「僕より強い奴は気に入らない」と殿下に言われて力を抑えていたら婚約破棄されました。そろそろ本気出してもよろしいですよね?

今川幸乃

文字の大きさ
23 / 34

オーウェンによる王国立て直し

しおりを挟む
 イレーネが聖女復帰を周囲に認めさせているころ、オーウェンの元にも王国の主だった者たちが集まっていた。代表的な人物は大臣のモルディと将軍のゲイルである。他にもボルグのやり方に不満を抱きつつも何も言えなかった者や、たまたま王都を離れていた者などが続々と広間に集結する。
 逆に、ボルグに取り入って出世していた者たちはこそこそとオーウェンの目を避けていた。

「まずはこのたび、このような乱暴な方法をとってしまったにもかかわらずこの俺を支持してくださった皆には感謝したい」

 オーウェンの言葉に集まった者たちから拍手が起こる。
 続いて大臣のモルディが前に進み出る。こちらはもう六十にさしかかる白髪の老人だ。

「ボルグ殿下は陛下や大司教をまるめこみ、好き放題していた。彼を沈黙させるためには多少強引な方法もやむをえなかったと言えるでしょう。私はオーウェン殿のやり方を支持します」

 次に将軍ゲイルが進み出る。いかつい風貌をした彼は歴戦の戦士でもある。

「わしは軍は政変に対して口出しすべきではないと考えている。そのため、王国が新たな形でまとまるのであればそれに従おう」
「分かった。まず陛下は病中で、他の殿下はまだ幼く政務をとれる状態ではない。そのため王国の政治を誰が行うかを決めなければならない」
「オーウェン殿が摂政のような形で入るものかと思っていましたが」

 モルディは少し驚いたように言う。オーウェンが貴族たちの軍勢を率いてきた以上、彼でなければ国はまとまらないだろう。
 しかしオーウェンは険しい表情を見せる。

「問題は、オーランド帝国が我らの領地に攻め入ろうとしていることだ。自領を護るためにも国を護るためにも俺は軍勢を率いて領地へ戻らなければならない」
「なるほど」

 モルディは少し暗い表情になる。オーウェンがいなければ自分に貴族たちをまとめ上げることは出来るのだろうか。

「そこで俺はオルスト公爵閣下を推薦したい」

 オーウェンの言葉に部屋の隅にいたオルスト公爵が進み出る。
 彼はオーウェンが王都に向かう際、一応一番最初に味方した貴族である。当初はオーウェンやイレーネの力を見定めているような様子もあったが、娘をイレーネが治療してからは二人に恩義を感じていた。家柄や領地も王国の中ではトップクラスである。

「おお、公爵閣下でしたら私も存じております」

 モルディは安心したように言う。彼は密かに自分が責任者にされることを恐れていた。大臣とはいえ国王や軍の後ろ盾がなければ、広大な領地を持つ貴族に命令してもなかなか従ってもらうのは難しいだろう。
 そのため大貴族であるオルスト公爵がまとめ役になってくれることに安堵した。オーウェンに比べれば目立つ人物ではなかったが、逆に言えば安定した能力を持つということでもある。

「わしも異存はない」
「では公爵閣下に王都にて陛下の病が回復するまで摂政の任についていただくということで問題はないか」
「微力ながら精いっぱい務めさせていただきます」

 オルスト公爵としてもたまたまオーウェンの軍勢に乗っかったところで思わぬ大役が転がりこんできて儲けものであった。

「さて、王都のことは今後は閣下に任せるとして俺としては至急帝国に対する防衛軍を割いていただきたいと思う」
「帝国の動きは今どのような感じだ」

 ゲイルが尋ねる。

「我が領に山賊を送り込んでからも、俺が領地を離れてからは国境沿いに軍勢を集結させているという報告が続々と届いている。国境から王都までではどれだけ馬を飛ばしても数日かかるから、今頃戦いが始まっていてもおかしくはない」
「何と。それでは我らもすぐにでも軍勢を整えなければ。幸い我らは臨戦態勢だったからな」

 ゲイルは苦笑する。彼らはオーウェンらの軍勢に備えるために臨戦態勢であったが、それが役に立ちそうだった。今回は軍勢同士の衝突がなかったので、損害もほとんどない。

「分かった。では私は国中の貴族に今回の戦いに参加するよう命令を出せばいいということだな?」
「そうだ。とはいえ今王都にいる者を除けば集合は遅くなるだろう。そこでまずはゲイル殿の軍勢と王都にいる貴族のみの軍勢で先に国境に向かい、その後に集まった貴族の軍勢を送ってもらえると助かる」
「分かった」

