていない。
末尾に一筆、「式は挙げた方が良いと思われる」と書かれているのみだ。
「……」
とても元探偵とは思えないやり口と報告内容に、言葉も無く猫宮を見詰める。
これなら俺でもできる、という言葉も飲み込んでおいたのだが、何となく言いたいことは伝わったらしい。
「そんな目で見るなよ……やっぱり細かいことは本人の口から聞いた方がいいと思ってさ」
「はぁ」
「代わりにほら、オマケ付けといたから」
猫宮に促されて、資料編と銘打たれたページを開く。
そこには近隣の式場と相場など、式の準備に役立つ情報がまとめられていた。
「これ完全にオマケが本編じゃないですか」
「亮介の写真、余計だったか?」
「……」
いらないなら返してくれてもいいんだぞ、と言外に滲ませた猫宮を無視して、報告書を懐に仕舞い込む。
泥酔した月島のレア写真は、俺が責任を持って管理しておくとしよう。
猫宮はそんな俺を見て笑うと、最後に一言残して去って行った。
「一度、ゆっくり話を聞いてやってくれよ。自己完結しちゃってるみたいだからさ」
「……分かりました」
猫宮の言葉に神妙に頷いて、自分の課へと戻る。
パソコンの向こうに覗く月島は、いつもと変わらない無表情だ。
しかし、その下にまた何か隠し込んでいるのだろうか。
「亮介……」
そうして物思いに耽っていた俺は、隣から神原が身を乗り出してきていることに気が付かなかった。
「篠崎先輩、どうでした猫宮さんの話は……げっ」
「あ、いや、これは猫宮さんの悪ふざけでな」
俺の手元を覗き込んだ神原が、報告書を見て露骨に嫌な顔をする。
確かに引かれても無理のない題名だが、そこまで辟易とした顔をしなくてもいいのに。何か嫌な思い出でもあるのだろうか。
「猫宮さんに相談するってそういう意味だったったんですね……」
「おい、待て。話を聞け」
「いや、いいんです。本当、お似合いのカップルだと思いますよ。うんうん」
「勝手に納得するな、違うって言ってるだろ!」
神原は、俺と接していると何かが移るとでも言わんばかりに、じりじりと距離を取っていく。
何とか捕まえて弁明を試みたが、俺の話よりも先に昼休みが終わりを迎えるのだった。
◆
月島より、少し早く帰宅したある日のこと。
俺は夕食の準備を済ませて、手持ち無沙汰に猫宮の報告書を読み返していた。
式を挙げるための費用は問題ない。大きな出費だが、俺も年齢相応の貯金は持っている。
事前準備の手間については、大変だが、時期さえ選べばどうにかできるだろう。神原や保坂も手伝うと言ってくれているし、ここは好意に甘えさせてもらうとしよう。
互いの親戚にも既に顔合わせは済ませているので、残る問題と言えば。
「本人の意思、か……」
改めて自問自答する。
式を挙げたいのかと問われれば、どちらでも良いというのが俺の率直な答えだ。
けれども、「せっかくだから挙げておくか」などと軽い気持ちで行えるものではない。
するとやはり、話は振出しに戻る。
「結局、月島の気持ち次第なんだよなぁ」
こればかりは、本人に直接聞くしかないだろう。その本人がなかなか口を割りそうにないのが問題なのだが。
「ただいま、待たせてしまったね」
「おかえり。風呂と飯どっち先にする?」
「ここはやはり、君にすると言うべきシチュエーションかな?」
「軽口叩ける元気が残ってて何よりだ、ばぁか」
結構、先に食事を取ることにした月島と、向かい合って食卓に座る。
温め直した夕食をつまみながら、俺は努めて自然に切り出した。
「この間、結婚式の番組を見てただろ。その時、お前は式を挙げたい訳じゃないって言ってたけどさ、あれは本心なのか?」
「……それは」
「結構、興味ありそうに見えたけどな。俺自身も、全く興味がない訳じゃないんだ。遠慮しないで言ってくれるか?」
極力、優しい声色と表情を作って月島に問いかける。
月島はしばらく悩む素振りを見せていたが、やがて、言葉を選びながらぽつりぽつりと話し始めた。
「とても、独善的な理由だよ」
「何だっていい、聞かせてくれ」
「……その、私たちは男同士で、婚姻届を出すことが出来ないだろう」
「そう、だな」
思わず声のトーンが落ち、月島もつられて目を伏せる。
「周囲にも受け入れられ、君と共に過ごせるだけで本当に幸せだと思う。しかし、もっと強い結び付きが欲しいと考えてしまうのも、また事実なのだ」
「……うん」
「だから、少し、考えてしまったんだ。せめて結婚式という形で、君と将来を契り合うことができたら、と」
