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魔王の娘 マキナ
ミリアの力
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数日後
「大変です、いよいよ魔族軍がすぐ近くまで迫ってきています!」
武器の錬成に余念が俺の元にミリアが報告にやってくる。それを聞いて俺も気を引き締める。今日までに出来たものは広範囲に高火力で爆発するグレネード、そして俺の魔力に比例して威力を増す剣、後は身に着けるだけで魔法に対する防御力を上げる装備品などであった。
「よし、敵の本隊の場所は分かるか?」
「はい。一際屈強な魔族が揃っているのですぐに分かりました」
「それなら行くぞ。シルバー・コメット」
俺はここ数日で製造したマジックアイテムを身に着けると、銀色の箒を起動する。これは魔力の流れを利用して周辺の重力を操作する効果があり、要は乗ると空を飛べる。
「シルフ!」
一方のミリアは風の精霊シルフを呼び出すと精霊に抱きかかえられるような恰好で空に舞い上がる。
二人で空高くに上昇すると、東側に王国やザンド砦が見え、下には俺たちが暮らす家とその周りにある森が見える。そして西側から黒い塊のように迫ってくる魔族の軍勢が見えた。
「あれは敵の先鋒に過ぎません。接触しないように空から迂回して敵本隊を目指します」
「分かった。ついていく」
ミリアはシルフに抱えられて一度大きく北側に進路を迂回して飛んでいき、俺もそれを追う。あれだけの数がいるのに先鋒に過ぎないとは。そして少し進んだところで再び南西に進路を反転した。
すると、視線の先にはこれまで見てきたどの魔族の集団よりも屈強そうな魔族の軍団が見えた。基本的に軍団を構成するのは最弱でもトロールクラス、中には魔法を使うと思われるドレイクやバジリスクなども混ざっている。こいつらが一度に襲来すればあの鳥でではとても持ちこたえることが出来ないだろう。
「あれが本隊か」
「はい、あの奥に大将の魔族がいるはずです」
が、敵軍もすぐに俺たちの接近に気づく。
そして俺たちを迎え撃つように軍勢の後ろの方から体よりも大きな翼を生やした黒い竜が数匹飛び上がる。体長は五メートル前後、全身が黒光りする鱗に覆われ、口からは鋭い牙が覗いている。並みの冒険者であればパーティーを組んで一匹に挑みかかっても無傷で勝つことは出来ないだろう。
「あれは何ですか?」
「俺も知識でしか知らないが、おそらくブラックワイバーンだな。元々魔族が扱う黒魔法により変異させられたワイバーンが、繁殖したものらしい。要は通常よりも強いワイバーンだ」
そもそもワイバーン自体が強力な魔物であるが、黒魔法の力でさらに身体が強化され、しかも魔族の指示に従うようになっている。
ちなみに俺は魔物討伐に出たことはないが、素材などについて調べる必要があるため、大体の魔物についての知識は持っている。このクラスの魔族がほいほい迎撃に出てくるというのは敵の戦力も侮れるものではなかった。
「私、まだ敵相手に魔法を使ったことがないのでここで腕試しさせていただいてもいいでしょうか?」
ミリアが遠慮がちに尋ねる。ブラックワイバーン、それも数匹いるとなれば間違っても腕試し程度で戦っていい相手ではない。しかしミリアの魔力をもってすればそれも無謀な発言には聞こえなかった。それに何かあれば俺もフォローすることは出来る。
「よし、任せる」
「はい、エアロ・ブラスト・トライデント!」
エアロ・ブラストというのは風属性の中級攻撃魔法で、本来ならブラックワイバーンに効くようなものではない。しかしいつの間にミリアの周辺にはたくさんのシルフたちが集まり、大量の魔力が彼女に供給されている。
そして彼女の手から発された三筋の魔法はとても中級魔法とは思えない威力だった。ワイバーンたちは翼で打ち払おうとしたが、ぶすり、と鈍い音とともに翼に大穴が空く。