 オルストからしても、オーウェンらが破られれば、帝国軍はそのまま自領に攻め込んでくるため、全力で協力せざるを得ない。摂政を任されたのは嬉しいが、逆に言えば自領に戻って帝国に降伏することが出来なくなったということであり、退路を断たれた形でもある。

 こうしてこれまで全く進まなかった対帝国軍の編成は急速に進んだのである。
 そして数日後、大司教も新たな者が任命され、王国の新体制は完成した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

醜貌の聖女と呼ばれ、婚約破棄されましたが、実は本物の聖女でした

きまま
恋愛
王国の夜会で、第一王子のレオンハルトから婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リリエル・アルヴァリア。 顔を銀の仮面で隠していることから『醜貌の聖女』と嘲られ、不要と切り捨てられた彼女は、そのまま王城を追われることになる。 しかし、その後に待ち受ける国の運命は滅亡へと向かっていた——

追放聖女の再就職 〜長年仕えた王家からニセモノと追い出されたわたしですが頑張りますね、魔王さま!〜

三崎ちさ
恋愛
メリアは王宮に勤める聖女、だった。 「真なる聖女はこの世に一人、エミリーのみ! お前はニセモノだ!」 ある日突然いきりたった王子から国外追放、そして婚約破棄もオマケのように言い渡される。 「困ったわ、追放されても生きてはいけるけど、どうやってお金を稼ごうかしら」 メリアには病気の両親がいる。王宮で聖女として働いていたのも両親の治療費のためだった。国の外には魔物がウロウロ、しかし聖女として活躍してきたメリアには魔物は大した脅威ではない。ただ心配なことは『お金の稼ぎ方』だけである。 そんな中、メリアはひょんなことから封印されていたはずの魔族と出会い、魔王のもとで働くことになる。 「頑張りますね、魔王さま!」 「……」(かわいい……) 一方、メリアを独断で追放した王子は父の激昂を招いていた。 「メリアを魔族と引き合わせるわけにはいかん!」 国王はメリアと魔族について、何か秘密があるようで……? 即オチ真面目魔王さまと両親のためにお金を稼ぎたい!ニセモノ疑惑聖女のラブコメです。 ※小説家になろうさんにも掲載

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります

秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。 そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。 「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」 聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。

派手にしない工房は、今日もちゃんと続いている

ふわふわ
恋愛
名門でも、流行でもない。 選ばなかったからこそ、残った場所がある。 街の片隅で、小さな工房を営む職人シオンと、帳簿と現実を見つめ続けるリリカ。 派手な宣伝も、無理な拡大もせず、ただ「ちゃんと作る」ことを選び続けてきた二人の工房は、いつの間にか人々の日常の一部になっていた。 しかし、再開発と条件変更という現実が、その場所を静かに揺さぶる。 移るか、変えるか、終わらせるか―― 迫られる選択の中で、二人が選んだのは「何も変えない」という、最も難しい決断だった。 特別にならなくていい。 成功と呼ばれなくてもいい。 ただ、今日も続いていることに意味がある。 これは、成り上がらない。 ざまぁもしない。 けれど確かに「生き方」を選びきった人たちの物語。 終わらせなかったからこそ辿り着いた、 静かで、確かな完結。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

お姉様、今度は貴方の恋人をもらいますわ。何でも奪っていく妹はそう言っていますが、その方は私の恋人ではありませんよ?

柚木ゆず
恋愛
「すでに気付いているんですのよ。わたくしやお父様やお母様に隠れて、交際を行っていることに」 「ダーファルズ伯爵家のエドモン様は、雄々しく素敵な御方。お顔も財力も最上級な方で、興味を持ちましたの。好きに、なってしまいましたの」  私のものを何でも欲しがる、妹のニネット。今度は物ではなく人を欲しがり始め、エドモン様をもらうと言い出しました。  確かに私は、家族に隠れて交際を行っているのですが――。その方は、私にしつこく言い寄ってきていた人。恋人はエドモン様ではなく、エズラル侯爵家のフレデリク様なのです。  どうやらニネットは大きな勘違いをしているらしく、自身を溺愛するお父様とお母様の力を借りて、そんなエドモン様にアプローチをしてゆくみたいです。

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...