8 / 11
衝撃
「やあ、そなたがセシルか。初めまして、と言いたいところだが先ほどぶりだな」
私が歩いていくと、殿下は気さくに手をあげ、そして驚愕の言葉を口にした。
その瞬間、会場にどよめきが走る。
「お姉様!? いつの間に殿下と会ったのでしょうか!?」
「先ほど? 私たち会いましたっけ?」
途端にリリーが目を血走らせるが、私自身も心当たりがない。一体どういうことなのだろうか。
動揺する私に殿下はこともなげに告げる。
「さっき僕のことを助けてくれただろう?」
「さっき? ということはもしかして……」
途端に私の脳裏に先ほど助けた男性の方の姿がフラッシュバックする。
言われてみればあの方は長髪で全然顔が見えなかった。しかし言われてみれば、殿下も長髪だし、体格もそっくりに見える。声は全然違ったが、言葉数が少なかったので意図的にかすれさせて誤魔化したのかもしれない。
リリーも私と全く同じことを考えているのだろう、徐々に表情が変わっていく。
「そう、そのもしかしてだ」
そう言って殿下はいたずらっぽく笑う。
逆にリリーの表情は一気に青ざめた。気づかなかったとはいえ、彼女はあろうことか、クリストフ殿下を見捨てることになってしまったのだ。
一方、何が何だか分からない両親やうちの使用人たちは皆ぽかんとしていた。
そんな私たちに向かって殿下は一人話し続ける。
「どうせパーティーで様子を見るなどと言えばよそいきの姿しか見ることは出来ない。だからあえて道中であんな演技をして見せたのだ。もっとも、二人同時に見捨てられたらどうしようかと冷や冷やしていたけどね」
そう言って殿下は苦笑する。
「そ、そんな! とはいえ私は殿下とのパーティーに遅れたくなかったから見過ごしただけで、決してそんなつもりではありません!」
一方のリリーは懸命にクリストフに訴えている。
が、クリストフはそれを聞いて少し悲しそうな表情になる。
「残念ながら僕は君の日頃の評判についても聞いているんだ」
それを聞いたリリーは一瞬表情が明るくなる。
よほど自分の評判に自信があるのだろう。
「だったらなおさら」
「君がいつもセシルをいじめている、とね」
それまでお祝いムードだった周囲も、雲行きが怪しくなってきたと思ったからだろう、お通夜のような空気に変わっている。
特に先ほどまであんなに乗り気だった両親が彫像のように立ち尽くしているのは少し滑稽でもあった。
「そ、そんなこと……」
「とはいえそれも所詮聞いた評判だ。だからそれで判断する訳にはいかない。そう思った僕は一芝居打って君たちの本性を知ろうと思った訳だ。ちなみに、君が馬車の中でセシルを煽っていたのも聞こえていたよ」
「そんな……」
それを聞いてリリーはその場に崩れ落ちた。
が、やがて何かに気づいたように立ち上がる。
「でも、一体誰が私がセシルをいじめているなんて言ったんです!?」
自分が酷い目に遭ったからにはせめてそいつも道連れにしてやろう。
リリーの表情からはそんな恐ろしい執念を感じた。
が、
「お久しぶりです、リリーお嬢様。あの節はお世話になりました」
そう言ってクリストフの後ろから現れたのはジークであった。
ジークの姿を見たリリーはまるで幽霊にでもあったかのように真っ白になる。そしてあまりに血の気がうすくなりすぎたのか、そのまま卒倒して倒れてしまった。
「ジーク……」
私は再会出来た喜びと、彼が無事だったことへの安堵で胸がいっぱいになる。
一方のジークも、私を見て目を潤ませた。
「お久しぶりでございますセシルお嬢様。ご無事で何よりです」
こうして私たちは周囲がお通夜のような雰囲気になる中、感動の再会を遂げたのであった。
私が歩いていくと、殿下は気さくに手をあげ、そして驚愕の言葉を口にした。
その瞬間、会場にどよめきが走る。
「お姉様!? いつの間に殿下と会ったのでしょうか!?」
「先ほど? 私たち会いましたっけ?」
途端にリリーが目を血走らせるが、私自身も心当たりがない。一体どういうことなのだろうか。
