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ロルス
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さて、魔法を使うことにすっかり夢中になっていた私だったが、不意にこちらに向かってくる足音に気づく。
「まずい!」
目の前は明らかに自然にはこうならないだろうという各地の草や花が咲き乱れている。庭いじりをしていたとかそういう言い訳では切り抜けられない。
魔法を使えるのが楽しすぎて見つかるとかそういう心配をすっかり忘れてしまっていた。
「何か騒がしいな……ってこれは何だ!?」
やってきたのはロルスだった。
昨日会った時は終始不愛想だった彼が一面の植物園(?)を見て仰天している。こうしてみると驚いた顔は意外と可愛らしい、と思ってすぐにそれどころではない、と我に帰る。
すぐにロルスはその場で気まずい顔をしている私に気づいた。
そして半信半疑といった様子で問いかける。
「レイラ……もしかしてこれは君の仕業なのか?」
「は、はい」
「一体これは何だ。噂によると魔法が全く使えなくて婚約破棄されたと聞いたし、昨日はそれを否定しなかったじゃないか! それとも僕らには隠していたのか!?」
ロルスは驚きのあまり、まくしたてるように言う。
私としても見られるとは思っていなかったのでどう説明していいのか分からない。
「そうなんですが……何というか、急に使えるようになりまして」
「馬鹿を言うな。魔法が急に使えるようになる訳ないだろう。しかもちょっとした物ならともかくここまで大がかりなものなんて」
ロルスの言葉は正論だった。私だってこれまで魔法が全く使えなかった他人が急にこんな魔法を使えば疑いの眼差しで見るだろう。
「もしかして……よその魔術師を連れ込んで魔法を使わせ、自分の手柄にしようとしたのではないか!?」
「いえ、そういう訳では……とはいえそこまで言うのであれば今やってみせます」
魔法が使えるようになった以上、そのことはロルスやレイノルズ侯爵には伝えておいた方がいい。
そしてどうせそうするなら早い方がいいだろう。
「あ、ああ」
「ノーム、さっきの花を咲かせてみせて」
先ほどノームが咲かせた花は私も名前を知らない。とはいえ、私がそもそも存在を知らないような花を咲かせれば、例えば事前に花を用意しておいたとかそういうトリックを使った疑いは晴れるだろう。
すると、私の言葉に合わせて私とロルスの前に魔力が集まり、やがて地面から南方に咲く極彩色のきれいな花が咲いた。
「な、何だこれは!」
魔法を使う場面を目の前で見せられて、さすがのロルスも驚く。
「一体どういうことだ。まさか本当に一日で使えるようになったと言うのか!?」
「一応理由はありまして……」
そう言って私はこれまで魔法が使えなかった理由についての推測を説明した。
「……と言う訳で、私がリラックスして魔力を制御することが出来るようになったのが原因だと思います」
「何と、まさかそんなことが……」
それを聞いたロルスはしばらくの間目をパチパチさせていたが、とはいえ先ほど私が目の前で魔法を使ったことは認めざるを得ない。
「そうか、まさかそんなことが」
と、やがて納得したように頷くのだった。
「まずい!」
目の前は明らかに自然にはこうならないだろうという各地の草や花が咲き乱れている。庭いじりをしていたとかそういう言い訳では切り抜けられない。
魔法を使えるのが楽しすぎて見つかるとかそういう心配をすっかり忘れてしまっていた。
「何か騒がしいな……ってこれは何だ!?」
やってきたのはロルスだった。
昨日会った時は終始不愛想だった彼が一面の植物園(?)を見て仰天している。こうしてみると驚いた顔は意外と可愛らしい、と思ってすぐにそれどころではない、と我に帰る。
すぐにロルスはその場で気まずい顔をしている私に気づいた。
そして半信半疑といった様子で問いかける。
「レイラ……もしかしてこれは君の仕業なのか?」
「は、はい」
「一体これは何だ。噂によると魔法が全く使えなくて婚約破棄されたと聞いたし、昨日はそれを否定しなかったじゃないか! それとも僕らには隠していたのか!?」
ロルスは驚きのあまり、まくしたてるように言う。
私としても見られるとは思っていなかったのでどう説明していいのか分からない。
「そうなんですが……何というか、急に使えるようになりまして」
「馬鹿を言うな。魔法が急に使えるようになる訳ないだろう。しかもちょっとした物ならともかくここまで大がかりなものなんて」
ロルスの言葉は正論だった。私だってこれまで魔法が全く使えなかった他人が急にこんな魔法を使えば疑いの眼差しで見るだろう。
「もしかして……よその魔術師を連れ込んで魔法を使わせ、自分の手柄にしようとしたのではないか!?」
「いえ、そういう訳では……とはいえそこまで言うのであれば今やってみせます」
魔法が使えるようになった以上、そのことはロルスやレイノルズ侯爵には伝えておいた方がいい。
そしてどうせそうするなら早い方がいいだろう。
「あ、ああ」
「ノーム、さっきの花を咲かせてみせて」
先ほどノームが咲かせた花は私も名前を知らない。とはいえ、私がそもそも存在を知らないような花を咲かせれば、例えば事前に花を用意しておいたとかそういうトリックを使った疑いは晴れるだろう。
すると、私の言葉に合わせて私とロルスの前に魔力が集まり、やがて地面から南方に咲く極彩色のきれいな花が咲いた。
「な、何だこれは!」
魔法を使う場面を目の前で見せられて、さすがのロルスも驚く。
「一体どういうことだ。まさか本当に一日で使えるようになったと言うのか!?」
「一応理由はありまして……」
そう言って私はこれまで魔法が使えなかった理由についての推測を説明した。
「……と言う訳で、私がリラックスして魔力を制御することが出来るようになったのが原因だと思います」
「何と、まさかそんなことが……」
それを聞いたロルスはしばらくの間目をパチパチさせていたが、とはいえ先ほど私が目の前で魔法を使ったことは認めざるを得ない。
「そうか、まさかそんなことが」
と、やがて納得したように頷くのだった。
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