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アイシャと王都
アイシャとハニトラ
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俺がアイシャを連れて自宅に帰ると、ミリアとマキナの姿はなかった。今日は俺たちはばらばらに森を探索し、素材になりそうな植物や食べられる動物がいないかなどを探してみる日だったからまだ探索を行っているのだろう。
「治癒魔法が使える人が出払っているから少し待っていてくれ」
俺も素材さえ集めればポーションが作れるのだが、ミリアがいるならなくていいやと思って真面目に準備をしていなかった。
「ええ、ということはアルスさんはここで誰かと同居しているの?」
アイシャは意外そうに尋ねる。
言われてみれば、国外追放された人がすでに誰かと同居しているとは誰も思わないだろう。
「まあな。君みたいに色々事情がある人は多いんだ」
俺はそう言って二人の正体をごまかす。もっともミリアは王女である以上、アイシャは顔を知っている可能性はあったが。
「とりあえずこのベッドを使ってくれ」
俺は彼女をベッドまで連れていく。アイシャがベッドに入ると俺は離れようとする。が、彼女は俺の腕を掴んだまま俺の体を引き寄せる。予期しない彼女の行動に俺は体勢を崩し、そのままベッドのアイシャの上に倒れ込んでしまう。
「な、何するんだ」
「ちょっと私心細いの。しばらく一緒にいてくれないかしら」
「いや、俺は別に出かけたりしない」
「そういうことじゃなくて」
そう言ってなおも彼女は俺を離そうとしない。
事ここにいたって俺もさすがに違和感を覚えた。確かに国外追放されて心細いとはいえ、初めて会った男に誘うような態度をとるとも思えない。
ということはもしかして彼女は誘っているのか? 最初に考えたのは彼女がサキュバスのような相手を誘惑する魔物ではないかということだった。しかし彼女から魔物のような魔力は感じられない。巧妙に擬態しているのかとも思ったが、そこまでの力があるならこうして話している間に俺を暗殺すればいいはずだ。
……ということを俺はベッドに引きずりこまれながら必死に考える。真面目なことを考えていないと彼女の少し熱っぽい吐息や豊満な胸に意識がいってしまいそうだ。
「なあアイシャ、まだ言ってないだけで何か事情があるんじゃないか?」
「そんなことはない。でも、あなたならいいかなと思って」
台詞だけ見れば完全に誘っているが、俺はその言葉を言う直前にアイシャが一瞬目を伏せたのを見逃さなかった。やはり彼女には何かある。
「何か事情があるなら先に……」
「ただいま戻りました……って、えぇっ!?」
ドアが開く音と叫ぶ声、そしてどさりと手に持った籠を落とす音が聞こえてくる。
ドアを開けて俺たちを見て呆然としながら立っていたのはミリアだった。
「嘘……アルスさん、私たちがいない間によその女を連れ込んでそんなことをしようとしているなんて!」
「ち、違うんだこれは誤解なんだ!」
咄嗟に俺は叫ぶ。
が、なぜか俺を誘惑しようとしていたはずのアイシャまでこちらを冷たい眼で見つめてくる。
「まさか追放されて早々女を侍らせているの?」
「違う! 俺とミリアはそういう関係じゃない!」
「ミリア? もしかして……」
が、俺が咄嗟に叫んだ言葉はさらに藪蛇となってしまった。
アイシャは入口で絶句しているミリアに目をやる。そして気づく。
「……もしかしてあなたはミリア殿下?」
「え、ええと……」
正体を尋ねられてミリアは言いよどむ。この謎の女が正体を打ち明けていい相手なのかそうでないのか判断がつかなかったからなのだろう。
が、アイシャは余計にこちらに鋭い視線を向けてくる。
「確かにミリア殿下は行方不明だったけど、まさかこんなところに囲い込んで下働きをさせているなんて!」
「違う! というかそもそもお前は一体何者だ!?」
実際は事実だけ見ればそこまで間違ってもなかったが、俺は懸命に話題をそらそうとする。
が、間の悪いことにそこへさらにもう一つの足音が近づいて来る。
「戻ったぞ……ってアルス!? おぬしは一体何ということをしているのだ!?」
帰宅したマキナが俺とアイシャの姿を見て絶句する。
「王女殿下だけでなくあんなきれいな子まで囲っているなんて……」
一方、なぜかアイシャまでマキナを見て絶句している。本当にこいつは何をしにきたのだろうか。
「マキナもこれは違うんだ」
「違うも何も、見たままではないのか!」
「いや、多分それが違うと言ってるんだ! というかアイシャ、そろそろ俺に近づいてきた目的を教えてくれ」
俺の言葉にアイシャはしばし真剣な表情で考え込む。そして諦めたようにため息をついた。
「仕方ないわ。王女殿下とこんなにきれいな娘がいたら私なんかの付け焼刃のハニーとラップに引っ掛かる訳がないもの」
ハニートラップ、という言葉を聞いて俺はやっと納得がいく。もっとも、追放された俺を篭絡して何をさせようとしているのかはよく分からないが。
「はにーとらっぷ?」
ミリアが訊き返す。
「知らないの? 女性が男性を誘惑して近づき、自分の望む目的を達成しようということよ。ていうか殿下もここにいるってことはそうではないの?」
