完璧な妹に全てを奪われた私に微笑んでくれたのは

今川幸乃

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不出来な姉

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「全く、リリー様はずっと前に出来たことがあなたにはまだ出来ないのですか?」

 今日も学問の先生が私の答案を見て溜め息をつく。
 彼は幼いころからずっと我が家に専属で来てくれている学者で、私とリリーに学問を教えてくれている。最初はまあまあうまくいっていたが、リリーが私を遥かに上回る実力を示し始めると、すぐに関係は悪くなった。

 彼としてもリリーには一回教えれば分かってもらえることが、私は一回では分からないこともあるのでつい苛々してしまうのだろう。

「すみません」
「全く、こんなことも覚えられないとは。最初は難しすぎるかもしれないと思っていましたが、リリー様はすぐに覚えてしまわれましたよ」

 そう言って彼はこれみよがしに溜め息をつく。

 彼が私に教えようとしているのは王国の歴史だが、専門的な学者ぐらいしか知らないマイナーな事件や人名を次々と教えようとしてきた。リリーがすぐに覚えられても私はそうはいかない。
 最初は授業の難度はそこまででもなかったが、リリーが才能を発揮すると、私を甘やかしすぎたと思ったのか急にハードルが上がった。

「全く、もしかしてちゃんと覚えようとしてないのではないですか? 学問というのは授業の外で復習して初めて出来るものですよ」
「いえ、やっています」

 昨日も夜遅くまで復習した。それでも、やはり人が一度に覚えられることには限度があるし、丸暗記すれば少し経てば忘れてしまう。
 が、私の言葉に先生はちっ、と舌打ちした。

「そういう口先だけの言葉はいりません。はあ、全くこれだけ言っても変わらないということはあなたにはやる気が足りないということですね。一度あなたにはお仕置きが必要なようです」
「そ、そんな」

 私が弱々しく抗議の声を上げると先生の表情が豹変する。

「うるさい! お仕置きが嫌なら最初からもっとまじめにやりなさい! ほら、さっさと腕をまくって出して!」
「は、はい」

 仕方なく私は腕をまくって机の上に置く。
 すると先生はそんな私の腕を容赦なくつねった。

「痛っ」

 あまりの痛みに私は思わず悲鳴を上げてしまう。が、先生はそれには構わずにつねるのを繰り返した。
 本来であれば例え先生とはいえ貴族令嬢にこのような行為をするのは許されないのだろうが、私の親に訴えたところで「あなたがもっといい成績をとればいいだけでしょ」と言われるだけだろう。

 だから私は何をされても黙って堪えるしかなかった。

「実はご両親からも、あなたが少しはリリーに追いつけるよう指導してやって欲しい、と言われてるんだ。だからあなたの頭が悪いままだと僕が怒られるんだ!」
「痛っ」

 その後私は何度も腕をつねられ、やがて腕が真っ赤になったところでようやく先生は帰っていったのだった。
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