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演説
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やがて大臣の呼びかけによって王都の民が広場に集められてくる。最初はおそるおそるといった様子だが、人が集まってくると野次馬的な人も現れてどんどん人数も増えていく。
「なるほど、まさか君がこんなことをするとは思わなかったよ」
その様子を見てマイルズが少し意外そうに言う。
「この前は私が殿下に助けられたので、今度は私が殿下を助けられないかと思ったのです」
「そうか。こういう状況になったのは全て僕が仕向けたことだから君に何かをさせるつもりはなかったのだが」
「いえ、例えそうだとしても私も殿下と結ばれる選択をした以上、後をついていくだけでなく、共に歩ませていただきます」
私がきっぱり言うと、マイルズは苦笑した。
「やはり君は鳥籠の姫ではいられないのだな。なら今回は僕は見守らせてもらうよ」
やがて時間が経ち、十分人が増えたと思ったところで私は殿下とともに広場の中央に進み出た。そしてそれをスタンレット王国の兵士が護衛のためにぐるりと取り囲む。
それを見て周囲の群衆からは歓迎、非難、疑問、罵倒など様々な声が上がる。
「皆さん、聞いてください! 私はこの国の王女であるヘレンです!」
私が大声で話し始めると、多少ではあるが、観衆は静かになる。
「このたび我が国は隣国のスタンレット王国と戦って敗北しました! そしてその戦後処理に伴い、隣国のマイルズ殿下が我が国の王位を継ぐことになりました!」
私が叫ぶと観衆にどよめきが走った。私たちは当然のように知っていることでも、平民の中では知らない者も結構多いのだろう。
「皆さん今後この国がどうなるか不安を覚えている方も多いと思います! ですが心配はいりません。戦争は無事終わりましたし、マイルズ殿下は王位を継ぐのにふさわしい方です」
そうは言っても隣国の王族が王位を継ぐとなれば不安に思う者も多いだろう。
中には私に向かって「敵国に味方するのか!」というような罵声を飛ばす者もいた。
「ですが皆さんに聞いて欲しいことがあります。この国はこれまで特に目立った外圧も災害もなく、平和で作物もよくとれました。しかし皆さんの生活は豊かだったでしょうか? そうではなかったはずです。それは王族や貴族が贅沢をしたり、今回のように無駄な戦争をしたりしてきたからです。つまり、我が国出身だからといって皆さんの暮らしを豊かにするかどうかは分からないのです。しかしマイルズ殿下であれば貴族の腐敗を正し、農業や商業が効率的に行えるように手助けし、必ずやこの国を豊かにしてくれるでしょう!」
私の言葉に、近くで聞いている大臣や役人たちは青い顔をしている。この演説を聞いた貴族たちの反応を恐れたのだろう。
一方、観衆たちの中からは遠慮がちにぱらぱらと拍手が聞こえてくる。
「もちろん、これはただの私の願望ではありません! 隣国に行った方は分かると思いますが、スタンレット王国では我が国よりも高度な器械で道具が作られ、いい農具で畑を耕しています。そのため、我が国はこのたびの戦争で敗北しました。ですがこれからはマイルズ殿下の指導の元、この国もスタンレット王国のように豊かになっていくのです!」
私の言葉に拍手は少し大きくなる。
が、観衆の中から「そんなことを言われても騙されないぞ!」という声が聞こえてくる。するとそれまで私の隣に無言で立っていた殿下が口を開く。
「僕がこの国にやってきたのが搾取のためか発展のためか、その答えはすぐに分かるだろう。是非皆には期待して待っていて欲しい。もし僕がこの国をスタンレット王国の属国にするために来たのだと分かれば、その時は遠慮なく罵ってくれ」
殿下の言葉は特別大きい訳でもないのによく通り、騒がしい広場の隅まで行きわたり、拍手はさらに大きくなった。
もちろん国民の全員が手放しで喜んでいる訳ではないだろう。拍手をしている者にも半信半疑の者はいるだろうし、そもそも大多数の国民は今この場にいない。