「わ、私は別にそういうのでは……でもそういうのが望まれるなら……」
ミリアは突然変な話題を振られて恥ずかしくなったからか、急に小声になる。
「分かった分かった。じゃあ改めてこんなことをした理由を教えてくれ」
「治癒魔法が使える人が出払っているから少し待っていてくれ」
俺も素材さえ集めればポーションが作れるのだが、ミリアがいるならなくていいやと思って真面目に準備をしていなかった。
「ええ、ということはアルスさんはここで誰かと同居しているの?」
アイシャは意外そうに尋ねる。
言われてみれば、国外追放された人がすでに誰かと同居しているとは誰も思わないだろう。
「まあな。君みたいに色々事情がある人は多いんだ」
俺はそう言って二人の正体をごまかす。もっともミリアは王女である以上、アイシャは顔を知っている可能性はあったが。
「とりあえずこのベッドを使ってくれ」
俺は彼女をベッドまで連れていく。アイシャがベッドに入ると俺は離れようとする。が、彼女は俺の腕を掴んだまま俺の体を引き寄せる。予期しない彼女の行動に俺は体勢を崩し、そのままベッドのアイシャの上に倒れ込んでしまう。
「な、何するんだ」
「ちょっと私心細いの。しばらく一緒にいてくれないかしら」
「いや、俺は別に出かけたりしない」
「そういうことじゃなくて」
そう言ってなおも彼女は俺を離そうとしない。
事ここにいたって俺もさすがに違和感を覚えた。確かに国外追放されて心細いとはいえ、初めて会った男に誘うような態度をとるとも思えない。
ということはもしかして彼女は誘っているのか? 最初に考えたのは彼女がサキュバスのような相手を誘惑する魔物ではないかということだった。しかし彼女から魔物のような魔力は感じられない。巧妙に擬態しているのかとも思ったが、そこまでの力があるならこうして話している間に俺を暗殺すればいいはずだ。
……ということを俺はベッドに引きずりこまれながら必死に考える。真面目なことを考えていないと彼女の少し熱っぽい吐息や豊満な胸に意識がいってしまいそうだ。
「なあアイシャ、まだ言ってないだけで何か事情があるんじゃないか?」
「そんなことはない。でも、あなたならいいかなと思って」
台詞だけ見れば完全に誘っているが、俺はその言葉を言う直前にアイシャが一瞬目を伏せたのを見逃さなかった。やはり彼女には何かある。
「何か事情があるなら先に……」
「ただいま戻りました……って、えぇっ!?」
ドアが開く音と叫ぶ声、そしてどさりと手に持った籠を落とす音が聞こえてくる。
ドアを開けて俺たちを見て呆然としながら立っていたのはミリアだった。
「嘘……アルスさん、私たちがいない間によその女を連れ込んでそんなことをしようとしているなんて!」
「ち、違うんだこれは誤解なんだ!」
咄嗟に俺は叫ぶ。
が、なぜか俺を誘惑しようとしていたはずのアイシャまでこちらを冷たい眼で見つめてくる。
「まさか追放されて早々女を侍らせているの?」
「違う! 俺とミリアはそういう関係じゃない!」
「ミリア? もしかして……」
が、俺が咄嗟に叫んだ言葉はさらに藪蛇となってしまった。
アイシャは入口で絶句しているミリアに目をやる。そして気づく。
「……もしかしてあなたはミリア殿下?」
「え、ええと……」
正体を尋ねられてミリアは言いよどむ。この謎の女が正体を打ち明けていい相手なのかそうでないのか判断がつかなかったからなのだろう。
が、アイシャは余計にこちらに鋭い視線を向けてくる。
「確かにミリア殿下は行方不明だったけど、まさかこんなところに囲い込んで下働きをさせているなんて!」
「違う! というかそもそもお前は一体何者だ!?」
実際は事実だけ見ればそこまで間違ってもなかったが、俺は懸命に話題をそらそうとする。
が、間の悪いことにそこへさらにもう一つの足音が近づいて来る。
「戻ったぞ……ってアルス!? おぬしは一体何ということをしているのだ!?」
帰宅したマキナが俺とアイシャの姿を見て絶句する。
「王女殿下だけでなくあんなきれいな子まで囲っているなんて……」
一方、なぜかアイシャまでマキナを見て絶句している。本当にこいつは何をしにきたのだろうか。
「マキナもこれは違うんだ」
「違うも何も、見たままではないのか!」
「いや、多分それが違うと言ってるんだ! というかアイシャ、そろそろ俺に近づいてきた目的を教えてくれ」
俺の言葉にアイシャはしばし真剣な表情で考え込む。そして諦めたようにため息をついた。
「仕方ないわ。王女殿下とこんなにきれいな娘がいたら私なんかの付け焼刃のハニーとラップに引っ掛かる訳がないもの」
ハニートラップ、という言葉を聞いて俺はやっと納得がいく。もっとも、追放された俺を篭絡して何をさせようとしているのかはよく分からないが。
「はにーとらっぷ?」
ミリアが訊き返す。
「知らないの? 女性が男性を誘惑して近づき、自分の望む目的を達成しようということよ。ていうか殿下もここにいるってことはそうではないの?」
「わ、私は別にそういうのでは……でもそういうのが望まれるなら……」
ミリアは突然変な話題を振られて恥ずかしくなったからか、急に小声になる。
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