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アーノルドの反応Ⅱ

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「そんな……」

 憧れていたアーノルドに面と向かって、そして完膚なきまでに否定されたことでショックを受けたシェリルは思わずその場に崩れ落ちる。
 それからアーノルドは脅えているメイドに向き直った。
 そして先ほどまでのシェリルに対する態度とはうってかわって柔らかい表情で声をかける。

「会場は混んでいるからこれからは気をつけて歩くことだ」
「は、はい、ありがとうございます!」

 そう言ってメイドは何度も何度も頭を下げる。
 そこへ今度はメイドの主であるクローゼ子爵が慌てた様子で現れた。知らないところで大騒ぎになっていたことに気づき、顔面蒼白になっている。

「申し訳ありません、うちのメイドが粗相を致しまして」
「それは僕に謝ることではない。謝るべきは……」

 が、アーノルドがシェリルを指さそうとすると、すでにシェリルの姿はその場からはいなくなっていた。きっと周囲の視線があまりにいたたまれなくなってしまっていたのだろう。
 それを見てアーノルドは苦笑する。

「行ってしまったようだ」
「はあ、そうですか」

 それを聞いて事情を何も知らないクローゼ子爵は狐につままれたような顔をした。

「よく分かりませんが、うちのメイドを助けていただいたようでありがとうございます」
「別に助けたつもりはない」
「いえ、ありがとうございます」

 その後子爵とメイドは何度かお礼を言って、ひとしきり頭を下げた後去っていくのだった。

 それを見てアーノルドは今度は私の方を向く。
 私もそれを見て慌てて頭を下げた。

「すみません、妹が迷惑をおかけしました!」
「やっぱりそうだったか。噂には聞いていたが、いい噂もあったからどっちなのかと思って気になってはいたんだ」
「そうなのですか?」
「ああ、そうだ。貴族の中には彼女のように使用人など替えの利く者としか思ってもない者や、ストレスのはけ口にしている者もいるからな。そういう者からすれば彼女の振る舞いは特に不自然でもないということだろう」
「なるほど」

 確かに、それが気にならない方からすればシェリルは気品あふれる公爵令嬢に見えるのかもしれない。

「とはいえ、いくら何でも場所は選んで欲しかったが。それに僕の前でああいう振る舞いをすれば僕が気に入ると思ったのであればそれも勘弁してほしいな」
「本当にすみません」

 そう言われるとシェリルのことがまるで自分のことのように恥ずかしく思えてくる。

「君が謝る必要はない。それよりもラーナの話は聞いているよ」
「え?」

 それを聞いて私は困惑した。
 私はこれまでアーノルドの耳に入るような行動をした覚えが全くないからだ。
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