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アイシャと王都
話し合い
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「そこまで言うならここに来たことを話すわ。あなたは色仕掛けよりも泣き落としの方が効果がある気がするし」
「そういうことを仕掛けようとしている本人に言うな」
どうも彼女と話しているとこちらの調子が狂わされてしまう。
一方、ミリアとマキナはアイシャの方を警戒の眼差しで見つめている。
「アルスさん、この人には気を付けた方がいいです」
「そうだ。色仕掛けしてくるやつがまともな訳がない」
二人の視線を受けてアイシャは苦笑した。
「まあそれはそうかもね。でもこの人が泣き落としに引っ掛からないような冷酷な人だったら二人と一緒に暮らしていることはないんじゃない?」
おそらくアイシャは追放されてからの俺のことを詳しくは知らないだろうからその言葉はあてずっぽうなのだろうが、その言葉はある程度当たっていた。
「……」
アイシャの言葉に二人も思い当たることがあるのか押し黙る。
「では話すわ。実は私はケイン殿下の婚約者だったの。だけど……」
そう言って彼女は婚約者を解放してくれるようエレナに求めに行ったときのことを話す。
「……と言う訳であなたが帰ってきてくれないと殿下の命はない。だから助けて欲しい」
「ちょっと待て。ということは賢者の石は今暴走状態にあるということか!?」
アイシャには申し訳ないが、俺はケイン殿下の話よりも賢者の石の話に気をとられてしまう。俺が急に凄い形相になったこともあってアイシャは動揺した。
「そ、それはそうだけど……作った癖に知らなかったの?」
「細かい検証とかをする前に追い出されたからな。もしかすると魔力を増幅する回路に問題があるのかもしれないな」
王国全体を守るには当然大きな魔力が必要になってくる。そのための魔力を全て供給すると大変なことになってしまうため、与えられた魔力を増幅し効率的に利用できるようにする魔術回路を組んでいたのだが、そこに不備があった、もしくは使っているうちにショートしたことが原因だと思われる。
それで時折結界が点滅していたのか、と俺は納得する。
「そうなんだ。とにかくそれを直して欲しい訳なんだけど」
アイシャの言葉に俺たち三人は顔を見合わせる。
俺たちとしても王国がそのような状況になっているのは痛ましいし、出来ることなら直したいという気持ちもある。しかしだからといって卑怯な手段で俺を追い出したエレナと何事もなかったかのように仲良くすることはなかなか出来ない。かといって放置してはアイシャが可哀想だし、それにそういう話を抜きにしても魔力がある人々が皆賢者の石の供物になっているのはまずいという考え方もある。もちろん、石をどうにかしたらエレナがそれらの人をきちんと解放して国政がきちんとした形に戻るかと言われると、そこにはまた疑問がある。
要するに大小さまざまな問題が複雑に絡み合っているせいで、俺たちはどうするのが最善なのかが分からなかった。
「当然だが俺が戻って石を直してもエレナは今の地位を降りるつもりはないんだよな?」
「あなたを連れ帰れば何でもするとは言われたけど、それを飲むような人には見えないけど」
「そうだよなあ」
俺は肩を落とす。王国を助けたいのは山々だが、だからといって助けた国をそのままエレナに引き渡すのは割に合わない。
「いっそのことエレナを倒してはどうだ?」
マキナが魔王の娘らしい乱暴な解決案を言う。もちろんそれが出来るならそれでいいのだが、俺が一対一で勝負しようと言って応じてくれるとも思えない。
とはいえ、その考え方は一つの道筋を示してはくれた。
「仮にエレナに不満を持つ貴族とかを集めて王宮に軍を進めたとしてもエレナは賢者の石の供物にしている人たちを皆人質にしているから無傷で倒すのは難しいと思う」
アイシャもそれには否定的だった。
だが、エレナ個人を倒すのであれば軍勢を集める必要はない。
「倒すとしたら俺がエレナと会ったところで襲い掛かるしかないのか」
「アルスさんなら勝てますよ」
ミリアはそう言ってくれるが、それはエレナが俺に対して無警戒だった場合である。俺と会う時は護衛を連れているだろうし、もしかすると魔術的な防護を事前に施してから会うかもしれない。
「大丈夫だ。その際はわらわも助けになろう」
「はい、私も微力ですがお手伝いします」
「いいのか? 正直相手の戦力がどのくらいかは分からないぞ」
そうは言いつつも俺はこの二人が味方してくれるなら、という気持ちが芽生えてくるのを抑えきれなかった。敵は優れた魔術師は皆賢者の石に魔力を吸われているだろう。普通の兵士であれば何人か集まってもミリアや俺の魔法で吹き飛ばすことも出来る。
もちろんエレナがそもそも俺と会ってくれない可能性や俺たちが予期せぬ魔術防護をとっている可能性もあるが。
「よし、分かった。とはいえその作戦を実行するには俺たちの戦力も整えないといけないし、エレナも油断させないといけない。悪いけどアイシャにも手伝ってもらうぞ」
「え……本当にいいの?」
俺の言葉になぜか頼んできたアイシャが呆気に取られている。
「別にこんな面倒なことに首を突っ込まなくてもあなたはここで楽しそうに生きていたみたいなのに?」
「まあな。だが、俺もエレナとは決着がつけられるならどこかでつけたいとは思っていた」
