弟子に”賢者の石”発明の手柄を奪われ追放された錬金術師、田舎で工房を開きスローライフする~今更石の使い方が分からないと言われても知らない~

今川幸乃

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ダークドワーフのオルギム

人質救出へ

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「とりあえずいったんご飯にしませんか? 考えてもすぐに結論が出るものではありません。それにオルギムさんたちは少し落ち着けば何か案が出るかもしれませんし」
「そうだな」

 ミリアの言葉にオルギムも頷く。彼らがここまでの旅路で疲れ果てているのは事実だろう。俺ももう少し考える時間が欲しかったので頷く。

「うーん、この家のキッチンに入るのも久しぶりですが特に何の用意もしてないので早く出来るものの方が良さそうですね。あ、でも食材はありますね」

 数日前にラザルが持ってきた食材は量が多かったので、俺とマキナの二人で食べてもまだある程度残っていた。牧場にいる動物を捌いたり、菜園から収穫したりすれば時間がかかってしまうため、ミリアはその中の食材を煮込んでスープを煮込んでいく。通常であれば火をおこして具材を煮込むのに時間がかかるが、ミリアは火の精霊の力を借りて素早く具材に火を通していく。そして少し味付けしてすぐにスープが完成してしまった。

「お待たせしました」

 そう言って彼女はスープを皿によそってドワーフたちに配っていく。
 久しぶりの光景を見て、俺はようやく家に帰って来たような妙な気分になるのだった。オルギムたちも温かいものを食べたからか、少しリラックスした様子を見せる。

 ミリアとマキナがドワーフたちと雑談しているのを見ながら、俺はひたすら考え続ける。空腹が満たされたからか、俺の脳内も少しずつ整理されていく。そしてふと気づく。
 オルギムと一緒にこちらを目指して来たダークドワーフたちが魔族に捕らえられたのであれば、彼らはゴルゴールの元にいる元々の人質と一緒に捕らえられている可能性が一番高いのではないか。捕われたダークドワーフたちを助けるついでに元の人質を助け出してしまえば魔族恭順派の考えも変わるのではないか。

 一度魔族に与した彼らからすれば俺たちが横から強引に人質を助け出すのは迷惑かもしれない。しかしこのまま魔導砲が建造されるのを黙って見ている訳にはいかない。
 そんなことを考えているうちに食事は終わり、ミリアが食後の紅茶を淹れてくれる。そこで俺はぽつりと口を開く。

「考えがまとまった」
「本当か!?」

 俺の言葉にオルギムが即座に反応する。

「ああ。オルギムの仲間が魔族に捕まったのであれば恐らくゴルゴールの元にいる可能性が高い。ダークドワーフの人質や捕虜をいちいち別のところに閉じ込めておくとも思えないからな」
「なるほど、確かにそうだ」
「と言う訳で俺たちで彼らを救出しようと思う」

 俺の言葉に周囲はいったんしんと静まる。
 やや間があってオルギムが真剣な表情で静かに問い返す。

「いいのか? そうなればかなりの確率でゴルゴールと戦うことになるぞ」
「俺たちで力を合わせればゴルゴールにも負けることはないと思っている」
「そうだな」
「はい、負けません」

 俺の言葉にマキナとミリアも頷く。

「それに、魔族領に向かうのであれば道中でオルギムの仲間と鉢合わせるかもしれないからな」

 もし魔族に襲われて散り散りになっているのならその可能性もゼロではない。そうなれば彼らを助けることも出来るかもしれない。

 俺の言葉を聞いてオルギムは仲間たちと顔を見合わせる。
 彼らが戸惑うのも無理はない。彼らからすれば俺が四天王の一人を倒したというのも直接見た訳ではない。それに人質を取り返しにいくということは魔族恭順派のドワーフたちと戦いになってしまう可能性もある。

 が、少しして彼らは意志が決まったのか互いに頷き合う。そしてオルギムも俺の方へと向き直った。

「分かった。それならご協力感謝しよう」
「よし。早速ゴルゴールの元を目指そう。ミリアはこちらに来たばかりなのに済まないな」
「大丈夫です。何となくそんな予感はしてましたから」

 そう言ってミリアは苦笑する。
 こうして俺たちは慌ただしく準備を整えた。魔族領では金で食べ物を買うことはおそらく出来ないため、長持ちしそうでかさばらない食糧をありったけかき集める。

 持っていくのは重くなるかと思ったが、ミリアが風の精霊に運ばせてくれるとのことだったのでその心配はいらなかった。

 こうして俺たちは帰って来たばかりの家を慌ただしく後にしたのである。
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