翼を貫通されたワイバーンたちは鋭い鳴き声を上げると、遠距離での戦いは分が悪いと思ったのか一目散にこちらに向かって飛んでくる。旺盛な生命力を持つワイバーンは翼に穴を空けられてもなお元気が衰えることはなかった。
が、ミリアはそれを見てなぜかほっとした表情になる。
「良かったです、この魔法で少しでもダメージが入るのであれば勝てるということですから。エアロ・ブラスト・サウザンド」
途端にミリアの周囲からまるで嵐の日の雨粒のように恐ろしい数と勢いの魔法がワイバーンに向かって飛んでいく。ブラックワイバーンたちはそれを見て慌てて周囲に防御魔法を展開するが、無数のエアロ・ブラストの前にその抵抗は無意味であった。轟音とともに大量の魔法が命中し、一発か二発の攻撃を防いだものの、残った無数の魔法がワイバーンたちを撃ち抜いていく。
十数秒後、全ての魔法が打ち終わると、体中が風穴だらけになった五匹のワイバーンが地面に向かって落下していくのが見えた。
その光景を見て味方のはずの俺までしばしの間絶句してしまった。その光景はとても普通の人間のしわざとは思えない。
「魔族といえども私の魔法が通用する相手で良かったです」
「さ、さすがミリアだな」
ミリアが思っていた以上の強さを発揮して俺の方が呆気に取られてしまう。俺も魔族と戦うのは二回目だったので色々不安だったが、ミリアの強さを見てこれなら勝てる、という自信が湧いてくる。
一方の魔族たちは空において最強の戦力と思っていたワイバーンが瞬殺されたからか、ざわついていた。
「ミリアはまだ魔法を使えるか?」
「はい、今くらいでしたら問題なしです」
「それならミリアは前から風魔法で敵の眼を惹きつけてくれ。その間に俺がボスを倒してくる」
「分かりました……エアロ・ブラスト・サウザンド!」
ミリアはやや高度を下げると先ほどの嵐のような風魔法を魔族軍の正面から放つ。俺はその間に上空から敵の大将の元へ向かうのだった。
「大変です、いよいよ魔族軍がすぐ近くまで迫ってきています!」
武器の錬成に余念が俺の元にミリアが報告にやってくる。それを聞いて俺も気を引き締める。今日までに出来たものは広範囲に高火力で爆発するグレネード、そして俺の魔力に比例して威力を増す剣、後は身に着けるだけで魔法に対する防御力を上げる装備品などであった。
「よし、敵の本隊の場所は分かるか?」
「はい。一際屈強な魔族が揃っているのですぐに分かりました」
「それなら行くぞ。シルバー・コメット」
俺はここ数日で製造したマジックアイテムを身に着けると、銀色の箒を起動する。これは魔力の流れを利用して周辺の重力を操作する効果があり、要は乗ると空を飛べる。
「シルフ!」
一方のミリアは風の精霊シルフを呼び出すと精霊に抱きかかえられるような恰好で空に舞い上がる。
二人で空高くに上昇すると、東側に王国やザンド砦が見え、下には俺たちが暮らす家とその周りにある森が見える。そして西側から黒い塊のように迫ってくる魔族の軍勢が見えた。
「あれは敵の先鋒に過ぎません。接触しないように空から迂回して敵本隊を目指します」
「分かった。ついていく」
ミリアはシルフに抱えられて一度大きく北側に進路を迂回して飛んでいき、俺もそれを追う。あれだけの数がいるのに先鋒に過ぎないとは。そして少し進んだところで再び南西に進路を反転した。
すると、視線の先にはこれまで見てきたどの魔族の集団よりも屈強そうな魔族の軍団が見えた。基本的に軍団を構成するのは最弱でもトロールクラス、中には魔法を使うと思われるドレイクやバジリスクなども混ざっている。こいつらが一度に襲来すればあの鳥でではとても持ちこたえることが出来ないだろう。
「あれが本隊か」
「はい、あの奥に大将の魔族がいるはずです」
が、敵軍もすぐに俺たちの接近に気づく。