「……ありがとう」
「別にお前のためじゃない」
そうは言いつつも、もしアイシャがやってこなければ俺はわざわざエレナとの決着をつけようと思っただろうか、と少し考えてしまう。
「そういうことを仕掛けようとしている本人に言うな」
どうも彼女と話しているとこちらの調子が狂わされてしまう。
一方、ミリアとマキナはアイシャの方を警戒の眼差しで見つめている。
「アルスさん、この人には気を付けた方がいいです」
「そうだ。色仕掛けしてくるやつがまともな訳がない」
二人の視線を受けてアイシャは苦笑した。
「まあそれはそうかもね。でもこの人が泣き落としに引っ掛からないような冷酷な人だったら二人と一緒に暮らしていることはないんじゃない?」
おそらくアイシャは追放されてからの俺のことを詳しくは知らないだろうからその言葉はあてずっぽうなのだろうが、その言葉はある程度当たっていた。
「……」
アイシャの言葉に二人も思い当たることがあるのか押し黙る。
「では話すわ。実は私はケイン殿下の婚約者だったの。だけど……」
そう言って彼女は婚約者を解放してくれるようエレナに求めに行ったときのことを話す。
「……と言う訳であなたが帰ってきてくれないと殿下の命はない。だから助けて欲しい」
「ちょっと待て。ということは賢者の石は今暴走状態にあるということか!?」
アイシャには申し訳ないが、俺はケイン殿下の話よりも賢者の石の話に気をとられてしまう。俺が急に凄い形相になったこともあってアイシャは動揺した。
「そ、それはそうだけど……作った癖に知らなかったの?」
「細かい検証とかをする前に追い出されたからな。もしかすると魔力を増幅する回路に問題があるのかもしれないな」
王国全体を守るには当然大きな魔力が必要になってくる。そのための魔力を全て供給すると大変なことになってしまうため、与えられた魔力を増幅し効率的に利用できるようにする魔術回路を組んでいたのだが、そこに不備があった、もしくは使っているうちにショートしたことが原因だと思われる。
それで時折結界が点滅していたのか、と俺は納得する。
「そうなんだ。とにかくそれを直して欲しい訳なんだけど」
アイシャの言葉に俺たち三人は顔を見合わせる。
俺たちとしても王国がそのような状況になっているのは痛ましいし、出来ることなら直したいという気持ちもある。しかしだからといって卑怯な手段で俺を追い出したエレナと何事もなかったかのように仲良くすることはなかなか出来ない。かといって放置してはアイシャが可哀想だし、それにそういう話を抜きにしても魔力がある人々が皆賢者の石の供物になっているのはまずいという考え方もある。もちろん、石をどうにかしたらエレナがそれらの人をきちんと解放して国政がきちんとした形に戻るかと言われると、そこにはまた疑問がある。
要するに大小さまざまな問題が複雑に絡み合っているせいで、俺たちはどうするのが最善なのかが分からなかった。
「当然だが俺が戻って石を直してもエレナは今の地位を降りるつもりはないんだよな?」
「あなたを連れ帰れば何でもするとは言われたけど、それを飲むような人には見えないけど」
「そうだよなあ」
俺は肩を落とす。王国を助けたいのは山々だが、だからといって助けた国をそのままエレナに引き渡すのは割に合わない。
「いっそのことエレナを倒してはどうだ?」
マキナが魔王の娘らしい乱暴な解決案を言う。もちろんそれが出来るならそれでいいのだが、俺が一対一で勝負しようと言って応じてくれるとも思えない。
とはいえ、その考え方は一つの道筋を示してはくれた。
「仮にエレナに不満を持つ貴族とかを集めて王宮に軍を進めたとしてもエレナは賢者の石の供物にしている人たちを皆人質にしているから無傷で倒すのは難しいと思う」
アイシャもそれには否定的だった。
だが、エレナ個人を倒すのであれば軍勢を集める必要はない。
「倒すとしたら俺がエレナと会ったところで襲い掛かるしかないのか」
「アルスさんなら勝てますよ」
ミリアはそう言ってくれるが、それはエレナが俺に対して無警戒だった場合である。俺と会う時は護衛を連れているだろうし、もしかすると魔術的な防護を事前に施してから会うかもしれない。
「大丈夫だ。その際はわらわも助けになろう」
「はい、私も微力ですがお手伝いします」
「いいのか? 正直相手の戦力がどのくらいかは分からないぞ」
そうは言いつつも俺はこの二人が味方してくれるなら、という気持ちが芽生えてくるのを抑えきれなかった。敵は優れた魔術師は皆賢者の石に魔力を吸われているだろう。普通の兵士であれば何人か集まってもミリアや俺の魔法で吹き飛ばすことも出来る。
もちろんエレナがそもそも俺と会ってくれない可能性や俺たちが予期せぬ魔術防護をとっている可能性もあるが。
「よし、分かった。とはいえその作戦を実行するには俺たちの戦力も整えないといけないし、エレナも油断させないといけない。悪いけどアイシャにも手伝ってもらうぞ」
「え……本当にいいの?」
俺の言葉になぜか頼んできたアイシャが呆気に取られている。
「別にこんな面倒なことに首を突っ込まなくてもあなたはここで楽しそうに生きていたみたいなのに?」
「まあな。だが、俺もエレナとは決着がつけられるならどこかでつけたいとは思っていた」
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