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秀才学生フィリア
新生パーティー
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「エレメンタル・ウェポン」
フィリアの魔法でリンの剣に炎の魔力が宿る。
「ありがとうございます!」
フィリアは炎の力を宿した魔剣で目の前のゾンビに斬りかかる。
「ぐああああああああああああああっ!」
ゾンビは目の前で肌を焼かれながら崩れ落ちていく。しかしゾンビたちは後から後から腐った肉体を動かしてこちらへ向かってくる。
それを見てリンは次から次へとゾンビに斬りかかっていく。
ゾンビたちは四方八方から腕を伸ばしてくる。先ほどまでの普通の斬撃では、痛覚のないゾンビたちは自分たちが切り刻まれるのもいとわずに剣をからめとろうとしてきたが、炎の魔力が宿されたリンの剣は次々とゾンビたちを切り裂いていった。
フィリアはきっとゾンビが威力の高い攻撃よりも熱に弱いことを知っていたのだろう。
それを見て俺は一際大きなゾンビに向かって駆けていく。
「ホーリー・ライト」
ティアの魔法の光が降り注ぎ、目の前のゾンビは動きを止めた。
恐らくは元々巨人種だったのだろう、その大柄な体から繰り出される攻撃は一撃で俺たちを殺すに十分だった。
「喰らえっ」
動きが止まったゾンビの心臓を一突きにする。
「ぐがああっ」
するとゾンビは濁った悲鳴をあげたが、それでもまだ倒れない。
やはり普通の攻撃では効果が薄いらしい。
「ホーリー・フレイム!」
今度はティアが聖なる炎を発する。
この前の強化で新たに使えるようになった魔法だろうか。きっとフィリアの魔法を見て思いついたのだろう。
炎に包まれてゾンビの皮膚はどろどろと溶けていく。
「今度こそ終わりだっ!」
今度は俺はゾンビの皮膚を駆けのぼる。
本来ならそんなことをすれば瞬殺するだろうが、全身を焦がされたゾンビにその余力はなく、弱々しく俺に向かって手を伸ばしてくるだけだ。
俺はそれを避けてゾンビの首筋に剣を伸ばす。
「ぐああああああああああああああああああああああっ」
すぱっと首筋は切断され、ゾンビは醜い断末魔を上げてその場にゆっくりと倒れる。
辺りにはべチャリ、という気味の悪い音が響き渡った。
「ふう、これで十層クリアか。十一層で転移石がもらえるな」
「はい。やはりフィリアさんは魔物に詳しいですね」
ティアが驚いたように言う。
「ええ、知識だけが取り柄だったから。でも、今後はそれを生かして魔法を使えると思うと嬉しいわ」
そう言うフィリアの表情は以前と比べて明確に明るくなっていた。
恐らく、これまではどれだけ勉強が出来ても、職業で「魔術師」を持っている人たちには勝てないという意識があったが、新たな職業を手に入れてそういう枷がなくなったのだろう。
同時に、職業でさえ負けてなければ他人に負ける訳がないという自負もあるのだろう。
そんなフィリアの姿を見て、俺は彼女をパーティーに入れて良かったと思う。最初は心配していたリンとティアもフィリアがいきいきしている姿を見て嬉しく思っているようだった。
そんな訳で俺たちは士気も高く十一層に降りていく。
そして六層の時と同じように転移石をとっていると、目の前に転移してくる影があった。例のトロールと兵士だ。
兵士は俺たちの姿を見て少し驚く。
「おお、お前たちか。まさかここまで上がってこれるとはな」
「俺たちのことを覚えていたな」
あのときは野次馬の端にいて直接言葉はかわさなかったはずだが。
「当然だ。こんな華やかなパーティー、目立たない訳がないだろう?」
そう言って兵士はリン、ティア、フィリアを見る。
俺はそういう意識は極力持たないようにしていたが、三人ともかなり見た目がいいので言われてみればそうだ。
が、そこで兵士はフィリアに目を留める。
「……というかお前、もしかしてフィリアか?」
「そ、そうだけど知り合いだったかしら?」
不意に名前を呼ばれてフィリアは動揺する。
学園の制服を着ているので分かったのだろうか。
「いや、公爵閣下からこちらに調査に来ているフィリアという人物がいると聞いたものだからな。とすると、君が噂の男か?」
そう言って兵士は俺を見る。
「どんな噂になっているかは知らないが、俺がアレンだ」
「そうかそうか。噂を聞いたときはただのペテン師と思っていたが、ここまでたどり着けるということはそれなりにやるみたいだな」
兵士は特に悪気もなさそうに言う。
人に従うトロールという最強の戦力をに手に入れた彼からすれば、他人のことなどどうでもいいのだろう。
「それはどうも」
「どうだ? もし良ければ公爵閣下に紹介するが」
彼は自分のダンジョン攻略が順調に進んで気分が良く、善意で言ってくれているのだろう。
断るのも角が立つので俺は笑ってごまかすことにする。
「まあそうか、フィリアが報告しているなら公爵閣下からは直接お誘いが来るか」
そう言って彼はそのまま去っていく。
彼がいなくなると、俺はフィリアと目を合わせた。
「もしかして、まずいことになっているか?」
「そうかもしれないわ」
やはりそろそろ俺たちもこの街を離れることを検討した方がいいだろうか。
とはいえ、ここを離れるにしてもその前に金や職業を稼げるだけ稼いでおきたい。このダンジョンも、今の戦力であれば十層もそんなに苦戦しなかった。
きっともっと上の階層まで行けるだろう。
「とりあえず今の戦力で行けるところまで行ってしまおう。その間に今後どうするかを考えよう」