しかしそういう者たちには実際の行動で示すしかない。
改めて私は殿下とともにこの国を良くしていこうという決意を固めたのだった。
「なるほど、まさか君がこんなことをするとは思わなかったよ」
その様子を見てマイルズが少し意外そうに言う。
「この前は私が殿下に助けられたので、今度は私が殿下を助けられないかと思ったのです」
「そうか。こういう状況になったのは全て僕が仕向けたことだから君に何かをさせるつもりはなかったのだが」
「いえ、例えそうだとしても私も殿下と結ばれる選択をした以上、後をついていくだけでなく、共に歩ませていただきます」
私がきっぱり言うと、マイルズは苦笑した。
「やはり君は鳥籠の姫ではいられないのだな。なら今回は僕は見守らせてもらうよ」
やがて時間が経ち、十分人が増えたと思ったところで私は殿下とともに広場の中央に進み出た。そしてそれをスタンレット王国の兵士が護衛のためにぐるりと取り囲む。
それを見て周囲の群衆からは歓迎、非難、疑問、罵倒など様々な声が上がる。
「皆さん、聞いてください! 私はこの国の王女であるヘレンです!」
私が大声で話し始めると、多少ではあるが、観衆は静かになる。
「このたび我が国は隣国のスタンレット王国と戦って敗北しました! そしてその戦後処理に伴い、隣国のマイルズ殿下が我が国の王位を継ぐことになりました!」
私が叫ぶと観衆にどよめきが走った。私たちは当然のように知っていることでも、平民の中では知らない者も結構多いのだろう。
「皆さん今後この国がどうなるか不安を覚えている方も多いと思います! ですが心配はいりません。戦争は無事終わりましたし、マイルズ殿下は王位を継ぐのにふさわしい方です」
そうは言っても隣国の王族が王位を継ぐとなれば不安に思う者も多いだろう。
中には私に向かって「敵国に味方するのか!」というような罵声を飛ばす者もいた。
「ですが皆さんに聞いて欲しいことがあります。この国はこれまで特に目立った外圧も災害もなく、平和で作物もよくとれました。しかし皆さんの生活は豊かだったでしょうか? そうではなかったはずです。それは王族や貴族が贅沢をしたり、今回のように無駄な戦争をしたりしてきたからです。つまり、我が国出身だからといって皆さんの暮らしを豊かにするかどうかは分からないのです。しかしマイルズ殿下であれば貴族の腐敗を正し、農業や商業が効率的に行えるように手助けし、必ずやこの国を豊かにしてくれるでしょう!」
私の言葉に、近くで聞いている大臣や役人たちは青い顔をしている。この演説を聞いた貴族たちの反応を恐れたのだろう。
一方、観衆たちの中からは遠慮がちにぱらぱらと拍手が聞こえてくる。
「もちろん、これはただの私の願望ではありません! 隣国に行った方は分かると思いますが、スタンレット王国では我が国よりも高度な器械で道具が作られ、いい農具で畑を耕しています。そのため、我が国はこのたびの戦争で敗北しました。ですがこれからはマイルズ殿下の指導の元、この国もスタンレット王国のように豊かになっていくのです!」
私の言葉に拍手は少し大きくなる。
が、観衆の中から「そんなことを言われても騙されないぞ!」という声が聞こえてくる。するとそれまで私の隣に無言で立っていた殿下が口を開く。
「僕がこの国にやってきたのが搾取のためか発展のためか、その答えはすぐに分かるだろう。是非皆には期待して待っていて欲しい。もし僕がこの国をスタンレット王国の属国にするために来たのだと分かれば、その時は遠慮なく罵ってくれ」
殿下の言葉は特別大きい訳でもないのによく通り、騒がしい広場の隅まで行きわたり、拍手はさらに大きくなった。
もちろん国民の全員が手放しで喜んでいる訳ではないだろう。拍手をしている者にも半信半疑の者はいるだろうし、そもそも大多数の国民は今この場にいない。
しかしそういう者たちには実際の行動で示すしかない。
改めて私は殿下とともにこの国を良くしていこうという決意を固めたのだった。
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