学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃

文字の大きさ
16 / 41

オルクの心変わり

しおりを挟む
 その日の放課後。例の事件以降私には見向きもしなかったオルクが突然こちらに歩いてきた。もっとも、オルクは婚約破棄前も私にはほぼ見向きもしなかったが。今更何の用だろうか。

「レミリア、話があるんだ」
「何? 忙しいから手短にして欲しいんだけど」

 嫌な予感がしたので私は出来るだけ冷淡な態度をとる。
 が、そんな私の態度を無視してオルクはへらへらしながら話しかけてきた。

「この間の婚約破棄の件あっただろ? 悪いけどあれは僕の早とちりだった。そもそも実家に確認せずに僕の一存でそんなことが出来るはずがないんだ。謝るからあれは取り消してくれないか?」

 予想通り過ぎて思わず呆れてしまった。どうせ先ほどの授業で私の魔力が回復しているのを見てシルヴィアに騙されたと気づいたのだろう。そしてこのままでは家同士で決められた婚約を自分の勘違いで破棄したバカ息子になると気づいて慌ててやってきたに違いない。

 まあ、実家に確認せずに自分の一存で婚約破棄が出来る訳がないということだけは事実だけど、都合のいい時だけそれを持ち出すのはやめて欲しい。
 私が唖然としていると、なおもオルクは続ける。

「一応俺も悪いとは思っているんだ。だからお詫びもかねて今週末デートに行こう。俺が全額出すから」

 私の冷たい態度を見てか、今度は買収を仕掛けてきた。
 とはいえ仮に全額出してくれるとしてもこんな奴とはどこにも行きたくない。

「あんな男らしい婚約破棄をしておいて、今更なかったことになんて出来ると思ってるの?」
「あはは、やっぱ男らしいかな俺って」

 今のはオルクが婚約破棄した際にシルヴィアが「男らしい」と褒めていたことをあてこすった皮肉だったのだが、残念ながら気づいてはもらえなかったようだ。皮肉すら通じなくて私は頭を抱えてしまう。

「とにかく、男性なら自分で言ったことに責任を持って欲しい。どうせ私よりもシルヴィアの方が可愛いと思ってるんでしょ?」
「い、いや、それはそうだけど……ああいう女は愛人にはいいけど結婚相手にはしたくないと言うか……」

 この男は一体何を言い出すのだろうか。
 話せば話すほど私の中でオルクへの好感度が下がっていく。話し始めた時はまさかこれ以上下がるとは思っていなかっただけに驚きだ。

「とにかく、一度あんなことを衆目の前で言われた以上あなたの言葉は全く信用出来ない。この話は受け入れられないから」
「待ってくれ、頼む。僕の一存で勝手に婚約破棄なんてことをしたら僕は後継者にふさわしくないと思われてしまう。助けてくれ」

 正攻法(?)がだめだと思ったのか、オルクは今度は泣き落としを仕掛けてきた。どこの世界に泣き落としで婚約を頼んでくる男がいるというのだろうか。

「後継者にふさわしくないのは事実だから私に言われても困る。とにかく、私の意志が変わることはないから」

 むしろこんな奴が名門ルベレスト家の当主になってはこの国の行く末が心配なので、この件を機に是非もっとまともな人を後継者に選び直して欲しい。そう思いながら私は踵を返す。

「待ってくれ」

 そう言ってオルクは立ち去ろうとする私の腕を掴む。咄嗟に振りほどこうとするが、さすがに男女の差があるためふりほどけない。
 そして彼は泣きそうな顔で話を続けてくる。

「そんなに言うなら今からデートに行こう。好きなものは何でも買ってあげるから!」
「ちょっと、もういい加減に……」
「そこまでだ。彼女が嫌がっているのが分からないのか!」

 そう言ってオルクの腕を振りほどいたのは突如やってきたアルフだった。彼は毅然とした表情でオルクの前に立ちふさがり、対するオルクは激しい敵意をむき出しにする。

「お前が、最近レミリアにつきまとっている男か?」
「つきまとっているのはお前だ。明らかにレミリアはお前を嫌がっているだろう」

 アルフの真っ当な指摘にオルクは表情を歪める。

「う、うるさい、俺が彼女の婚約者だ! 部外者が口を挟むな!」
「確かに僕は部外者だったのかもしれない。しかし君は一度でもレミリアがいじめられている時に彼女を助けたか? 彼女が魔力を失った時に彼女のことを信じたか? 僕は彼女を助けたし彼女を信じた。その間君はシルヴィアとよろしくやっていた。今レミリアにとって部外者と言うべきは明らかに君の方だと思うけどね」
「う、ぐぬぅ」

 アルフの口から怒涛のように流れ出る言葉にオルクは満足な反論も出来ず悔し気に表情を歪めることしか出来なかった。それでもオルクは諦めきれないのか、口をもごもごさせながら必死に次の言葉を考えている。
 アルフの言うことは非常に正しいことであり、私のためにここまで言われてしまうと嬉しいと同時に恥ずかしくなってくる。

「と言う訳でこれからはレミリアに近づいたり、婚約者面をしたりするのはやめてくれ」
「……うるさい、そこまで言うならお前に決闘を申し込む!」

 ついに言葉での反論を放棄したオルクが叫んだ。
 ただのオルクの醜態かと思っていた私は思わぬ事態の推移に慌てる。

「ちょっとオルク、いくら何でもそれは」
「分かった、受けて立とう」

 思わず私は止めに入ろうとしたが、アルフは私の言葉を遮ってオルクの提案を受ける。それを聞いていた周囲のクラスメイトたちもざわざわした。

 一応学園の規則では教師にきちんと申請して立会の元決闘を行うことが出来ると書かれているが、実際に行われることはあまりない。大体の場合は互いの実力に差があって、挑むまでもなく結果が分かるからだ。その上負ければ衆目の前に敗北が晒されることになる。
 そのためこのクラスで決闘が行われるのは初めてで、クラスメイトたちも興奮しているのだろう。

「では今週末に決闘しようじゃないか。学園への申請は俺がやっておく。せいぜい無駄なあがきでもしておくんだな」

 そう言ってオルクは高揚した表情で去っていくのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

【完結】遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!

天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。  魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。  でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。  一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。  トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。  互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。 。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.  他サイトにも連載中 2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。  よろしくお願いいたします。m(_ _)m

【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」  即位したばかりの国王が、宣言した。  真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。  だが、そこには大きな秘密があった。  王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。  この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。  そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。 第一部 貴族学園編  私の名前はレティシア。 政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。  だから、いとこの双子の姉ってことになってる。  この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。  私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。 第二部 魔法学校編  失ってしまったかけがえのない人。  復讐のために精霊王と契約する。  魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。  毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。  修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。 前半は、ほのぼのゆっくり進みます。 後半は、どろどろさくさくです。 小説家になろう様にも投稿してます。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?

神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。  カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。   (※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m 

処理中です...