動揺する私に殿下はこともなげに告げる。
「さっき僕のことを助けてくれただろう?」
「さっき? ということはもしかして……」
途端に私の脳裏に先ほど助けた男性の方の姿がフラッシュバックする。
言われてみればあの方は長髪で全然顔が見えなかった。しかし言われてみれば、殿下も長髪だし、体格もそっくりに見える。声は全然違ったが、言葉数が少なかったので意図的にかすれさせて誤魔化したのかもしれない。
リリーも私と全く同じことを考えているのだろう、徐々に表情が変わっていく。
「そう、そのもしかしてだ」
そう言って殿下はいたずらっぽく笑う。
逆にリリーの表情は一気に青ざめた。気づかなかったとはいえ、彼女はあろうことか、クリストフ殿下を見捨てることになってしまったのだ。
一方、何が何だか分からない両親やうちの使用人たちは皆ぽかんとしていた。
そんな私たちに向かって殿下は一人話し続ける。
「どうせパーティーで様子を見るなどと言えばよそいきの姿しか見ることは出来ない。だからあえて道中であんな演技をして見せたのだ。もっとも、二人同時に見捨てられたらどうしようかと冷や冷やしていたけどね」
そう言って殿下は苦笑する。
「そ、そんな! とはいえ私は殿下とのパーティーに遅れたくなかったから見過ごしただけで、決してそんなつもりではありません!」
一方のリリーは懸命にクリストフに訴えている。
が、クリストフはそれを聞いて少し悲しそうな表情になる。
「残念ながら僕は君の日頃の評判についても聞いているんだ」
それを聞いたリリーは一瞬表情が明るくなる。
よほど自分の評判に自信があるのだろう。
「だったらなおさら」
「君がいつもセシルをいじめている、とね」
それまでお祝いムードだった周囲も、雲行きが怪しくなってきたと思ったからだろう、お通夜のような空気に変わっている。
特に先ほどまであんなに乗り気だった両親が彫像のように立ち尽くしているのは少し滑稽でもあった。
「そ、そんなこと……」
「とはいえそれも所詮聞いた評判だ。だからそれで判断する訳にはいかない。そう思った僕は一芝居打って君たちの本性を知ろうと思った訳だ。ちなみに、君が馬車の中でセシルを煽っていたのも聞こえていたよ」
「そんな……」
それを聞いてリリーはその場に崩れ落ちた。
が、やがて何かに気づいたように立ち上がる。
「でも、一体誰が私がセシルをいじめているなんて言ったんです!?」
自分が酷い目に遭ったからにはせめてそいつも道連れにしてやろう。
リリーの表情からはそんな恐ろしい執念を感じた。
が、
「お久しぶりです、リリーお嬢様。あの節はお世話になりました」
そう言ってクリストフの後ろから現れたのはジークであった。
ジークの姿を見たリリーはまるで幽霊にでもあったかのように真っ白になる。そしてあまりに血の気がうすくなりすぎたのか、そのまま卒倒して倒れてしまった。
「ジーク……」
私は再会出来た喜びと、彼が無事だったことへの安堵で胸がいっぱいになる。
一方のジークも、私を見て目を潤ませた。
「お久しぶりでございますセシルお嬢様。ご無事で何よりです」
こうして私たちは周囲がお通夜のような雰囲気になる中、感動の再会を遂げたのであった。
あなたにおすすめの小説
姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します
しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。
失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。
そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……!
悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。
【完結】大好きな彼が妹と結婚する……と思ったら?
