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衝撃
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「やあ、そなたがセシルか。初めまして、と言いたいところだが先ほどぶりだな」
私が歩いていくと、殿下は気さくに手をあげ、そして驚愕の言葉を口にした。
その瞬間、会場にどよめきが走る。
「お姉様!? いつの間に殿下と会ったのでしょうか!?」
「先ほど? 私たち会いましたっけ?」
途端にリリーが目を血走らせるが、私自身も心当たりがない。一体どういうことなのだろうか。
動揺する私に殿下はこともなげに告げる。
「さっき僕のことを助けてくれただろう?」
「さっき? ということはもしかして……」
途端に私の脳裏に先ほど助けた男性の方の姿がフラッシュバックする。
言われてみればあの方は長髪で全然顔が見えなかった。しかし言われてみれば、殿下も長髪だし、体格もそっくりに見える。声は全然違ったが、言葉数が少なかったので意図的にかすれさせて誤魔化したのかもしれない。
リリーも私と全く同じことを考えているのだろう、徐々に表情が変わっていく。
「そう、そのもしかしてだ」
そう言って殿下はいたずらっぽく笑う。
逆にリリーの表情は一気に青ざめた。気づかなかったとはいえ、彼女はあろうことか、クリストフ殿下を見捨てることになってしまったのだ。
一方、何が何だか分からない両親やうちの使用人たちは皆ぽかんとしていた。
そんな私たちに向かって殿下は一人話し続ける。
「どうせパーティーで様子を見るなどと言えばよそいきの姿しか見ることは出来ない。だからあえて道中であんな演技をして見せたのだ。もっとも、二人同時に見捨てられたらどうしようかと冷や冷やしていたけどね」
そう言って殿下は苦笑する。
「そ、そんな! とはいえ私は殿下とのパーティーに遅れたくなかったから見過ごしただけで、決してそんなつもりではありません!」
一方のリリーは懸命にクリストフに訴えている。
が、クリストフはそれを聞いて少し悲しそうな表情になる。
「残念ながら僕は君の日頃の評判についても聞いているんだ」
それを聞いたリリーは一瞬表情が明るくなる。
よほど自分の評判に自信があるのだろう。
「だったらなおさら」
「君がいつもセシルをいじめている、とね」
それまでお祝いムードだった周囲も、雲行きが怪しくなってきたと思ったからだろう、お通夜のような空気に変わっている。
特に先ほどまであんなに乗り気だった両親が彫像のように立ち尽くしているのは少し滑稽でもあった。
「そ、そんなこと……」
「とはいえそれも所詮聞いた評判だ。だからそれで判断する訳にはいかない。そう思った僕は一芝居打って君たちの本性を知ろうと思った訳だ。ちなみに、君が馬車の中でセシルを煽っていたのも聞こえていたよ」
「そんな……」
それを聞いてリリーはその場に崩れ落ちた。
が、やがて何かに気づいたように立ち上がる。
「でも、一体誰が私がセシルをいじめているなんて言ったんです!?」
自分が酷い目に遭ったからにはせめてそいつも道連れにしてやろう。
リリーの表情からはそんな恐ろしい執念を感じた。
が、
「お久しぶりです、リリーお嬢様。あの節はお世話になりました」
そう言ってクリストフの後ろから現れたのはジークであった。
ジークの姿を見たリリーはまるで幽霊にでもあったかのように真っ白になる。そしてあまりに血の気がうすくなりすぎたのか、そのまま卒倒して倒れてしまった。
「ジーク……」
私は再会出来た喜びと、彼が無事だったことへの安堵で胸がいっぱいになる。
一方のジークも、私を見て目を潤ませた。
「お久しぶりでございますセシルお嬢様。ご無事で何よりです」
こうして私たちは周囲がお通夜のような雰囲気になる中、感動の再会を遂げたのであった。
私が歩いていくと、殿下は気さくに手をあげ、そして驚愕の言葉を口にした。
その瞬間、会場にどよめきが走る。
「お姉様!? いつの間に殿下と会ったのでしょうか!?」
「先ほど? 私たち会いましたっけ?」
途端にリリーが目を血走らせるが、私自身も心当たりがない。一体どういうことなのだろうか。
動揺する私に殿下はこともなげに告げる。
「さっき僕のことを助けてくれただろう?」
「さっき? ということはもしかして……」
途端に私の脳裏に先ほど助けた男性の方の姿がフラッシュバックする。
言われてみればあの方は長髪で全然顔が見えなかった。しかし言われてみれば、殿下も長髪だし、体格もそっくりに見える。声は全然違ったが、言葉数が少なかったので意図的にかすれさせて誤魔化したのかもしれない。
リリーも私と全く同じことを考えているのだろう、徐々に表情が変わっていく。
「そう、そのもしかしてだ」
そう言って殿下はいたずらっぽく笑う。
逆にリリーの表情は一気に青ざめた。気づかなかったとはいえ、彼女はあろうことか、クリストフ殿下を見捨てることになってしまったのだ。
一方、何が何だか分からない両親やうちの使用人たちは皆ぽかんとしていた。
そんな私たちに向かって殿下は一人話し続ける。
「どうせパーティーで様子を見るなどと言えばよそいきの姿しか見ることは出来ない。だからあえて道中であんな演技をして見せたのだ。もっとも、二人同時に見捨てられたらどうしようかと冷や冷やしていたけどね」
そう言って殿下は苦笑する。
「そ、そんな! とはいえ私は殿下とのパーティーに遅れたくなかったから見過ごしただけで、決してそんなつもりではありません!」
一方のリリーは懸命にクリストフに訴えている。
が、クリストフはそれを聞いて少し悲しそうな表情になる。
「残念ながら僕は君の日頃の評判についても聞いているんだ」
それを聞いたリリーは一瞬表情が明るくなる。
よほど自分の評判に自信があるのだろう。
「だったらなおさら」
「君がいつもセシルをいじめている、とね」
それまでお祝いムードだった周囲も、雲行きが怪しくなってきたと思ったからだろう、お通夜のような空気に変わっている。
特に先ほどまであんなに乗り気だった両親が彫像のように立ち尽くしているのは少し滑稽でもあった。
「そ、そんなこと……」
「とはいえそれも所詮聞いた評判だ。だからそれで判断する訳にはいかない。そう思った僕は一芝居打って君たちの本性を知ろうと思った訳だ。ちなみに、君が馬車の中でセシルを煽っていたのも聞こえていたよ」
「そんな……」
それを聞いてリリーはその場に崩れ落ちた。
が、やがて何かに気づいたように立ち上がる。
「でも、一体誰が私がセシルをいじめているなんて言ったんです!?」
自分が酷い目に遭ったからにはせめてそいつも道連れにしてやろう。
リリーの表情からはそんな恐ろしい執念を感じた。
が、
「お久しぶりです、リリーお嬢様。あの節はお世話になりました」
そう言ってクリストフの後ろから現れたのはジークであった。
ジークの姿を見たリリーはまるで幽霊にでもあったかのように真っ白になる。そしてあまりに血の気がうすくなりすぎたのか、そのまま卒倒して倒れてしまった。
「ジーク……」
私は再会出来た喜びと、彼が無事だったことへの安堵で胸がいっぱいになる。
一方のジークも、私を見て目を潤ませた。
「お久しぶりでございますセシルお嬢様。ご無事で何よりです」
こうして私たちは周囲がお通夜のような雰囲気になる中、感動の再会を遂げたのであった。
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