「――この野郎、それのどこが独善的な理由なんだよ」
申し訳なさそうに言葉を紡ぐ月島を見ていられず、目の前で俯いた頭をぐしゃぐしゃにかき混ぜる。
箸と茶碗で両手が塞がっている月島は、抵抗もせずにされるがままになっていた。
「だって、君はそんなことを気にしていないだろう? 君は、私の言葉だけで満足してくれているというのに、私は……」
「そこは価値観の違いだろ。確かに俺は気にしていないが、だからと言って、お前も気にするなとは言わないよ。お前が形式を大事にするなら、俺もそうしたい」
「しかし、私の独りよがりに君や皆を付き合わせる訳には……」
「お前の喜ぶ顔が見たいから、俺も式を挙げたい。これで二人よがりだ。いいからやるぞ、絶対やるぞ。お前、親族多いならさっさと招待客名簿用意しろよな」
「……本当にいいのか?」
「これでやらなかったら俺はとんだ甲斐性無しだ。そんな情けない男にさせないでくれ」
あの月島が結婚式などという浮ついたものに興味を持つなんて珍しいと、軽く考えていた自分の胸倉を掴み上げてやりたい。
結婚『式』。そう、儀式なのだ。
婚姻の成立や将来を誓い合うための儀式なのである。
婚姻届という法律上の形で俺たちの関係を証明できないなら、儀式をもって強固な関係を築きたいなんて。そんなことを言われて誰が嫌だと言えよう。
「お前は日本式と西洋式どっち派? 当然、披露宴もやるよな。どうせやるなら盛大にやるぞ」
「あの、聡。その手元の資料は何……カズに何を頼んだのだ」
「招待状とか式場の花とか、装飾に拘りはあるか? 音楽は? 料理はちょっと良いやつにしといた方が格好がつくかな?」
「君が積極的に考えてくれるのは嬉しいのだが一つ聞いてくれ」
「何だ? 何でも言えよな」
月島が遠慮しないよう、微笑みながら言葉を待つ。
月島は、焦りと嬉しさと申し訳なさをない混ぜにした表情で両手を掲げていた。
「ちょっと、落ち着いて欲しい……」
「すまん」
いつの間にか浮かせていた腰を椅子に下ろし、一先ず食事に戻る。
何とも言えない空気での夕食は落ち着かなかったが、悪い気はしなかった。
◆
挙式を決意してから一週間後。
俺たちは互いの親族に結婚の報告をして回っていた。
今日は朝から月島の両親と会い、昼には俺の叔母である葵さんの事務所に向かい、その足で玲二の住むマンションを訪れたところである。
「そういう訳で玲二クン、余興は頼んだぞ」
「よし分かった、兄貴に関する『心温まるエピソード』を語ってやればいいんだろ?」
「それでいい」
「全く良くない」
俺と玲二の会話を聞いた月島が仏頂面で呟く。
玲二の部屋に足を踏み入れてからというものの、ずっとこの調子だ。
一方、玲二は朗らかな笑顔を浮かべていた。
最近、出世をしたらしい玲二の表情は明るく、以前の卑屈な雰囲気は見る影もない。
兄弟関係も大幅に改善され、良い意味で互いに遠慮が無くなり、顔を合わせては仲良く喧嘩しているようである。
「しかし、あの兄貴が結婚かぁ……」
「お前はどうなんだ。誰か、良い人はいないのか」
「兄貴までやめてくれ。そういうことを聞いて来るのは母さんだけで充分だ」
どうやら、兄貴の余波を食らって大層げんなりしているらしい。
確かに玲二の浮いた話は聞いたことがない。本人曰く、今は仕事に集中したいとのことだが。
「それで玲二、式の当日なのだが……」
「分かってるよ、挨拶回りでも案内役でも何でもしてやるさ。何なら事前準備も手伝ってやるよ」
そんな玲二に式の手伝いを頼むのは気が引けたが、月島が水を向けると、意外にも二つ返事で了承された。
一体どういう風の吹き回しなのかと、思わず月島と顔を見合わせる。
「兄貴に貸しを作る滅多にない機会だからな」
それを聞いて大いに納得がいく。
「なるほど。悪いな玲二、俺の分も亮介にツケといてくれ」
「そうしておくよ。別に、聡義兄さんのためなら喜んで働くんだけどな」
「……素直に礼を言い難いところだが、感謝しておこう」
とても人に感謝を伝えているとは思えない表情で、月島が言葉を絞り出す。
苦々しい謝辞を、したり顔で受け止めた玲二は、ふと何かを思いついた様子で天を仰いだ。
「そういえば、これで堂々と聡義兄さんと呼べる訳だ」
「今までも、大して遠慮などしていなかっただろう」
「それは兄貴を嫌がらせるためにわざとやってたからな」
「貴様……」
「落ち着け落ち着け」
仲が良くなったのは結構なのだが、玲二が一言喋る度に月島の眉間の皺が深まっていくのは勘弁して欲しい。
