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駆け落ちⅠ
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そんなことがあってから少しした後、私たちの父でありブレンダ男爵家の当主でもある父の誕生日を迎えた。
貴族の、それも当主の誕生日ともなればただ「おめでとう」だけで終わる訳にはいかない。普段は節約暮らしをしている我が家ではあるが、この日ばかりは日頃親交のある他の家の人々に招待状を書き、盛大な誕生日会の用意をした。
無駄な出費と言えば無駄な出費だが、貴族同士の人脈があればいいこともあるし、逆に他家に嫌われているせいで面倒事を押し付けられることもあるので、何とも言えないところでもある。
ともあれ、その日のために私も珍しくドレスを買ってもらえることになった。そんな訳で私もその日のために色々準備をしていると、妹のジェニーがふらりと部屋にやってくる。
「お姉様、準備の調子はどうでしょうか?」
「どうって……久しぶりにドレスを新調するから結構悩んでいるけど」
私はジェニーの意図が読めずに、正直に答える。
するとジェニーはおかしそうに笑った。
「きっとお姉様はラインハルト様の好みに合うようにドレスを新調されているのですよね?」
ジェニーは当たり前のように言うけど、実はそんなことはない。というのも、ラインハルトが好むドレスはどちらかというと露出が多く、胸元や足を大胆に見せるようなタイプのものだ。私が主役のパーティーならともかく、父上の誕生日パーティーで、しかも他家の偉い人々が多く来るところでそんな服装をするのは私には恥ずかしくて出来ない。
が、私が黙っているとそれを肯定と捉えたのか、ジェニーは言う。
「でも、それはあまり必要がないかもしれませんよ」
「どういうこと?」
「むしろ他の参加者、例えばレオルの好みでも調べておいた方がいいかもしれませんね」
そう言って彼女は意味ありげに笑う。
彼女の言葉は私の質問に対する答えになっていない上に意味が分からない。
「レオルって……ジェニーの婚約者じゃない!」
「ああ、そうでしたね。じゃあ他の人でも構いませんが」
ジェニーの言っていることはよく分からないが、明らかに何かよからぬことを企んでいるようにしか見えない。
「一体何を考えているの?」
「別に……何も企んでいませんわ。ただ私も別にお姉様に不幸になって欲しい訳ではありません。お姉様にふさわしい相手と幸せになって欲しいということですわ」
「ちょっと、それはどういう……もしかしてラインハルトが浮気しているってこと!?」
正直なところ彼であれば本当にしていそうなので私もついつい声を荒げてしまう。
するとジェニーは意味ありげに笑う。
「いえ、浮気はしていませんよ? さて、私もドレス選びをしなくては」
「ま、待って!」
が、私が止めるのも待たずに彼女は去っていく。
私はジェニーの言葉に胸騒ぎがして、彼に直接問いただそうかとも思ったが、パーティーの準備は自分のドレスだけでなく、家の片付けや招待状、人数の把握などたくさんある。
裕福なうちだと有能な執事数人に全てを任せるのだろうが、うちのような貧乏の家だとそういう訳にもいかない。そんな訳で執事だけでなく父上本人や私までその作業に駆り出され、ラインハルトに会いにいく余裕はなかった。
それにどうせパーティーになればラインハルトも来ることになる。
それならその時にそれとなく訊いてみよう、と思うのだった。
貴族の、それも当主の誕生日ともなればただ「おめでとう」だけで終わる訳にはいかない。普段は節約暮らしをしている我が家ではあるが、この日ばかりは日頃親交のある他の家の人々に招待状を書き、盛大な誕生日会の用意をした。
無駄な出費と言えば無駄な出費だが、貴族同士の人脈があればいいこともあるし、逆に他家に嫌われているせいで面倒事を押し付けられることもあるので、何とも言えないところでもある。
ともあれ、その日のために私も珍しくドレスを買ってもらえることになった。そんな訳で私もその日のために色々準備をしていると、妹のジェニーがふらりと部屋にやってくる。
「お姉様、準備の調子はどうでしょうか?」
「どうって……久しぶりにドレスを新調するから結構悩んでいるけど」
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するとジェニーはおかしそうに笑った。
「きっとお姉様はラインハルト様の好みに合うようにドレスを新調されているのですよね?」
ジェニーは当たり前のように言うけど、実はそんなことはない。というのも、ラインハルトが好むドレスはどちらかというと露出が多く、胸元や足を大胆に見せるようなタイプのものだ。私が主役のパーティーならともかく、父上の誕生日パーティーで、しかも他家の偉い人々が多く来るところでそんな服装をするのは私には恥ずかしくて出来ない。
が、私が黙っているとそれを肯定と捉えたのか、ジェニーは言う。
「でも、それはあまり必要がないかもしれませんよ」
「どういうこと?」
「むしろ他の参加者、例えばレオルの好みでも調べておいた方がいいかもしれませんね」
そう言って彼女は意味ありげに笑う。
彼女の言葉は私の質問に対する答えになっていない上に意味が分からない。
「レオルって……ジェニーの婚約者じゃない!」
「ああ、そうでしたね。じゃあ他の人でも構いませんが」
ジェニーの言っていることはよく分からないが、明らかに何かよからぬことを企んでいるようにしか見えない。
「一体何を考えているの?」
「別に……何も企んでいませんわ。ただ私も別にお姉様に不幸になって欲しい訳ではありません。お姉様にふさわしい相手と幸せになって欲しいということですわ」
「ちょっと、それはどういう……もしかしてラインハルトが浮気しているってこと!?」
正直なところ彼であれば本当にしていそうなので私もついつい声を荒げてしまう。
するとジェニーは意味ありげに笑う。
「いえ、浮気はしていませんよ? さて、私もドレス選びをしなくては」
「ま、待って!」
が、私が止めるのも待たずに彼女は去っていく。
私はジェニーの言葉に胸騒ぎがして、彼に直接問いただそうかとも思ったが、パーティーの準備は自分のドレスだけでなく、家の片付けや招待状、人数の把握などたくさんある。
裕福なうちだと有能な執事数人に全てを任せるのだろうが、うちのような貧乏の家だとそういう訳にもいかない。そんな訳で執事だけでなく父上本人や私までその作業に駆り出され、ラインハルトに会いにいく余裕はなかった。
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それならその時にそれとなく訊いてみよう、と思うのだった。
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