そして俺たちを迎え撃つように軍勢の後ろの方から体よりも大きな翼を生やした黒い竜が数匹飛び上がる。体長は五メートル前後、全身が黒光りする鱗に覆われ、口からは鋭い牙が覗いている。並みの冒険者であればパーティーを組んで一匹に挑みかかっても無傷で勝つことは出来ないだろう。
「あれは何ですか?」
「俺も知識でしか知らないが、おそらくブラックワイバーンだな。元々魔族が扱う黒魔法により変異させられたワイバーンが、繁殖したものらしい。要は通常よりも強いワイバーンだ」
そもそもワイバーン自体が強力な魔物であるが、黒魔法の力でさらに身体が強化され、しかも魔族の指示に従うようになっている。
ちなみに俺は魔物討伐に出たことはないが、素材などについて調べる必要があるため、大体の魔物についての知識は持っている。このクラスの魔族がほいほい迎撃に出てくるというのは敵の戦力も侮れるものではなかった。
「私、まだ敵相手に魔法を使ったことがないのでここで腕試しさせていただいてもいいでしょうか?」
ミリアが遠慮がちに尋ねる。ブラックワイバーン、それも数匹いるとなれば間違っても腕試し程度で戦っていい相手ではない。しかしミリアの魔力をもってすればそれも無謀な発言には聞こえなかった。それに何かあれば俺もフォローすることは出来る。
「よし、任せる」
「はい、エアロ・ブラスト・トライデント!」
エアロ・ブラストというのは風属性の中級攻撃魔法で、本来ならブラックワイバーンに効くようなものではない。しかしいつの間にミリアの周辺にはたくさんのシルフたちが集まり、大量の魔力が彼女に供給されている。
そして彼女の手から発された三筋の魔法はとても中級魔法とは思えない威力だった。ワイバーンたちは翼で打ち払おうとしたが、ぶすり、と鈍い音とともに翼に大穴が空く。
翼を貫通されたワイバーンたちは鋭い鳴き声を上げると、遠距離での戦いは分が悪いと思ったのか一目散にこちらに向かって飛んでくる。旺盛な生命力を持つワイバーンは翼に穴を空けられてもなお元気が衰えることはなかった。
が、ミリアはそれを見てなぜかほっとした表情になる。
「良かったです、この魔法で少しでもダメージが入るのであれば勝てるということですから。エアロ・ブラスト・サウザンド」
途端にミリアの周囲からまるで嵐の日の雨粒のように恐ろしい数と勢いの魔法がワイバーンに向かって飛んでいく。ブラックワイバーンたちはそれを見て慌てて周囲に防御魔法を展開するが、無数のエアロ・ブラストの前にその抵抗は無意味であった。轟音とともに大量の魔法が命中し、一発か二発の攻撃を防いだものの、残った無数の魔法がワイバーンたちを撃ち抜いていく。
十数秒後、全ての魔法が打ち終わると、体中が風穴だらけになった五匹のワイバーンが地面に向かって落下していくのが見えた。
その光景を見て味方のはずの俺までしばしの間絶句してしまった。その光景はとても普通の人間のしわざとは思えない。
「魔族といえども私の魔法が通用する相手で良かったです」
「さ、さすがミリアだな」
ミリアが思っていた以上の強さを発揮して俺の方が呆気に取られてしまう。俺も魔族と戦うのは二回目だったので色々不安だったが、ミリアの強さを見てこれなら勝てる、という自信が湧いてくる。
一方の魔族たちは空において最強の戦力と思っていたワイバーンが瞬殺されたからか、ざわついていた。
「ミリアはまだ魔法を使えるか?」
「はい、今くらいでしたら問題なしです」
「それならミリアは前から風魔法で敵の眼を惹きつけてくれ。その間に俺がボスを倒してくる」
「分かりました……エアロ・ブラスト・サウザンド!」
ミリアはやや高度を下げると先ほどの嵐のような風魔法を魔族軍の正面から放つ。俺はその間に上空から敵の大将の元へ向かうのだった。
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