見ている分には愉快なのだが、いつ巻き込まれてもおかしくないと思うと気が気ではない。
「お前たち、もうちょっと穏便に話せないのか?」
「無理」
「こういう時だけ息合わせやがって……」
声を揃えて顔を顰めた兄弟に思わず溜息が零れる。
もしかしたら、俺と月島の間に挟まれている時の神原も同じ気持ちなのかもしれない。
今後からもう少し配慮するとしよう。
俺まで難しい顔で考え込んでいると、玲二は肩をすくめて言った。
「ま、兄貴を揶揄うのもこの辺にしておくよ。出来ることがあったら連絡してくれ、手伝うからさ」
「おう、頼りにしてるぜ」
「……よろしく頼む」
「下手に出る兄貴っていうのも珍しいな」
「おいおい玲二、その辺にしてやってくれ」
ここで口論が始まってしまっては、帰宅が夜になってしまう。
何とか兄弟を諫め、俺は逃げるように玄関に向かった。
月島も続いて席を立ったが、リビングを出る前に玲二が小さく声をかける。
「兄貴、ちょっと」
その声色がいつになく真面目だったので、俺はそのままリビングを離れることにした。
俺が居ては、話し辛いこともあるだろう。
「鈴鹿さんのことだけどさ……」
そう。例えば幼馴染の元カノに関する話とか。
「兄貴のことは俺から伝えておこうと思うんだけど、いいよな」
「……構わない」
「アンタと別れた後もしばらく気にしてたからさ。ちゃんと相手を見つけられたんだって教えてやりたいんだ。鈴鹿さんなら、幼馴染として、御近所さんとして、素直に喜んでくれると思う」
「私も、そう思う。……悪いが頼んだ」
「任されたよ」
そう長くない間に内緒話を終わらせた月島たちは、俺が靴を履き終える頃にやってきた。
「もういいのか?」
「ああ、待たせたね」
俺の手から靴べらを受け取り、月島も支度を整える。
それを横目で見ながら、出て行く前に今一度礼を言っておこうと玲二に向き直った。
「今日は突然邪魔して悪かったな。これから迷惑かけるがよろしく頼むよ」
「構わないって。今度は聡義兄さん一人で来てくれよな」
「誰が行かせるものか」
玲二の軽い挑発に乗った月島が、俺を隠すように目の前に立ちはだかる。
いよいよ収集がつかなくなる予感がして、俺は月島の腕を引いて強引に踵を返した。
広い背を押し出すようにして玄関をくぐり、扉を閉めようとしたその時。
「あー、最後に一つ」
顔も見せずに、わざとらしい声だけが追いかけてきた。
「聡義兄さん。ついでに兄貴も、結婚おめでとう」
「……そういうことは、面と向かって言って欲しいものだ」
素直じゃない玲二に対して月島は呆れてみせているが、その声には隠しきれない喜びが滲んでいる。
眉間に深く刻まれた皺はみるみるうちに解れていき、月島はここにきてようやく、笑顔を浮かべたのであった。
◆
「……」
「どうした、ぼうっとして。緊張しているのか?」
「ああ。いや、大丈夫だ」
月島に声をかけられ、我に返る。
式に至るまでの思い出を少し懐かしむだけのつもりが、随分と長く考え込んでしまっていたようだ。
それだけ、多くの人に支えられてきたという訳である。
「ちょっと式までのことを思い返していたら、思いの外色々あってな」
「そうだね。……ありがたい話だ」
俺の言葉を受けて、月島も何やら遠くを見やる。
口元を綻ばせているところをみると、月島も俺と同じ思いを抱いたのだろうか。
幸せを噛み締めるように笑う月島に、何だか無性に触れたくなって肩を寄せる。
ぴたりと触れ合った腕から布越しにも月島の体温が感じられ、胸の奥がじんわりと温まっていく。
式場の扉を前にして、俺たちはしばしの間、無言で寄り添い合っていた。
「そろそろ出番だよ。準備はいいかい?」
「もちろん」
俺たちの気持ちが整った頃合いを見計らったかのように、式場の扉が開け放たれる。
そうしてすぐに、割れんばかりの拍手に包まれた。
真っ赤な絨毯と、その両脇に並んだ参列者の笑顔を見て、柄にもなく感慨を覚える。
隣を見れば、しゃんと背筋を伸ばした月島と目が合った。
「行こう」
「ああ」
差し出された左腕に、右手を添える。
ベール越しに真っ直ぐと前を見据え、俺たちは足並みを揃えて歩み始めた。
次々とかけられる祝福の言葉に笑みを返しながら、十字架の外された祭壇の前まで歩を進める。
ここに、神はいない。
月島と話し合った結果、俺たちは人前式を執り行うことにしていた。
「本日は、新郎様御両名並びに、御両家、御列席の皆さま、誠におめでとうございます」
司会進行役のスタッフが声を上げたのを合図に、拍手が静まっていく。