江崎美彩
恋愛
誰にでも愛される可愛い妹としっかり者の姉である私。
大好きな従兄弟と人気のカフェに並んでいたら、いつも通り気ままに振る舞う妹の後ろ姿を見ながら彼が「結婚したいと思ってる」って呟いて……
さっくり読める短編です。
異世界もののつもりで書いてますが、あまり異世界感はありません。
特殊能力を持つ妹に婚約者を取られた姉、義兄になるはずだった第一王子と新たに婚約する
下菊みこと
恋愛
妹のために尽くしてきた姉、妹の裏切りで幸せになる。
ナタリアはルリアに婚約者を取られる。しかしそのおかげで力を遺憾なく発揮できるようになる。周りはルリアから手のひらを返してナタリアを歓迎するようになる。
小説家になろう様でも投稿しています。
私から全てを奪おうとした妹が私の婚約者に惚れ込み、色仕掛けをしたが、事情を知った私の婚約者が、私以上に憤慨し、私のかわりに復讐する話
序盤の村の村人
恋愛
「ちょっと、この部屋は日当たりが悪すぎるわ、そうね、ここの部屋いいじゃない!お姉様の部屋を私が貰うわ。ありがとうお姉様」 私は何も言っていません。しかし、アーデルの声を聞いたメイドは私の部屋の荷物を屋根裏部屋へと運び始めました。「ちょっとアーデル。私は部屋を譲るなんて一言も言ってないです」
「お姉様、それは我が儘すぎるわ。お姉様だけこんな部屋ずるいじゃない」「マリーベル。我が儘は辞めてちょうだい。また部屋を移動させるなんてメイド達が可哀想でしょ」私たちの話を聞いていた義理母のマリアは、そう言うと、メイド達に早くするのよと急かすように言葉をかけました。父の再婚とともに、義理の妹に私の物を奪われる毎日。ついに、アーデルは、マリーベルの婚約者ユーレイルの容姿に惚れ込み、マリーベルから奪おうとするが……。
旧タイトル:妹は、私から全てを奪おうとしたが、私の婚約者には色仕掛けが通用しなかった件について
·すみません、少しエピローグのお話を足しました。楽しんでいただけると嬉しいです。
どうせ愛されない子なので、呪われた婚約者のために命を使ってみようと思います
下菊みこと
恋愛
愛されずに育った少女が、唯一優しくしてくれた婚約者のために自分の命をかけて呪いを解こうとするお話。
ご都合主義のハッピーエンドのSS。
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約者が他の令嬢に微笑む時、私は惚れ薬を使った
葵 すみれ
恋愛
ポリーヌはある日、婚約者が見知らぬ令嬢と二人きりでいるところを見てしまう。
しかも、彼は見たことがないような微笑みを令嬢に向けていた。
いつも自分には冷たい彼の柔らかい態度に、ポリーヌは愕然とする。
そして、親が決めた婚約ではあったが、いつの間にか彼に恋心を抱いていたことに気づく。
落ち込むポリーヌに、妹がこれを使えと惚れ薬を渡してきた。
迷ったあげく、婚約者に惚れ薬を使うと、彼の態度は一転して溺愛してくるように。
偽りの愛とは知りながらも、ポリーヌは幸福に酔う。
しかし幸せの狭間で、惚れ薬で彼の心を縛っているのだと罪悪感を抱くポリーヌ。
悩んだ末に、惚れ薬の効果を打ち消す薬をもらうことを決意するが……。
※小説家になろうにも掲載しています
初恋のひとに告白を言いふらされて学園中の笑い者にされましたが、大人のつまはじきの方が遥かに恐ろしいことを彼が教えてくれました
3333(トリささみ)
恋愛
「あなたのことが、あの時からずっと好きでした。よろしければわたくしと、お付き合いしていただけませんか?」
男爵令嬢だが何不自由なく平和に暮らしていたアリサの日常は、その告白により崩れ去った。
初恋の相手であるレオナルドは、彼女の告白を陰湿になじるだけでなく、通っていた貴族学園に言いふらした。
その結果、全校生徒の笑い者にされたアリサは悲嘆し、絶望の底に突き落とされた。
しかしそれからすぐ『本物のつまはじき』を知ることになる。
社会的な孤立をメインに書いているので読む人によっては抵抗があるかもしれません。
一人称視点と三人称視点が交じっていて読みにくいところがあります。