4 / 40
留守中の急用
「アンナ様、実はベン様に火急の用がございまして」
封筒を届けた後、家臣の一人が私の元へ駆け込んできます。
その様子からはただならぬ雰囲気を感じます。
「ですが、ベン様は現在急な用事とのことで」
「そうなのです。ですから代わりにアンナ様に相談したいことがありまして」
私は父であるスペンサー公爵が辣腕を振るっているせいか、このように時々ベンの家臣の方々からも相談を受けることがありました。
「一体何でしょう?」
「それがベン様の取引相手の商人の方から、頼まれていた物を運んでいたところ途中で賊に襲われてしまって、一部が奪われてしまったと連絡が。今から追加で用意することも出来るが、期日には間に合わないけどどうしたものかと」
確かに用事中のベンの元に押しかけてまで知らせるほどの用件ではなく、私で事足りる件かもしれません。
「なるほど、そもそも一体何を頼んでいたのです?」
「今度ベン様が主催するパーティーで使う食材一式です。途中で兵士がかけつけたため、半分ほどは無事とのことですが」
「分かりました、でしたら……」
そこまで言って私はふと口をつぐみます。
パーティーは期日が決まっているため、その商人に頼んでパーティーの後に不足分が届いても意味がありません。ですからすぐに奪われてしまったものを他の商人に頼みなおし、さらに賊がいるようであればその地域に兵士を派遣して……
と思ったのですが、このようなことを勝手に決めてはまたベンに怒られてしまいます。
「いえ、やはりあまり勝手に決めるのはよくないことです」
「なるほど……でしたら公爵閣下に相談した方がいいですかね?」
確かにアスカム公爵に尋ねるのが一番確実でしょう。しかしこれはベンが主催するパーティーのこと。それについて公爵に相談すれば、ベンはいつまでも一人立ち出来ない存在だと思われてしまうかもしれません。そうなればまたベンは私に対して文句を言うでしょう。
私から「相談した方がいい」「しない方がいい」のどちらを言っても後でベンに怒られる可能性があります。
「さあ……すみませんが、私がベンさんのことにあまり口を出し過ぎて怒られてしるのです。ですから私からはあまり言えません」
「え、アンナ様も同じですか!?」
それを聞いた家臣も驚きます。
「実は我らも元々公爵閣下に仕えていたもので、公爵閣下は我らにある程度のことは自力で判断するようおっしゃっていたのですが、その時と同じようにするとしばしば怒られていたのです。それでせめてアンナ様に相談しようと思っていたのですが」
「すみません、私も似たような感じで……」
まさか私だけではなく家臣たちも似たようなことを考えていたとは。
それを聞いて私は内心不安になりますが、とはいえどうすることも出来ません。
「まあそういうことでしたらベン様のお帰りを待ってから改めて指示を仰ごうと思います」
「……それがいいのかもしれませんね」
本当は期日が決まっていることであればすぐに対処した方がいいかもしれませんが、それでまたベンに怒られるのはごめんです。
そう思って私はあえてそれ以上のことを彼に言うのはやめるのでした。
封筒を届けた後、家臣の一人が私の元へ駆け込んできます。
その様子からはただならぬ雰囲気を感じます。
「ですが、ベン様は現在急な用事とのことで」
「そうなのです。ですから代わりにアンナ様に相談したいことがありまして」
私は父であるスペンサー公爵が辣腕を振るっているせいか、このように時々ベンの家臣の方々からも相談を受けることがありました。
「一体何でしょう?」
「それがベン様の取引相手の商人の方から、頼まれていた物を運んでいたところ途中で賊に襲われてしまって、一部が奪われてしまったと連絡が。今から追加で用意することも出来るが、期日には間に合わないけどどうしたものかと」
確かに用事中のベンの元に押しかけてまで知らせるほどの用件ではなく、私で事足りる件かもしれません。
「なるほど、そもそも一体何を頼んでいたのです?」
「今度ベン様が主催するパーティーで使う食材一式です。途中で兵士がかけつけたため、半分ほどは無事とのことですが」
「分かりました、でしたら……」
そこまで言って私はふと口をつぐみます。
パーティーは期日が決まっているため、その商人に頼んでパーティーの後に不足分が届いても意味がありません。ですからすぐに奪われてしまったものを他の商人に頼みなおし、さらに賊がいるようであればその地域に兵士を派遣して……