「はい」
こうして俺たちは攻略を続けることにしたのだった。
フィリアの魔法でリンの剣に炎の魔力が宿る。
「ありがとうございます!」
フィリアは炎の力を宿した魔剣で目の前のゾンビに斬りかかる。
「ぐああああああああああああああっ!」
ゾンビは目の前で肌を焼かれながら崩れ落ちていく。しかしゾンビたちは後から後から腐った肉体を動かしてこちらへ向かってくる。
それを見てリンは次から次へとゾンビに斬りかかっていく。
ゾンビたちは四方八方から腕を伸ばしてくる。先ほどまでの普通の斬撃では、痛覚のないゾンビたちは自分たちが切り刻まれるのもいとわずに剣をからめとろうとしてきたが、炎の魔力が宿されたリンの剣は次々とゾンビたちを切り裂いていった。
フィリアはきっとゾンビが威力の高い攻撃よりも熱に弱いことを知っていたのだろう。
それを見て俺は一際大きなゾンビに向かって駆けていく。
「ホーリー・ライト」
ティアの魔法の光が降り注ぎ、目の前のゾンビは動きを止めた。
恐らくは元々巨人種だったのだろう、その大柄な体から繰り出される攻撃は一撃で俺たちを殺すに十分だった。
「喰らえっ」
動きが止まったゾンビの心臓を一突きにする。
「ぐがああっ」
するとゾンビは濁った悲鳴をあげたが、それでもまだ倒れない。
やはり普通の攻撃では効果が薄いらしい。
「ホーリー・フレイム!」
今度はティアが聖なる炎を発する。
この前の強化で新たに使えるようになった魔法だろうか。きっとフィリアの魔法を見て思いついたのだろう。
炎に包まれてゾンビの皮膚はどろどろと溶けていく。
「今度こそ終わりだっ!」
今度は俺はゾンビの皮膚を駆けのぼる。
本来ならそんなことをすれば瞬殺するだろうが、全身を焦がされたゾンビにその余力はなく、弱々しく俺に向かって手を伸ばしてくるだけだ。
俺はそれを避けてゾンビの首筋に剣を伸ばす。
「ぐああああああああああああああああああああああっ」
すぱっと首筋は切断され、ゾンビは醜い断末魔を上げてその場にゆっくりと倒れる。
辺りにはべチャリ、という気味の悪い音が響き渡った。
「ふう、これで十層クリアか。十一層で転移石がもらえるな」
「はい。やはりフィリアさんは魔物に詳しいですね」
ティアが驚いたように言う。
「ええ、知識だけが取り柄だったから。でも、今後はそれを生かして魔法を使えると思うと嬉しいわ」
そう言うフィリアの表情は以前と比べて明確に明るくなっていた。
恐らく、これまではどれだけ勉強が出来ても、職業で「魔術師」を持っている人たちには勝てないという意識があったが、新たな職業を手に入れてそういう枷がなくなったのだろう。
同時に、職業でさえ負けてなければ他人に負ける訳がないという自負もあるのだろう。
そんなフィリアの姿を見て、俺は彼女をパーティーに入れて良かったと思う。最初は心配していたリンとティアもフィリアがいきいきしている姿を見て嬉しく思っているようだった。
そんな訳で俺たちは士気も高く十一層に降りていく。
そして六層の時と同じように転移石をとっていると、目の前に転移してくる影があった。例のトロールと兵士だ。
兵士は俺たちの姿を見て少し驚く。
「おお、お前たちか。まさかここまで上がってこれるとはな」
「俺たちのことを覚えていたな」
あのときは野次馬の端にいて直接言葉はかわさなかったはずだが。
「当然だ。こんな華やかなパーティー、目立たない訳がないだろう?」
そう言って兵士はリン、ティア、フィリアを見る。
俺はそういう意識は極力持たないようにしていたが、三人ともかなり見た目がいいので言われてみればそうだ。
が、そこで兵士はフィリアに目を留める。
「……というかお前、もしかしてフィリアか?」
「そ、そうだけど知り合いだったかしら?」
不意に名前を呼ばれてフィリアは動揺する。
学園の制服を着ているので分かったのだろうか。
「いや、公爵閣下からこちらに調査に来ているフィリアという人物がいると聞いたものだからな。とすると、君が噂の男か?」
そう言って兵士は俺を見る。
「どんな噂になっているかは知らないが、俺がアレンだ」
「そうかそうか。噂を聞いたときはただのペテン師と思っていたが、ここまでたどり着けるということはそれなりにやるみたいだな」
兵士は特に悪気もなさそうに言う。
人に従うトロールという最強の戦力をに手に入れた彼からすれば、他人のことなどどうでもいいのだろう。
「それはどうも」
「どうだ? もし良ければ公爵閣下に紹介するが」
彼は自分のダンジョン攻略が順調に進んで気分が良く、善意で言ってくれているのだろう。
断るのも角が立つので俺は笑ってごまかすことにする。
「まあそうか、フィリアが報告しているなら公爵閣下からは直接お誘いが来るか」
そう言って彼はそのまま去っていく。
彼がいなくなると、俺はフィリアと目を合わせた。
「もしかして、まずいことになっているか?」
「そうかもしれないわ」
やはりそろそろ俺たちもこの街を離れることを検討した方がいいだろうか。
とはいえ、ここを離れるにしてもその前に金や職業を稼げるだけ稼いでおきたい。このダンジョンも、今の戦力であれば十層もそんなに苦戦しなかった。
きっともっと上の階層まで行けるだろう。
「とりあえず今の戦力で行けるところまで行ってしまおう。その間に今後どうするかを考えよう」
「はい」
こうして俺たちは攻略を続けることにしたのだった。
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