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姉妹
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「本当にリリーは自慢の娘ね」
いつからだっただろうか。物心がついたころからそんな言葉が母上の口癖になっていた。
ちなみにこの口癖には続きがあって、
「それに引き換えセシルは」
となる。
その後にはその時母上が私に対して不満に思っていたことが続く。
ある時は「今日も学問の先生が愚痴を言っていたわ」であったり、またある時は「こんなことも出来ないの」だったりする。
実際、妹のリリーは私と違って完璧な娘だった。
私たち姉妹はファーレン王国でも随一の権力を持つエルガルド公爵家に生まれた。父上が何かを提案すれば国王陛下といえどもそれをおろそかには出来ない。
そんな名家に生まれた貴族令嬢は同じく名家に嫁ぎ、その家との関係を結ぶことが求められる。いわゆる政略結婚だ。
玉の輿が保証されていると言えば聞こえはいいけど、そのためにはこの国の政治や歴史といった学問、貴族の間で守るべきマナーや礼儀作法、さらには舞踏や楽器演奏といった特技の習得まで幅広いことを教え込まれる。
私も最初は長い歴史を持つエルガルド公爵家の名に恥じないように懸命にそれらのことを頑張ったし、実際、まあまあの成績を上げた。そして父母もまあまあの愛情を私に注いでくれた。
それが変わったのは妹のリリーが生まれ、成長してからだった。
まずリリーは私と違って美しかった。どちらかというと地味で目立たない私と違ってシシリーは妖精が人間の体を纏って生まれてきたようだった。透き通るような白い肌に見る者を魅了するような笑顔を浮かべ、プラチナブロンドの髪にコバルトブルーの瞳で見つめられ、ときめかない男はいないと言われた。
続いてリリーは恐るべき才能で全ての手習いを急速な勢いでマスターし始めた。恐るべき記憶力で一度習ったことはほぼ暗記し、マナーや礼儀作法は習う前からほぼ正解して講師を驚かせた。私が苦戦した舞踏や楽器演奏も「楽しいですね」と言って自分から率先して取り組んでいた。
三年前には三つも年下の妹に私は全てにおいて追い抜かれ、すっかり不出来な姉としての立場が確定してしまっていた。
最初は私を励ましてくれた両親も次第にリリーの急激な成長ばかりを可愛がるようになり、私は「出来損ない」「全然頑張ってない」と思うようになっていった。
使用人たちも最初は見て見ぬ振りをしていたが、私がいじめてもいい存在と分かると、次第に私への扱いは雑になっていった。中には私への料理だけ違うものを盛りつけたり、私の服だけ汚れを残したりといった嫌がらせをする者すらいたが、誰もそれを咎めなかった。
こうして、今の私には誰も味方はいなくなってしまっていた。
いつからだっただろうか。物心がついたころからそんな言葉が母上の口癖になっていた。
ちなみにこの口癖には続きがあって、
「それに引き換えセシルは」
となる。
その後にはその時母上が私に対して不満に思っていたことが続く。
ある時は「今日も学問の先生が愚痴を言っていたわ」であったり、またある時は「こんなことも出来ないの」だったりする。
実際、妹のリリーは私と違って完璧な娘だった。
私たち姉妹はファーレン王国でも随一の権力を持つエルガルド公爵家に生まれた。父上が何かを提案すれば国王陛下といえどもそれをおろそかには出来ない。
そんな名家に生まれた貴族令嬢は同じく名家に嫁ぎ、その家との関係を結ぶことが求められる。いわゆる政略結婚だ。
玉の輿が保証されていると言えば聞こえはいいけど、そのためにはこの国の政治や歴史といった学問、貴族の間で守るべきマナーや礼儀作法、さらには舞踏や楽器演奏といった特技の習得まで幅広いことを教え込まれる。
私も最初は長い歴史を持つエルガルド公爵家の名に恥じないように懸命にそれらのことを頑張ったし、実際、まあまあの成績を上げた。そして父母もまあまあの愛情を私に注いでくれた。
それが変わったのは妹のリリーが生まれ、成長してからだった。
まずリリーは私と違って美しかった。どちらかというと地味で目立たない私と違ってシシリーは妖精が人間の体を纏って生まれてきたようだった。透き通るような白い肌に見る者を魅了するような笑顔を浮かべ、プラチナブロンドの髪にコバルトブルーの瞳で見つめられ、ときめかない男はいないと言われた。
続いてリリーは恐るべき才能で全ての手習いを急速な勢いでマスターし始めた。恐るべき記憶力で一度習ったことはほぼ暗記し、マナーや礼儀作法は習う前からほぼ正解して講師を驚かせた。私が苦戦した舞踏や楽器演奏も「楽しいですね」と言って自分から率先して取り組んでいた。
三年前には三つも年下の妹に私は全てにおいて追い抜かれ、すっかり不出来な姉としての立場が確定してしまっていた。
最初は私を励ましてくれた両親も次第にリリーの急激な成長ばかりを可愛がるようになり、私は「出来損ない」「全然頑張ってない」と思うようになっていった。
使用人たちも最初は見て見ぬ振りをしていたが、私がいじめてもいい存在と分かると、次第に私への扱いは雑になっていった。中には私への料理だけ違うものを盛りつけたり、私の服だけ汚れを残したりといった嫌がらせをする者すらいたが、誰もそれを咎めなかった。
こうして、今の私には誰も味方はいなくなってしまっていた。
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