打って変わって静まり返った参列者に対して、人前式の説明が始まった。
俺たちがこの場で将来を誓うのは、神でも仏でもない。
お互いと、ここに参列してくれた大切な人たちだ。
「それでは、誓いの言葉を」
説明を終えたスタッフに促され、月島と小さく頷き合う。
そして、まず月島が口火を切った。
「本日、私たち二人は、ここに結婚の誓いをいたします。今日という日を迎えられたのも、未熟な私どもを支えてくださった皆様のおかげです」
一拍置いて、俺も胸を張って口を開く。
「私たちは、将来を約束し合い、二人の新居も構えて新しい生活をさせていただいております。本日は皆様の前で、一層互いの関係を深めるべく、次のことを誓います」
手と手を取り合って、月島と正面から向き合う。
怖いくらい真剣な顔つきをした月島は、厳かに誓いの言葉を述べた。
「私、月島亮介は、聡さんを生涯のパートナーとし、如何なる時も共に歩み、支え合い、愛することを誓います」
それを受けて俺も、心の底から月島に誓う。
「私、篠崎聡は、亮介さんを生涯のパートナーとし、これからも互いを尊重し、信頼し、愛することを誓います」
どちらからともなく、頭を垂れる。
式の台本には無かったが、何故だか身体が勝手に動いていた。
互いに敬意を表し合い、再び参列者へと向き直る。
繋いだ手はそのままに、月島と声を合わせて言う。
「今後何があっても、二人で協力し、繋いだ手を決して離さず、幸せになる事を誓います。この場に御列席くださった皆様が、その証人です」
誓いを終え、深々と腰を折ると、会場は温かい拍手に包まれた。
時折、啜り泣くような声も聞こえてきて、こちらまで釣られて涙腺が緩みそうになってしまう。
そんな中、一際ひどい声が俺の耳に届いた。
「篠崎先輩ぃぃおめでとうございますぅッ!」
「いやお前かよ」
顔を上げた先にぐずぐずに泣き崩れた神原がいて、思わず笑ってしまう。
参列者が主役を食う勢いで泣くんじゃない。俺の立場も考えてくれ。
周囲が苦笑する勢いで泣き崩れる神原の姿が面白くて、笑って、笑い過ぎて、とうとう涙が零れてきてしまった。
「馬鹿だなぁ、もう」
神原に泣かされたとあっては一生の恥だ。
今はベールに隠されていて良かった。それも、じきに取り払われてしまうのだが。
「聡、書けるか?」
「へーき」
滲む視界の中、月島に支えられて何とか結婚証明書への記名を済ませる。
震える指先でペンを置くと、式が進み、ついにベールに手がかけられた。
まるで割れ物を扱うかのようにゆっくりと、慎重にベールが捲り上げられていく。
遮る物の無くなった視界では、涙を流す姿さえ様になっている男が、光を背負って立っていた。
「綺麗だよ」
お前もな、とは流石に言えず、曖昧に微笑むのみに留める。
いつの間にか静けさを取り戻していた式場の中で、しばし、時も忘れて見詰め合っていた。
「誓いの口付けを」
その言葉で我に返り、瞼を閉じる。
月島の大きく暖かい手が頬に添えられ、一拍遅れて、唇に柔らかい感触が訪れた。
キスなんて、もう数えきれないほど交わしている。
それでも、これは特別だった。
自分でも意外なほど、多幸感が溢れてくる。
今、月島も、この想いを共有してくれているのだろうか。
「亮介」
唇が離れていく刹那、小さく呼び止める。
「今、幸せか?」
拍手に掻き消されそうになりながら投げかけた問いに、月島は満面の笑みをもって応えた。
「――ああ。世界で一番、幸せだ!」
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今日の朝にこの作品を見つけて一気読みしました。
とても好きなお話です。
素敵な作品を読ませてもらいありがとうございます😊
この文量を一気読み…!?
コメントいただいた時間を見て驚きました、朝から晩までがっつり読んでもらえて嬉しいです(笑)
感想までありがとうございます!好きと言ってもらえて嬉しいです!
最終話、お疲れ様でした。
ずっと楽しみに読ませていただきました。ありがとうございました☺️
この二人、大好きです。二人とも相性最高で最悪の相手に出会えてよかったね、幸せになってね…!!
続きのエピソードなどありましたら、お待ちしています🙇🏻♀️
完結までお付き合いいただきありがとうございました!感想がすごい励みになりました!
二人を気に入ってもらえて嬉しいです😊
少し間は空いてしまいますが、落ち着いたらその後のお話も載せていきたいと思いますので、その時はまたよろしくお願いします!