と思ったのですが、このようなことを勝手に決めてはまたベンに怒られてしまいます。
「いえ、やはりあまり勝手に決めるのはよくないことです」
「なるほど……でしたら公爵閣下に相談した方がいいですかね?」
確かにアスカム公爵に尋ねるのが一番確実でしょう。しかしこれはベンが主催するパーティーのこと。それについて公爵に相談すれば、ベンはいつまでも一人立ち出来ない存在だと思われてしまうかもしれません。そうなればまたベンは私に対して文句を言うでしょう。
私から「相談した方がいい」「しない方がいい」のどちらを言っても後でベンに怒られる可能性があります。
「さあ……すみませんが、私がベンさんのことにあまり口を出し過ぎて怒られてしるのです。ですから私からはあまり言えません」
「え、アンナ様も同じですか!?」
それを聞いた家臣も驚きます。
「実は我らも元々公爵閣下に仕えていたもので、公爵閣下は我らにある程度のことは自力で判断するようおっしゃっていたのですが、その時と同じようにするとしばしば怒られていたのです。それでせめてアンナ様に相談しようと思っていたのですが」
「すみません、私も似たような感じで……」
まさか私だけではなく家臣たちも似たようなことを考えていたとは。
それを聞いて私は内心不安になりますが、とはいえどうすることも出来ません。
「まあそういうことでしたらベン様のお帰りを待ってから改めて指示を仰ごうと思います」
「……それがいいのかもしれませんね」
本当は期日が決まっていることであればすぐに対処した方がいいかもしれませんが、それでまたベンに怒られるのはごめんです。
そう思って私はあえてそれ以上のことを彼に言うのはやめるのでした。
あなたにおすすめの小説
【完結】離縁したいのなら、もっと穏便な方法もありましたのに。では、徹底的にやらせて頂きますね
との
恋愛
離婚したいのですか? 喜んでお受けします。
でも、本当に大丈夫なんでしょうか?
伯爵様・・自滅の道を行ってません?
まあ、徹底的にやらせて頂くだけですが。
収納スキル持ちの主人公と、錬金術師と異名をとる父親が爆走します。
(父さんの今の顔を見たらフリーカンパニーの団長も怯えるわ。ちっちゃい頃の私だったら確実に泣いてる)
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
32話、完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・
【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます
との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。
(さて、さっさと逃げ出すわよ)
公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。
リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。
どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。
結婚を申し込まれても・・
「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」
「「はあ? そこ?」」
ーーーーーー
設定かなりゆるゆる?
第一章完結
【完結】婚約者取り替えっこしてあげる。子爵令息より王太子の方がいいでしょ?
との
恋愛
「取り替えっこしようね」
またいつもの妹の我儘がはじまりました。
自分勝手な妹にも家族の横暴にも、もう我慢の限界!
逃げ出した先で素敵な出会いを経験しました。
幸せ掴みます。
筋肉ムキムキのオネエ様から一言・・。
「可愛いは正義なの!」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済み
R15は念の為・・
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
【完】初夜寸前で「君を愛するつもりはない」と言われました。つもりってなんですか?
迦陵 れん
恋愛
侯爵家跡取りのクロディーヌと、公爵家三男のアストルは政略結婚といえども、幸せな結婚をした。
婚約者時代から日々お互いを想い合い、記念日にはプレゼントを交換し合って──。
なのに、記念すべき結婚初夜で、晴れて夫となったアストルが口にしたのは「君を愛するつもりはない」という言葉。
何故? どうして? クロディーヌは混乱に陥るも、アストルの真意は掴めない。
一方で、巷の恋愛小説ばりの言葉を放ったアストルも、悶々とした気持ちを抱えていて──。
政略で結ばれた婚約でありながら奇跡的に両想いとなった二人が、幸せの絶頂である筈の結婚を機に仲違い。
周囲に翻弄されつつ、徐々に信頼を取り戻していくお話です。
元鞘が嫌いな方はごめんなさい。いろんなパターンで思い付くままに書いてます。
楽しんでもらえたら嬉しいです。
世界の現実は、理不尽で残酷だ――平等など存在しない
こもど
恋愛
「学園内は、身分に関係なく平等であるべきです」
その“正義”が、王国を崩しかけた。
王太子ルイスは、貴族学院で平民出身の聖女マリアがいじめられたと信じ、
婚約者である公爵令嬢アリエノール・ダキテーヌを断罪し、婚約破棄を宣言する。
だが――
たとえそれが事実であったとしても、
それは婚約破棄の正当な理由にはならなかった。
貴族社会において、婚約とは恋愛ではない。
それは契約であり、権力であり、国家の均衡そのものだ。
「世界は、残酷で不平等なのです」
その現実を理解しないまま振るわれた“善意の正義”は、
王太子の廃嫡、聖女の幽閉、王家と公爵家の決定的な断絶を招く。
婚約破棄は恋愛劇では終わらない。
それは、国家が牙を剥く瞬間だ。
本作は、
「いじめられたという事実があっても、それは免罪符にはならない」
「平等を信じた者が、最も残酷な結末に辿り着く」
そんな現実を、徹底して描く。
――これは、ざまぁではない。
誰も救われない、残酷な現実の物語である。
※本作は中世ヨーロッパをモデルにしたフィクションです。
学園制度・男女共学などは史実とは異なりますが、
権力構造と政治的判断の冷酷さを重視して描いています。
---
「愛があれば十分だ」と私を捨てた婚約者へ――では、その婚約破棄の条件から確認いたしましょう
師走
恋愛
伯爵令嬢リディア・エーヴェルは、貴族たちの婚約や離縁、持参金や相続に関わる条件調整を陰でまとめてきた実務家だった。
だがある夜会で、婚約者である王太子側近ユリウス・グランツから「君は条件ばかりで冷たい。愛があれば契約などいらない」と一方的に婚約破棄されてしまう。
静かに婚約破棄を受理したリディアは、その場で持参金返還、贈与品、名誉回復の文言など必要事項の確認を始めるが、誰もその意味を理解しない。
けれど彼女が婚約から外れた直後から、王都では縁談、婚約、離縁の調整が次々と滞り始める。今まで多くの案件を陰でまとめていたのは、ほかでもないリディアだったのだ。
そんな中、法務局の裁定官補佐セオドア・ヴァレントから、王女ヘレナの婚姻条件を見直してほしいと依頼が舞い込む。
北方大公家との政略結婚。けれど提示された条件は、婚姻ではなく人質の引き渡しに等しいものだった。
「条件は愛の代わりではありません。ですが、愛が壊れたときに人を守ることはできます」
傷つきながらも再び交渉の場に立つリディアは、王女の未来を守るため、そして自分自身の人生を取り戻すため、契約と誠意を武器に王都最大の婚姻交渉へ挑む。
一方、自分を支えていたものの大きさに気づいた元婚約者は、今更になって復縁を望み始めるが――。
小説家になろう様でも掲載中
【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ
との
恋愛
2月のコンテストで沢山の応援をいただき、感謝です。
「王家の念願は今度こそ叶うのか!?」とまで言われるビルワーツ侯爵家令嬢との婚約ですが、毎回婚約破棄してきたのは王家から。
政より自分達の欲を優先して国を傾けて、その度に王命で『婚約』を申しつけてくる。その挙句、大勢の前で『婚約破棄だ!』と叫ぶ愚か者達にはもううんざり。
ビルワーツ侯爵家の資産を手に入れたい者達に翻弄されるのは、もうおしまいにいたしましょう。
地獄のような人生から巻き戻ったと気付き、新たなスタートを切ったエレーナは⋯⋯幸せを掴むために全ての力を振り絞ります。
全てを捨てるのか、それとも叩き壊すのか⋯⋯。
祖父、母、エレーナ⋯⋯三世代続いた王家とビルワーツ侯爵家の争いは、今回で終止符を打ってみせます。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済。
R15は念の為・・